取材「人と街の記憶」

9月

     9月

第17回東彩会展

開 催:2025年9月9日(火)~同14日(日)
場 所:興風会館・地下ギャラリー
    野田市野田250
主 催:東彩会
入 場:無料



校門に「大野アート」
そりゃーいいもんだニャー

設 置 2025年9月1日
場 所 柏市立富勢東小学校
    柏市布施2176-2
取材日 2025年9月17日



生涯現役ときわ会
2025作品展・活動展
 

開 催 2025年9月22日(月)~同25日(木)
時 間 10時~18時
    (初日13時から、最終日17時まで)
場 所 柏市文化・交流複合施設「パレット柏・柏市民ギャラリー」
柏市柏1-7-1-301号
(Day Oneタワー3階)
主 催 生涯現役ときわ会
後 援 我孫子、柏、流山、松戸各市教育委員会
入 場 無料



小板橋ひろみ個展

開 催 2025年9月23日(火)~同28日(日)
時 間 9時~19時(初日は12時から、最終日は17時まで)
場 所 千葉県福祉ふれあいプラザ第2ギャラリー
    (JR我孫子駅南口 けやきプラザ2階)
    我孫子市本町3-1-2
主 催 湖畔のアトリエ
入場料 無料


熟達の味わいも
野田の第17回東彩会展

――野田市の中心市街地にある興風会館地下ギャラリーで、地元の絵画グループ「東彩会」(東條久夫会長、会員23人)の「第17回東彩会展」があった。

 

 

写真上:入場者に作品を説明する東彩会スタッフ(右)

 

 


市内の東部公民館であった水彩画講座の参加者らで2007(同19)年に発足したグループ。講師で美術系大学を志向する高校生らを指導したり、絵画教室を開いたりのアートディレクター小林茂規さんを月2回囲んで指導を受け、制作活動を続けている。

 

 

写真左:作品の前で立ち止まる入場者
写真右:指導者の小林茂規さん(前列右)と東條久夫会長(後列左から2人目)ら会員

 

 

 

写真左:「スペースB プラス―2025」(小林茂規講師)
写真右:「東彩会展」の案内はがき


 

 

作品展は会発足3年目から開催し、第3回展から同会館が定例会場のようになった。今回も水彩、アクリル、油彩などで風景、静物、モデル画など計44点がギャラリーいっぱいに展示された。

 

 

写真左:「夏景色」(東條久夫)
写真右:「牛久シャトー」(池垣育雄)

 

 

 

写真左:「萩の海」(山中文子)
写真右:「尾瀬-雨(アメ)」(河井和寿)

 

 

 

写真左:「ジャスミーナ」(張替均)
写真中央:「(まめバス)発車しま~す」(中村正幸)
写真右:「街角」(駒崎憲子)

 

 

5代目となる東條会長に聞いた。17回目となる今回の売りは?

 

「特になし。年1回、会員の作品発表の場ということだけ」

 

 

 

写真左:「裸婦」(長崎勝彦)
写真右:「カジュアル」(山口宗一)

 

 

 

写真左:「時を刻む」(田頭宣昭)
写真右:「ちょっと休憩」(遠藤博)

 

 

 

写真左:「宇宙から観る」(田中斉)
写真右:「丸い野菜」(庭山恵一)

 

 

 

東條会長は第1回展から参加している東彩会の草分け的存在だ。初めは水彩画に取り組んでいたが、近頃はなんにでも描けて、重ね塗りも出来るアクリルに力を入れている。

 

 

小林講師は「みんな活動して10年以上になってきた。会員の個性とか形が出てきて、誰の作品かわかるようになってきた。楽しいよね」と会員の「進化」を評価する。

 

 

グループは創立10年、同15年に周年記念のスケッチ旅行などを企画してきた。東條会長は小林講師ら相談しながら創立20周年、作品展20回記念の準備を始めた。

 

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

校門に「大野アート」
そりゃーいいもんだニャー

――柏市立富勢東小学校(山口祥子校長、児童100人)の校門に木版画家大野隆司さんが絵を描いた。トレードマークのネコが「いいことあるよ。ほんとだ門!」と児童に話しかけてくるようだ。

 

 

登下校時に通る左右の門、表裏延べ4面にネコやイヌ、サカナ、イカ、ヤギの絵とともに「うおー」とか「ごきげん いかが」とか、登場する生きものに大野さん得意の駄洒落が入る。

 

 

写真上:登校時に3匹のネコが出迎える右門(右)と大野隆司さん

 

 

 

開校47年で苔むした校門の改修にあたり、山口校長が「子どもたちの気持ちが明るくなる校門にしたい」として、可愛いネコの絵柄に駄洒落が温かい大野さんに頼んだ。

 

 

