ミュージアムINFO

11月

     11月

中里保子万華鏡展

開 催 2022年8月24日(水)~同11月27日(日)
場 所 流山万華鏡ギャラリー&ミュージアム
流山市流山2-101-1
電 話 04-7190-5100  
時 間 午前10時~午後5時
月曜休館(祝日の場合は翌日)
主 催 流山万華鏡ギャラリー&ミュージアム
入場料 無料

手賀沼湖畔で「鳥の祭典」
3年ぶり復活、賑わう

開 催 2022年11月5日(土)~同6日(日)
場 所 JR我孫子駅南口駅前、アビイホール(イトーヨーカドー我孫子南口店3階)、我孫子市生涯学習センター「アビスタ」、手賀沼公園
時 間 5日午前9時30分~午後4時、6日午前9時30分~午後3時
主 催 ジャパンバードフェスティバル実行委員会(山階鳥類研究所、日本鳥類保護連盟、日本野鳥の会千葉県、千葉県野鳥の会、我孫子市鳥の博物館友の会、我孫子野鳥を守る会、日本雁を保護する会、日本バードカービング協会、中央学院高校、我孫子市教育委員会、我孫子市など)
協 賛 日本電気我孫子事業場、我孫子ゴルフ倶楽部、手賀沼貸舟業協同組合、NECグリーンロケッツ東葛、中央学院大学、川村学園女子大学など
後 援 環境省、文部科学省、日本鳥類学会、全国愛鳥教育研究会、二松学舎大学、麗澤大学、松戸・野田・柏の隣接各市など

バルーンリリース会

開 催 2022年11月12日(土)
場 所 野田市立岩木小学校

紅葉、日差しに映え
巡る季節を演出する公園樹
  

柏 市 県立柏の葉公園
野田市 清水公園

ガラス、鏡のアート
中里保子さんの万華鏡展

 

――流山市の江戸川沿いにある流山本町大通りは水運、みりん醸造で栄えた江戸から明治期の風情を残す。築130年という寺田園旧店舗の土蔵もその一つ。流山市がリニューアルを繰り返して今夏から「流山万華鏡ギャラリー&ミュージアム」となった。

写真上:入場者のシルエットも印象的な展示会場

 

 

 

1階が渋い外観から想像できない今風のカフェ、階段を上った2階がギャラリーで、照明を抑えた空間に万華鏡の灯りが浮かび上がる。地元の万華鏡作家、中里保子さんのオリジナリティーあふれる作品が並んでいた。

 

 

写真上:約130年前に造られた黒漆喰磨き仕上げの土蔵。1階がカフェ、2階が万華鏡ギャラリーになっている(流山市の流山本町大通り)

 

 

 

丸い筒を手に持って回しながらのぞくと、中の模様が様々に変化する、そんな万華鏡のイメージが一変した。丸筒型はあったが、外観がステンドグラスのようだったり、円形オブジェを使った置物だったり……。アクセサリーのペンダントもあって実に様々な作品だ。

 

写真:長さ4.5㌢、直径1.5㌢のペンダント型プチ万華鏡。内部のガラス粒が様々な模様を描く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中里さんは都内の大手建設機械メーカーのOLだった。スキー部員として長野や群馬のスキー場に年50日通っているうち、自然とスキーウエアのデザイナーを志向するようになった。

 

 

 

3年勤めて退社し、2年制のデザイン学校に通った。卒業時にはアパレルメーカーの内定をもらったが、スキーウエアのデザインを諦め切れず、有名スポーツメーカーに片っ端から履歴書を送ってアピールした。幸運にも1社から採用連絡があり、20代半ばからデザイナーのアシスタントとして働き始めた。

 

 

写真上:展示会場で大型万華鏡の仕組みを説明する中里さん

 

 

 

スキーウエアだけでなく、水着、テニスなどと幅が広がった。1993(平成5)年から始まったサッカーJリーグでサッカーユニホームの需要が激増し、参入するメーカーも多くなった。中里さんは外資系メーカーの新ブランド立ち上げにもかかわるなど、とにかく忙しい毎日だった。

 

 

写真上:丸筒テレイドスコープ。屋外でのぞくと上部の球体レンズを通して景色が変化する

 

