年数日の「美術館」
今年もマイホームで開館
――流山市駒木の齊藤公子さん(70)が、2階建て住宅で自身の手作り品や知人の絵画、陶芸などを展示する「小さな美術館」を11月1日に開館した。毎年1回、マイホーム全室をギャラリーにし、数日だけ開館する私設美術館だ。

■写真左:作品を紹介する齊藤公子さん
■写真右:美術館開館案内のはがき
庭先のコスモスが出迎える玄関に入ると、すぐ左の壁に看板代わりの作品が掛かっていた。ベレー帽をかぶり、絵筆を持った折り紙の絵描きが黒板で説明する。「第15回小さな美術館 大事な事は、見えないんだよ。しっかりと心で感じなければ」
「これは今年のテーマ。世の中の合理化が進んで想像力がなくなっている。例えば植物は、土の中で見えない根がしっかり張っているから生長して花が咲き、実がなることをね」と齊藤さん。文字通り草の根的な美術館の「心」を語る。

■写真左:開館中、入り口ドアは開けっぱなし
■写真右:玄関の壁に飾られた「小さな美術館」のタイトル入り作品
作品は4LDKの居室だけでなく、廊下の壁や階段の踊り場、出窓、押し入れにも飾られている。開館中、齊藤さんは2階の折り紙作品ルームに布団を敷いて寝るそうだ。
今年は齊藤さんの「古希」と重なった。折り紙作品の集大成と自然の小枝、木の実など身近にあるものを使った作品をそろえたという。参加した知人の作品も展示され、初日から大勢の見学者が訪れた。

■写真上:出窓に小枝や木の実などを使った手作り品が並んだ
「小さな美術館」が始まったのは2007(平成19)年11月。きっかけは前年に夫の榮一さん(当時55)が病死したことだった。

■写真上:押し入れの棚いっぱいに展示された亡き夫・榮一さんの陶芸作品
榮一さんは闘病生活を送りながらリハビリを兼ねて陶芸に取り組んだ。茶碗や皿、カップなど数多くの作品を遺している。創作活動に取り組み、作品づくりをしている知人も少なくない。
柏市篠籠田の画家藤澤孔格(よしひろ)さん(74)もその一人。齊藤さんの人物画など3点を出品し、スタッフとして来場者の案内役も務めた。「齊藤さんは企画力があって、行動力もあり、人を大切にする方。子どもから高齢者まで各分野の男女から親しまれ、美術館を通じた繋がりの輪が広がっている」

■写真左:19歳の齊藤さん(鉛筆画)
■写真右:56歳の齊藤さん(油絵)(いずれも写真を参考にした画家藤澤孔格さん作)
榮一さんの遺作と世話になっている知人の作品を発表する場としてマイホームの美術館化を思い立った。毎年、春秋のいずれかの数日間だけ開館する。節目となった10回目の2016(平成28)年でいったん閉館した。
平成から令和に変わったのを機に2019年に再開したものの、翌年からのコロナ禍で閉館を余儀なくされた。知人らから「いつ再開するの」との声に押されるように、2022(令和4)年から再び始めた。
【自然木・木の実作品の1部】

■写真左:ピクニックのカップル?
■写真右:馬車に乗って農作業に向かう様子

■写真左:ギンナンの実の殻に古布で作った人形
■写真右:お茶の実を使った「孫を子守するお爺ちゃん」

■写真左:竹細工の「かぐや姫」
■写真右:「一寸法師」
【思い出の光景】

■写真左:折り紙に貼り絵、クレヨン画で描いた小学2年の時の教室
■写真右:折り紙、貼り紙に粘土、小枝でかまどを再現した「昭和の台所」
元銀行員。仕事で訪れたお年寄り宅で福祉問題に触れ、退職後、介護福祉士やホームヘルパーなどの資格を取った。生活支援をしてきた高齢者や障害者らの作品も展示してきた。
齊藤さんは「来て下さった方に気に入った物を探してもらうため、毎年、展示物を変え、心を込めて作っています。皆さんの笑顔が見たいので、私の想像力が働く限りは続けていきたい」という。
(文・写真 佐々木和彦)