それに同校と大野さんの縁も深い。2012(平成24)年4月から3年間、同校校長だった詩人で書家の石井礼子さんと大野さんは古くから親交がある。詩や書と絵のコラボ作品を発表する間柄だ

 

 

写真上:大野さんによる「校門アート」の原画

 

 

 

写真上:駄洒落が利く入り口左門の作品

 


 

写真上:下校時の左門(左)と右門に描かれた大野作品

 

 

 

石井校長当時、大野さんが6年生の版画の指導に来て以来、多くの作品を残している。校長室や廊下など校内のあちこちに大野さんの作品が飾られているのだ。

 

 

写真左:校内のあちこちに大野作品が飾られている
写真右:十数年前、大野さんが版画指導に訪れた頃の写真もあった

 

 

 

夏休み後半の8月22、25両日、石井さんや山口校長、菊池賢治教頭も手伝いに入って絵を完成させた。

 

 

夏休み明けの9月1日、登校してきた子どもたちは「大野アート」の校門に驚いた様子だったという。6年生は図工の時間で「6年間の思い出」のテーマで絵を描き始めたが「大野アート」の校門を描く児童もいるという。

 

 

山口校長は「ここで学んだ子どもたちの想い出の校門になればいいですね」。

 

 

校門の絵は空とも海とも感じられる水色が背景。ネコなどの動物も単色のままだ。あえて多色塗せず、シンプルな絵柄で観た子どもたちにいろんなイメージを膨らませてもらう。そんな大野さんの「心」があるように感じた。

 

 

写真上:実物投影機(左)を使うなどで版画教室を開く大野さん

 

 

 

9月17日、大野さんは4年生25人の版画教室を受け持った。版画の「師匠」として、彫刻刀の使い方、掘り方を伝授した。

 

 

「けがをしないよう彫刻刀は両手を使うんだよ。失敗してもいい。5秒だけ落ち込んで気持ちを切り替えてねー」

 

 

子どもたちは元気に返事したり、見本が黒板に映写されると拍手したり。楽しい時間を過ごした。

 

 

写真左:版画に取り組む児童
写真右:子どもたちにネコのイラスト付きサインをする大野さん

 

 

授業が終わった昼休み、スケッチブックなどを手にした子どもたちが大野さんにサインを求めて列をなした。

 

 

大野さんは一人ずつにネコのイラストを描きながらていねいなサインをプレゼントした。

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

絵画、写真、俳句、手芸…
シニアグループの多彩な作品展

――高齢化の中で目標を持ち、心身ともに健康な生活を続けようという、という「生涯現役ときわ会」(逸見隆夫会長、会員150人)の作品展・活動展が9月22日から柏市の「パレット柏・市民ギャラリー」で開かれた。

 

 

写真上:作品を熱心に鑑賞する入場者

 

 

 

今年も「アート・クラブ」「写真クラブ」「わかば俳句会」「わいわいクラブ」や個人で活動をする会員の写真、絵画、俳句、陶芸、手芸など力作が展示された。

 

 

写真左:逸見隆夫会長(後列右から2人目)、今成紘・前会長(前列右)らときわ会メンバー
写真右:作品展ポスター

 

 

 

我孫子、柏、松戸市などの住民でつくる「ときわ会」は、1993(平成5)年4月に発足した。

 

 

上記の活動クラブに加え「健康麻雀会」「郷土史友の会」、手品の「TOMAC」、混声合唱団「フレンドリーシンガーズ」など16グループがあり、それぞれ好みのグループで活動している。

 

【アート・クラブ作品】

 

 

写真左:「5月の小石川植物園」(鈴木陽一郎)
写真右:「真赤な秋」(宮本朝子)

 

 

 

写真左:「羊飼いの少年」(山城しい子)
写真右:「想い出のオルゴール」(岩井洋子)

 

 

 

写真左:「初夏の手賀大橋」(小山脩)
写真右:「無題」(宮永紘子)

 

 

 

6代目の前会長、今成紘さんによると、ピーク時には300人近い会員がいた。「高齢化で会員も少なくなって、出品作品も減った。それでもバラエティーに富んだ作品が楽しめるでしょう」という。

 

 

会場に順路はないが、右回りに「アート・クラブ」の絵画、「写真クラブ」の写真、「わかば俳句会」の俳句、個人による油絵、水墨画の掛け軸、編み物やバッグの手芸など多彩な作品が並ぶ。

 

 

【写真クラブ作品】

 

 

写真左:「石見神楽」(橋詰淳二)
写真右:「ビジネス街のオアシス」(立石節子)

 

 

 

写真左:「超ジャンボ」(成瀬忠雄)
写真右:「夜空に輝く」(中里直子)

 

 

【わかば俳句会作品】

 

 

写真上:俳句会会員の作品

 

 