 

 

上司から売れる物を作れといったプレッシャーがかかる。40代になって仕事ばかりの毎日が続く中、ふと手にした新聞の夕刊に東京・渋谷にあったステンドグラスアートスクール生徒募集の広告が目に止まった。

 

 

「仕事まっしぐらで、全く趣味がなかった。やってみようと思った」

 

 

1996(平成8)年から様々な年齢の生徒が通う週3回のコースを選び、仕事の合間を縫って通った。ガラスに色付けしたり、影をつけたり。面白くて2年のコースを終えても仲間と残り、自分たちでフリーコースを作って続けた。

 

 

そこで教材だったアメリカ製のオイルワンド万華鏡と出合った。オイル入りの棒状容器(ワンド)に入ったガラス粒のオブジェクトが流れ動く様をワンド横に付けられたスコープでのぞく。

 

「変化のすごさ、光り輝いて花火のようですごいと思った。すぐにとりこになった」

 

 

別のカルチャースクールで立体造形を学び、万華鏡団体の人気ワークショップに参加して腕を磨いた。

 

 

写真上:「MANDARA」。万華鏡本体と模様の変化を楽しむ円形曼荼羅模様オブジェクトの2セット。入れ替えが可能だという

 

 

 

「デザイナー20年の私の性格に合っていた。創意工夫、努力をすればするほど良い作品として返ってくる。手抜きしないよう自分を追い込んで作るしかない。悔しいけど、とても面白い」

 

 

万華鏡の生みの親は、スコットランドの科学者デヴィット・ブリュースター(1781―1868)で、1816(文化13)年、灯台の光を遠くまで届かせるための実験中に発見したとされる。

 

写真:「REBORN=セノーテ=」。2011年の東日本大震災、2020年からのコロナ禍……セノーテ(泉)をイメージしたアクア色のガラスで生命の大切さを想い描いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本には3年後の1819(文政2)年に渡来し、豪商らの貴重なおもちゃだった。「桃色眼鏡」(ももいろめがね)とか「錦眼鏡」(にしきめがね)などと呼ばれたという。外国ではギリシャ語のKalos(美しい)、Eidos(形)、Scope(見る)を語源にしたKaleidoscope(カレイドスコープ)が一般的だ。

 

 

1980年代にアメリカで急速に発展した。万華鏡に魅せられた米国人女性が全米の作家にインタビューしたり、作品を観たりして一冊の本にまとめた。これを機に世界初の万華鏡展覧会が開かれ、それまで大量生産のおもちゃだったものが「万華鏡アート」として価値観を広げていった。

 

 

中里さんは2000(平成12)年の日本万華鏡大賞展に出品して初入選。2003(平成15)年には同展ヴィジアル賞を受賞し、副賞の賞金を手にしたことから同年を作家としてのスタート年としている。

 

 

写真上:2007年アメリカでのコンベンションで最優秀作品賞の「秋草」

 

 

2005(平成17)年にあったアメリカ公募展での入選を皮切りに、同展入賞常連者となり、仙台や京都、高崎、名古屋などの美術館、ミュージアムで出展を続けた。2017(平成29)年5月には京都で国内初開催の万華鏡世界大会実行委員となり、大会を成功に導いた。

 

 

万華鏡はガラスと鏡、金属が紡ぐアート。流山の工房は大きな作業机が二つあり、ガラスに砂を吹き付けて削ったり、溶かしたりする装置を備え、壁には金属加工の金具が掛かる。まるで「ミニ町工場」のような雰囲気だ。

 

 

ここで月4回のワークショップに24人、月1回の京都で6人の「弟子」が通っている。

 

 

「いまだに技術やアイデアが私の中で進化している。作るのはもちろん楽しいが、最近は教えること、伝えていくことの楽しさのほうが勝ってきたかな。皆さんが楽しみながら作れる環境で、自分の持っているものを全部伝えていきたい」

 

写真:丸筒万華鏡の制作に取り組む中里保子さん(流山市の工房)

 

 

 

 

2003年の万華鏡作家デビューから来年20周年を迎える。何をするか、企画を練り始めた。

 

 

写真上:天地、左右に模様を織りなす万華鏡の内部(中里保子さん撮影)

