各世代、階層の支持を
講演会「美術館、本当に必要?」
――公立美術館建設を目指す「柏の文化を育てる会」(三坂俊明代表)の第3回講演会が5月24日、柏市教育福祉会館「ラコルタ柏」であった。今回は「アートと美術館はほんとうに必要か」とのタイトル。千葉県立美術館(千葉市中央区)の貝塚健(かいづか・つよし)館長が講演した。

■写真上:「アートと美術館はほんとうに必要か」のテーマで講演する千葉県立美術館の貝塚健館長
冒頭、貝塚氏は個人の立場で参加して話したい、と前置き。そして「アートと美術館は、人間社会に絶対に必要である、が私の結論。ただし、柏市に市立美術館が必要かどうかは、よくわからない。きょうは皆さんに道しるべを示すものではなく、皆さんが自ら道しるべをつくることを励ますだけのもの」と切り出した。
アートの起源として1万3千年~2万年前のアルタミラ洞窟(スペイン)、ラスコー洞窟(フランス)の壁画、世界最古の絵画とも評されるブロンボス洞窟(南アフリカ)で見つかった7万3千年前の模様付き石を取り上げた。
南アフリカの洞窟で発見され、人間の顔のように見える300万年前の「マカパンスガットの小石」の写真を投影して考察。アートに必要なものは「想像力」「共感力」「期待力」と指摘した。
「マカパンスガットの小石」は人類の祖先(アウストラロピテクス)が見つけて持ち帰ったとされる。貝塚氏は「小石を観て人間の顔だと思い、大事にしたい心が芽生えるのがアートではないか」と分析した。

■写真左:常磐線沿線住民の誘客に力を入れるという貝塚館長
■写真右:第3回講演会のチラシ
美術館に欠かせないものは理念、作品などの蓄積、施設、活動、職員、利用者、運営資金。特に理念はいろんな人の意見を聴いて、市民が納得できるものにすべきだ、という。
「美術館を造ると決まってから理念づくりに最低3年はかかると思う。文句を言う人も出てくるが、拒絶しないで巻き込んでいくことが大切だ」
聴衆との質疑応答の中で、貝塚氏はあらゆる世代、階層に支持される美術館を目指すため、各世代、階層をターゲットにした展示内容を選ぶことでトータルに支持される、との考えを示した。
文化庁が今年2月、国立博物館・美術館の展示事業費に関し、入場料やグッズ販売などで自己収入比率を高める数値目標を示した。税金依存度を減らし、自力運営を高める方向性を打ち出した。
国の意向は、地方の公立美術館にも波及、影響しそうだ。そんな背景から貝塚氏は「アートと美術館は必要だ」としながらも「柏市に市立美術館が必要かどうか」と一歩、引いた言い回しになったような気がした。
柏市単独でなく、隣接市との連携、東葛地域レベルの広域施設とする構想も示唆したのではないか。人口減、それに伴う財政難が懸念されるため、確かに行政連携による持続可能な施設運営も考えるべきだ、と思う。

■写真左:美術館実現を訴える「柏の文化を育てる会」の寺前好人幹事
■写真中:来賓として招かれ、あいさつする田牧徹・柏市教育長
■写真右:講師の貝塚館長を紹介する第1回講演会講師の佐々木秀彦さん
講演に先立ち、来賓として招かれた田牧徹・柏市教育長は「柏には優れた美術品や遺跡から出土した土器類が保管庫に眠っている。市民や子どもたちが間近に観られる美術館誕生のため、課題はあるが、皆さんの賛同を得ながら一緒に活動したい」とあいさつした。
「育てる会」は2024(令和6)年10月、経済人や作家、書家、文化人ら22人が集まってスタート。25年4月、東京都歴史文化財団・アーツカウンシル東京企画課長の佐々木秀彦さんが「柏にふさわしいミュージアム」と題して講演会。
同11月の講演会では「育てる会」独自調査の各地美術館調査報告や「育てる会」幹事で芸術・陶芸家の寺前好人さんの「パブリックアート」講演、柏市の「清水メガネ」によるweb美術館「みんなのミュージアム」が紹介された。
講演会と並行し「育てる会」が街角や公共施設で展示されている彫塑やモニュメント、絵画などの美術品を取材して作った「まちなかアートマップ」(A4判四つ折り)の発行も始めた。発足して3年、活動成果を積み重ねている。
(文・写真 佐々木和彦)





