今成・前会長は、山梨県北杜市で樹齢2千年ともいわれる桜がある「山高神代桜の郷」をモチーフにした。甲斐駒ヶ岳を背景に見事な桜の油絵など2作品を出した。

 

【個人・活動グループ展】

 

 

写真左:「山高神代桜の郷」(油彩/今成紘)
写真右:「ミラーレイク(ニュージーランド)」(水彩/平本まさ子)

 

 

 

写真左:編み物の夏用、冬用セーター(三浦喜代子)
写真右:ミニ凧(わいわいクラブ)

 

 

 

写真左:「秋冬 掛け軸(水墨画)」(島貫和治)
写真右:「ロバのおすわりぬいぐるみ」(山本絢子)

 

 

手芸を始めて3年という山本絢子さんは「ロバのおすわりぬいぐるみ」を出品した。

 

 

「はじめはバッグを作っていたけど、手芸雑誌で可愛いロバのぬいぐるみが出ていたのでやってみた。目とか鼻とか細かい作業が多くて87歳の私には難しかったわ」

 

 

2頭のロバが椅子にちょこんと腰掛ける素敵な作品に仕上がった。

 

 

「卓球クラブ」などで活動する逸見会長は「会員の皆さんに16グループの好きなグループに入ってもらうなどで元気に、何かの目標を持って楽しく活動してもらえれば」と話している。

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

様々なモチーフ、画風
まるでグループ展のよう

――畳17畳ほどのギャラリーに飾られた油絵は、様々なモチーフが具象的だったり、抽象的だったり。個展というより、まるでグループ展のようにバラエティーに富んでいた。

 

 

写真左:作品の展示会場
写真右:個展の案内はがき

 

 

 

JR我孫子駅南口にある千葉県福祉ふれあいプラザ第2ギャラリー(けやきプラザ2階)で9月23日から開かれた「小板橋ひろみ個展」の印象だ。

 

 

写真上:作品「猫のいる部屋」と小板橋ひろみさん

 

 


手賀沼の景色を描いた「振り向けば月の出」などは具象的だが、森の中で何者(?)かが焚火を囲む「あ、どうも」などは抽象的に観える。

 

 

写真左:「振り向けば月の出」
写真右:「あの日あなたも観ていましたか」

 

 

 

写真左:「オオバンのいる公園」
写真右:「笑顔クラブ公園に行く」

 

 

 

風景や女性を描く筆のタッチもまろやかだったり、鋭かったりの違いもあって画風の変化も感じられる。絵筆を持つといろんなタイプの作家に「変身」するのかも知れない。

 

 

幼い頃、両親がとってくれた子ども向け世界文学全集や、「日曜画家」の父親が持っていたアート系雑誌に登場するヨーロッパの画家の絵に衝撃を受けた。

 

 

フランス出身のアンリ・ルソーによる仮面の男女が月夜の森を散歩する幻想的な「カーニバルの夜」。それにぐにゃり溶けた時計の絵で知られ、シュルレアリズムの代表的作家といわれるスペイン出身のサルバドール・ダリの絵だ。

 

幼な心にも「衝撃を受け、心酔した」という小板橋さんは、小学生の頃から図工が大好きだった。成人してからは、理論より実践という長沢節(1917―1999)の「セツ・モードセミナー」に通って絵を習った。

 

 

写真左:「あ、どうも」
写真右上:「夜のアトリエ」

写真右下:「旅行者」

 

 

 

30代で家庭と仕事のかけ持ちで絵から離れたが、美術展に通って絵を鑑賞していた。

 

 

再び絵筆を持つようになったのは50代半ばだった。体調を崩し、無気力の日々が続いたある日、わけもなく小さな紙に色鉛筆でドローイングをするようになった。

 

 

東京・上野の美術教室に通い、油絵を習っている。「ピンときたものや、手賀沼のオオバンの絵のように散歩していて見つけた面白いものを描いている」という。

 

 

写真左:「寛(くつろ)ぐ」
写真右:「森の夢」

 

 

 

写真左:「ハクモクレンは夜の明かり」
写真右:「残月」

 

 

 

写真左:「生命」
写真右:「三人のモデル」

 

 

 

様々な画風は幼い頃の「衝撃」や美術界に多彩な人材を輩出した「セツ・モードセミナー」での出会い、経験が影響しているのかも知れない。

 

 

2018(平成30)年から個展・グループ展を開くようになった。「都展」や「世界絵画大賞展」などで入選している。

 

 

「上達したいとか考えないで、自分の好きな世界や物語をワクワクしながら描き続けたい」

 

 

同じ風景、モデルであっても色遣いなど全く違う絵描き仲間と10月20日から我孫子市生涯学習センター「アビスタ」で「森のアトリエ二人展」を計画している。

 

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)