 

 

 

(文・写真 Tokikazu)

手賀沼湖畔で「鳥の祭典」
3年ぶり復活、賑わう

――3年ぶりの「鳥の祭典」で手賀沼湖畔が盛り上がった。11月5、6両日、我孫子市手賀沼公園などであった「ジャパンバードフェスティバル(JBF)2022」(JBF実行委員会主催)。晴天に恵まれ、研究、保護、写真、グッズ、観察機器など民産官問わない参加による出展テントが湖畔に林立して賑わった。

 

写真上:手賀沼公園会場の入り口に掲げられたバナー。出展団体のテントがにぎやかに並んだ

 

 

 

メーンの手賀沼公園入口にJBFの大きなバナーが掲げられた。園路の先頭に地元の「我孫子野鳥を守る会」(船津登会長)のテントがあった。1972(昭和47)年、野鳥愛好団体の県内第1号として発足。50周年の今年、探鳥ガイドブック「手賀沼の鳥」(A5判、全文72㌻)を発行した。

 

 

テントにはガイドブックが置かれ、観察用の野鳥パンフレット(A4判)が無料で配布された。会員が撮影し、大きく伸ばした手賀沼に棲む野鳥の写真が展示された。親子連れの見学者が多く、船津会長らが説明に追われた。

 

 

写真上:手賀沼の鳥たちを紹介する「我孫子野鳥を守る会」のテント

 

 

 

先に進むと「千葉県野鳥の会」「Team SPOON」「日本野鳥の会千葉県」など野鳥保護団体が日本近海の渡り鳥ルートを大判の手書き地図で説明したり、複数の出版会社が鳥関係の書籍を並べていたり。

 

 

光学機器メーカーが軒を並べた水辺では、自社の望遠鏡や双眼鏡、望遠レンズを付けた最新のデジタルカメラを三脚にセットしてデモンストレーション。見学者はのぞき込んで水面を泳ぐカモなどの水鳥を観察した。

 

 

写真上:水辺でにぎわった光学機器メーカーのテント村

 

 

 

突端では「我孫子野鳥を守る会」の腕章をしたスタッフが「湖畔バードウォッチング」を案内。集まった観察希望者は三脚付きの望遠鏡や手にした双眼鏡で湖面をのぞく。6日午前はオオバン、ダイサギ、ユリカモメに加え「空飛ぶ宝石」とも呼ばれるカワセミなど22種が観察できた、という。

 

 

写真上:水辺にセットされた望遠鏡で野鳥観察をする参加者

 

 

 

途中、「船上バードウォッチング」の船が通りかかった。船内の乗客が手を振っているのに気づくと、湖畔ウォッチャーも手を振って応えた。湖畔のスタッフは「船から観ると、ここからとはまるで違う世界が体験できますよ」。

 

 

写真上:鏡のような湖面をゆっくり進むバードウォッチの船

 

 

 

「船上バードウォッチング」は2日間で延べ7便運航された。「密」を避けるため、十分な空間を取って1便の定員は15人。希望者を先着60人に絞って抽選券を配って「がらがらぽん」、かなりの「狭き門」だった。

 

 

筆者は6日の第1便には外れたが、第2便の抽選に運よく当たった。乗客は地元を始め、鎌ヶ谷、流山市などからの家族連れや若い女性たち。ガイドは「我孫子野鳥を守る会」の桑森亮・元事務局長(70)だった。

 

 

写真上:我孫子野鳥を守る会の桑森亮・元事務局長(右端)が解説した船上バードウォッチング

 

 

 

桑森さんは船首側にマイクを持って立ちっぱなしで案内。湖面をスイスイ泳ぐカモ、頭を突っ込んで潜るカイツブリ、船の近くを飛び抜けるセグロカモメ……。桑森さんは左舷、右舷に目配りしながら解説した。

 

 

途中、魚を主食として「空飛ぶ漁師」とのあだ名もあるミサゴと遭遇した。「漁」の直後だったらしく、両足に魚をつかんで飛んでいる。桑森さんが「食事の邪魔をしたかな」といいながら見守ると、遠くの杭にとまって船を警戒するそぶりを見せた。

 

 

