取材「人と街の記憶」

7月

     7月

第7回柏市美術会展

開催 2025年7月1日(火)~同7日(月)
時 間 10時~17時
    (初日13時から、最終日15時まで)
場 所 柏市文化・交流複合施設「パレット柏・柏市民ギャラリー」
柏市柏1-7-1-301号
(Day Oneタワー3階)
主 催 柏市美術会
後 援 柏市、柏市教育委員会
入 場 無料


みたぽんギター教室

場所 柏教室(JR柏駅東口ザ・カシワタワー内)
大洞院(柏市花野井)
ミッケおおたかの森(つくばエクスプレス・東武野田線流山おおたかの駅前)
神田音楽学校(東京・神田)
主 催 三谷光恵(オフィスみたぽん)
参 加 会費制
問い合わせ https://mitapon.com/



我孫子市制施行55周年記念事業
めるへん文庫感謝祭
第Ⅲ期「めるへん文庫の想いは引き継がれる」
 

開 催 2025年7月11日(金)~同16日(水)
時 間 9時30分~17時30分(最終日13時まで)
場 所 あびこ市民プラザギャラリー
    あびこショッピングプラザ3階
    我孫子市我孫子4-11-1
    ☎04-7183-2111
主 催 我孫子市教育委員会


柏まつり
青森ねぶた囃子演奏

開 催 2025年7月26日(土)
時 間 15時30分~16時
    18時~18時30分
    19時~19時30分
場 所 千葉銀行西口支店前
    柏市柏末広町5-19
    (JR柏駅西口)
主 催 青森ねぶたファンクラブ四神会
入 場 無料


こだわり、メッセージ
第7回柏市美術会展

――柏在住、在勤、出身者らの会員組織「柏市美術会」(根本忠緒会長、会員22人)の「第7回柏市美術会展」が7月1日から柏市文化・交流複合施設「パレット柏・柏市民ギャラリー」でスタートした。

 

 

写真上:「WORK-春―」(根本忠緒)などを鑑賞する入場者

 

 


油彩、アクリル、水彩、染色という多彩な画材、画法で、独自の視点でとらえた自然風景、街角、人物、遺跡、心象風景など多彩なテーマとなっている。


 

「100号以上という決まりはないのだが、何となく無言の申し合わせのようで……」(会員の一人)。出品された28作品のうち、今年も半数以上が100号を超える大作だ。

 

 

写真上:「Bouquet」(左)、「♬」(さとうけい子)

 

 

 

写真上:「Water garden-景」(左)、「Water garden-射」(関口聖子)

 

 

 

写真左:「杜の声」(大橋けいこ)

写真右:「山麓」(海老原利雄)

 

 

 

写真左:「クリスティアーナ」(村山和子)

写真右:「蒸留装置のある実験室」(有賀敏明)

 

 

松谷登さんは100号「月」と10号「早朝の村」の2点を出品した。渡航先の欧州の心象風景が多かったが、日本の農村部も描くようになった。「観た瞬間に私の作品とわかってもらえるのもいいが、『こんな作品もあるんですか?』って言われるのも悪くない」という。

 

 

写真左:「月」(松谷登)

写真右:柏市美術会展のポスター

 

 

 

昨年から参加の有井はるみさんは、白い絹地を筆や刷毛で塗って染め、絵に仕上げる染色画だ。「染色は工芸なので」として一度、入会を断られたが、有井さんの個展を観た会員から「染色とはいえ、立派な絵画」と称賛され、入会した。

 

 

130号の「生命(いのち)」と題した作品は、薄暗い水辺で朽ちて残った木株、倒木の間から新緑の若木が伸びる。有井さんは、何度も生死を繰り返し、新しい命に生まれ変わる「輪廻転生」を描きたかったのだという。

 

 

写真左:「生命(いのち)」(有井はるみ)

写真右:「NO PASARAN!」(中野耕司)

 

 

有井さんの作品の隣に、同じく昨年から参加の中野耕司さんの130号「NO PASARAN!」が飾られた。スペイン語で「奴らを通すな」の意味だそうで、スペイン内戦の反ファシズム運動のスローガンだったとか。

 

 

米軍のオスプレイが飛ぶ空を背に、戦争放棄の憲法という意味の英文と「9」が入った赤い本を抱えた赤い帽子の男性、赤いドレスの女性が描かれている。「赤は好きな色。反戦デモには今でも参加する」という中野さんの想いが伝わってくる。

 

 

「この二人がしっかりした仕事をしてくれて、会員の個性が発揮された会場になった」と根本会長。

 

 

写真左:「手賀沼の送電塔」(井上武)

写真右:「思い出の町思い出の木」(伊藤一子)

 

 

 

写真左:「水辺の街」(細野茂紀)

写真右:「野晒し」(阿部悟)

 

 

 

写真左:「文書の成立・違法判決」(黒田邦裕)