写真上:獲物の魚を捕った直後、湖上の杭に止まったミサゴ

 

 

 

なるほど、湖畔スタッフの言う通り、湖面を飛んだり、泳いだりの鳥を観る船上ならではの体験ができた。桑森さんも「普段、岸から観る景色と全く違うものを楽しんでもらっています」と強調した。

 

 

東西に長い手賀沼を西側の上沼から中央に架かる手賀大橋をくぐって東側の下沼まで1時間余りの舟遊。アオサギ、カワウ、トビなど21種を観ることができた。

 

 

手賀沼公園東側の芝生が広がる多目的広場では、ちびっ子が凧揚げならぬ「鳥凧」揚げに興じていた。JBF実行委員会に参加する「我孫子市鳥の博物館友の会」スタッフ手作りの鳥形を子どもたちに貸し出した。

 

 

翼が1㍍近い黄や青、ピンクの「鳥凧」。広場のあちこちで凧糸を持って曳きながら走る。あいにく風は弱く、走り続けないと落ちてしまう。受付で凧を調整していたスタッフは「風がなくて大変だけど、こんな状況でも子どもたちは自然に遊び方を覚える」と目を細めていた。

 

 

写真上:超微風の中、ちびっ子たちが駆け回って揚げた「鳥凧」

 

 

 

隣接する我孫子市生涯学習センター「アビスタ」1階ホールで、小中学生、高校生らが生き物や環境に関する研究を発表する「JBF2022環境学会」が開かれた。

 

 

2階ミニホールは「全日本鳥フォトコンテストinJBF2022」(JBF実行委員会主催)の作品展会場。葉書から新聞1㌻大までの写真約900点で、中には水面で口を開けて鎌首をもたげる蛇と闘う白鳥の珍しい作品もあった。隣接の第3学習室で今年度の「千葉県愛鳥週間ポスターコンクール」(千葉県主催)入賞作品のうち、優秀賞など58点が紹介された。

 

 

写真上:千葉県の愛鳥週間ポスターコンクール入賞作(左)、全日本鳥フォトコンテスト作品展(右)

 

 

 

第2学習室には我孫子市在住の野鳥彫刻家内山春雄さん(72)=日本バードカービング協会会長=が指導する同市立高野山小、第一小の6年生が作った小鳥や、内山さんのカービング教室に通う愛好者グループ「鳥刻の会」の作品がずらり展示された。

 

 

写真上:家族連れなどでにぎわったバードカービングコーナー(左)、全日本バートバードカービングコンクールで実績を上げる「鳥刻の会」も入選作品を出品した(右)

 

 

 

野鳥の宝庫・手賀沼があり、国内ただ一カ所の民間研究所「山階鳥類研究所」、唯一の専門博物館「我孫子市鳥の博物館」が立地。県内に先駆けて「我孫子野鳥を守る会」が発足……。そんな必然もあってJBFは学生、市民、民間、NPO、行政が集まって2001(平成13)年11月から始まった。

 

写真:JBFのポスター・チラシ

 

JFB環境学会(2004年)、全日本鳥フォトコン(2010年)などが加わり、年々、グレードアップ。「人と鳥の共存」を目指す国内最大級の鳥のイベントになった。2019年の第19回JBFは「第25回ふるさとイベント大賞」(地域活性化センター主催)の最高賞を受賞した。

 

 

 

とはいえ、2020年の第20回、2021年の第21回はコロナ禍のため、オンライン開催。今年は「手賀沼親水広場・水の館」など手賀大橋東側会場をとりやめ、JR我孫子駅南口の駅前、アビイホール、手賀沼公園、アビスタに集約した。

 

 

「密」を避けるため、「船上バードウオッチ」のように定員を減らしたり、人気の物づくりワークショップを見送ったり。検温・手指の消毒コーナーを設けるなどでフィールド開催を「復活」させた。

 

 

写真上:JR我孫子駅南口会場「NPOサヘルの森我孫子」のテントに吊るされた鳥の巣(左)、JR我孫子駅南口のインフォメーションセンター「アビシルベ」に設置された「JBF翼ウオール」(右)

 

 

 

JBF実行委員会の副実行委員長でもある内山さんは「何より天気に恵まれてよかった。会場が我孫子駅前、手賀沼公園、アビスタに集約され、参加者の周遊性が図られたし、湖畔の賑わい効果もあった」と分析した。

 

 

その上で「前回より会場が減ったことで駐車場が少なかった。駅前会場から歩いて手賀沼会場に来られることを積極的にPRしたい」と話した。

 

「ジャパンバードフェスティバル 2019」の記事はこちらから

 

 

(文・写真 Tokikazu)

風船に託す想い
青空に舞うメッセージ

 

――「小春日和」の青空に子どもたちの歓声が響いた。野田市岩名2丁目の同市立岩木学校(縄田浩子校長、児童708人)で11月12日、全校児童がメッセージ付きの風船を飛ばす「バルーンリリース会」があった。「元気に過ごしましょう」「平和が続きますように」……。コロナ禍の中、一人ひとりがカードに願いを込めて放った。

写真上:舞い上がった色とりどりの風船は青空とのコントラストを描いた

 

 

 

午前11時過ぎ、全校児童が陽気に包まれた校庭に集まった。「密」に配慮して、6年生を真ん中に囲むように学年ごと、クラスごとに横一列になった。同校PTAの沖田真弥会長が「良い天気に恵まれてよかった。皆さん、良い思い出づくりをしましょう。保護者の皆さんは温かく見守ってくださるよう、お願いします」とあいさつした。

 

 

 

PTA役員や教職員があらかじめ児童が書き込んだ名刺大のメッセージを風船につけて一人ひとりに手渡した。同校OBを含めた地元高校3年生男女4人も地域ボランティア活動の一環として参加し、手伝っていた。

 

 

写真:子どもたちの願いを込めたメッセージ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員に配り終わるのを待つ児童の中には、手を滑らせて風船を飛ばしてしまう子も数人いて、その度に「あー、あー」とのため息交じりの声が渦巻く。割ってしまったのか「パン」「パン」という破裂音も数回響いた。

 

 

写真上:一つずつにメッセージが付けられた風船が渡された

 

 

 

朝礼台に登った進行係の児童会役員による「みんなの気持ち、届けー」という合図で一斉に放した。赤、白、青、黄、ピンクと色とりどりの風船がゆっくりと舞い上がる。

 

 

写真上:風船を手に飛ばせの合図を待つ1年生

 

 

 

ゆるい北風に乗って静かに上昇した後、南の方へとだんだん小さくなりながら姿を消した。校庭の児童は教職員らと空を見上げながら、見えなくなるまで見守った。

 

 

写真上:あっ、私の風船! 思わず指さす児童

 

 

 

縄田校長は「風船はどこに飛んでいくのかはわかりません。でも、一つずつに込めた皆さんの温かい気持ちが、どこかで誰かに届くといいですね」と児童に話した。

 

 

写真上:風船が飛び去った南の空を見上げて見送る子どもたち

 

 

 

コロナ禍に見舞われた初年の2020年は登校制限があったり、集会が見送られたりで思ったようなPTA活動ができなかった。「みんなが一丸となってできるものを考えよう」と同12月12日にPTAの発案で初の「バルーンリリース会」を開いた。

 

 

 

風船は天然素材で環境に影響が少ないよう気を付けた。沖田会長は「とはいえ、我々としては苦情が心配だったが、1件もなかった。逆に子どもたちのメッセージに感謝する便りが学校に送られてきた」という。遠くは茨城・霞ヶ浦周辺のゴルフ場で拾ったとの連絡があったという。

 

 

 

ならば今回もやろう、という機運が高まった。当日、PTA役員らが午前7時30分に集合し、体育館で準備を始めた。今回、風船づくりは都内の専門業者に依頼した。

 

写真:20個一束にまとめられた風船

 

 

 

 

 

 

21クラス用に予備も含めて1束20個を42束用意し、体育館に並べて用意した。集合時間に合わせてPTA役員らが1人1束ずつ会場に運んだ。

 

 

写真上:準備会場の体育館は「風船プール」になった

 

 

 

沖田会長は「大きなトラブルもなくできてよかった。前回は招かなかった保護者を今回、6年生に限って来て頂いた。コロナ情勢にもよるが、次は地域の皆さんとも一緒に出来るよう、少しずつ前進していきたい」と話していた。

 

 

 

(文・写真 Tokikazu)

紅葉、日差しに映え
公園の木々が巡る季節演出

 

――毎年11月初旬の「立冬」を過ぎると、いつか、いつか、と落ち着かなくなる。今年の「立冬」は7日だった。小欄を担当してから毎年、「立冬」過ぎから東葛にアンテナを伸ばし、紅葉を探し歩くようになった。

写真上:柔らかい日差しが紅葉のグラデーションを見事に演出した(柏の葉公園)

 

 

 

いつ、どこがよいか。下見したり、ネットで検索したりでタイミングを見計らう。2019年に柏市の観音寺、2020年に柏市郊外、2021年には松戸市の東漸寺。各地で色づいたモミジや街路樹でメーンの写真を狙った。さて今年は……。

 

 

10月に県立柏の葉公園のバラ園を訪ねた時、西側の園路に短いがモミジ並木があり、隣接する茶室「松柏亭」の日本庭園や池のほとりのモミジに気づいた。「松柏亭」のスタッフからは「来月(11月)になるときれいに紅葉しますよ」とも聞いていた。

 

 

何度か下見をして、青空が広がった11月18日昼前に訪れた。柔らかい日差しを受けたモミジ並木が赤、朱、紅の見事なグラデーションを作っていた。日が陰った前日の午後に行った時と違って、見違えるほど陽光に映えていた。のんびりと散歩を楽しむ市民も足を止めてスマホでカシャリ、カシャリ。

 

 

写真上:冬枯れが始まった園内の木陰でツワブキがひっそりと咲いていた(左)、黄葉の代表格のイチョウも陽光を受けて輝くようだ(右)

 

 

 

「松柏亭」の庭園にあるコイが泳ぐ池の回りも色づいて、水面に伸びた枝がまぶしかった。岸辺の木陰ではツマブキの群落が茎の先に鮮やかな黄色い花をつけ、存在をアピールしているようだった。

 

 

野田市の清水公園も名所だ。11月17日、公園の第1駐車場にマイカーを停め、管理事務所、ポニー牧場がある東側から園内に入った。1398(応永5)年頃の開山で野田市最古といわれるお寺、慈光山金乗院の参道にある仁王門をくぐった。左手の広場の真ん中でオレンジに染まったメタセコイアの巨木が大枝を地面すれすれに落としていた。

 

 

写真上:オレンジの大枝を翼のように地面に垂れるメタセコイヤ(清水公園)

 

 

 

西側は「もみじ谷」と名づけられているが、色づきが遅いようだ。落葉を踏みながら園路を進むと、真っ赤になったドウダンツツジがあったり、伸びた茎に野鳥が好みそうな紫や白の小さな実をつけた一群があったり。季節の移ろいを楽しめた。

 

大勢の 中に我あり 冬紅葉   星野立子

 

 

 

写真上:モミジに負けじと赤く染まったドウダンツツジ(左)、冬枯れが始まった園樹に交じって紫と白の小さな実をつけた小枝(清水公園)

 

 

 

各地方気象台が地元の「ヤマモミジ」や「オオモミジ」「イタヤカエデ」を標準木に選び、観測して「カエデの紅葉日」を発表している。今年のトップは旭川、釧路が同日の10月18日。本州では青森11月11日、福島同14日、盛岡同16日という。

 

 

紅葉は最低気温8度以下から始まるため、年ごとの気温変化や寒暖差などで一定ではない。平年より遅かったり、早かったり。同じ「紅葉日」だった旭川は平年より5日早かったし、釧路は2日遅かった。

 

 

10月に北海道をスタート、南北に長い列島を南下し12月にかけて九州に駆け抜ける紅葉だが、気になるネットニュースを見た。1953(昭和28)年以降の「紅葉日」の経年変化で、10年あたり3日前後の割合で遅くなっている、というのだ。

 

 

要因の一つとして温暖化による長期的な気温上昇が考えられている。ここら辺の紅葉探しを「立冬」過ぎから「冬至」辺りに変える日が、いつか来るのだろうか。

 

 

(文・写真 Tokikazu)