写真右:「暮光」(大浦秀尚)

 

 

 

写真左:「刻の行方」(海東照子)

写真右:「見えない時間」(内田正子)

 

 

 

写真左:「遺跡」(早川清美)

写真右:「ひとり旅・西の岬」(香島ひで子)

 

 

 

写真左:「組曲」(石﨑琇子)

写真右:「落日の詩」(伊藤進)

 

 


会場をぐるりと見回した根本会長。「いろんな方向性があるとは思うが、この雰囲気を大事にして、会を運営していきたい」と話した。

 

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

合間に弾む会話
シルバー層のギター教室

――柏市花野井にあるお寺、大洞院本堂裏から時折、ギターの美しい音色が聞こえてくる。70歳以上の高齢者が月2回、「みたぽんギター教室」のグループレッスンに通ってくる。

 

 

写真上:ギターの音色が響き、時折、ミニライブのようになるレッスン場

 

 

 

講師は柏市のギター奏者、「みたぽん」こと三谷光恵さん(66)。グループレッスンにクラシックギターを抱えた73~80歳の4人が参加する。ドレミファからC、Am、Dm、G7といった基本的なコード(和音)進行に始まり、課題曲に取り組む。

 

 

写真左:ギター奏者の三谷光恵講師
写真右:最年長の森文昭さん

 

 

 

曲のコードを受講者が弾き、三谷さんがメロディーを奏でる。逆に受講者がメロディーを受け持ち、三谷さんが伴奏のようにコードを弾く。自然にハーモニーが生まれ、レッスン場がミニライブ会場のようになる。

 

 

「みんなばっちりできているわよ。すばらしい。音さえ出ていれば指使いは気にしなくていいですよ」と三谷さん。

 

 

ギター教室を始めた頃、初心者が「手指が痛くなって弦を押さえられない」とあきらめることが多いのを実感していた。

 

 

そこで左手で握る部分に補助器具「ギタぽん」をつけ、指一本でコードが弾ける方法を考案、初心者もギターに親しめるようにした。

 

 

新倉廣之さん(77)は「ギタぽん」から始めた一人。練習を続け「夜一人の空間でコードを弾きながらフォークソングや演歌を歌うのがたまらなく楽しい」というまでになった。

 

 

写真上:机に置かれた課題曲の楽譜

 

 

 

かつてフォークギターを弾いていたという森文昭さん(80)は「50代の頃一時やったけど、うまくいかなくてやめちゃった。三谷先生について3~4年になるかな」という再開組だ。

 

 

レッスンの合間には若かりし頃のアーティスト、プレスリーやビートルズ、グループサウンズの思い出話に花を咲かせる。みんな同年代だけに共通項が多く、自然と話は盛り上がる。

 

 

写真左: 深沢恒さん
写真中央:三谷和隆さん
写真右: 新倉廣之さん

 

 

個人レッスンから始めた深沢恒(ひさし)さん(75)は「みんなで一緒なのもいい。お昼のランチも楽しみ」と笑った。レッスン後、大洞院の料理人が腕を振るう会費制のランチに舌鼓を打つ。

 

 

三谷さんは「教え方ですか? その場その場で考えます。無理はさせずに、それでもちょっとは背伸びさせるかな」という。

 

 

目下、「指2本だけでギターが弾ける本!」と題した教本の発行を準備している。

 

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

初公開の表紙絵も
「めるへん」の長縄画業

――全国の児童・生徒を対象にした我孫子市公募の童話、小説作品集「めるへん文庫」感謝祭の第Ⅲ期「めるへん文庫の想いは引き継がれる」が7月11日から市内の「あびこ市民プラザギャラリー」で開かれた。

 

 

写真上:長縄さんの代表作「遊びをせんとやうまれけむ」を説明する竹島いわおさん

 

 

 

柏市の画家、故長縄えい子さんが2002(平成14)年の文庫創設当初から審査員を務め、表紙絵や入選作品の挿絵を担当。感謝祭は第1期(5月1日~同15日)に「長縄えい子の世界」として文庫の表紙絵、挿絵の原画などを紹介した。

 

 

写真上:自身も手掛けた柏二番街ガイドブック「パサージュ」に載った長縄さんのインタビュー記事

 

 

第Ⅱ期(5月17日~6月6日)は「長縄えい子から黒澤颯子へ」として、生前の長縄さんと交友があり、文庫の仕事を受け継いだ柏市のイラストレーター黒澤颯子(さつこ)さんの表紙絵や挿絵を披露した。

 

 

写真左:「めるへん文庫」感謝祭第Ⅲ期のちらし

写真右:長縄さんを象徴するほうきに乗った魔女

 

 

 

今回の第Ⅲ期は文庫以外の長縄作品が数多く展示された。油彩、水彩、アクリル、版画、絵本、ポスターなどだ。

 

 

我孫子で長縄作品の本格展示は初めてになる。作品を提供者した「たけしま出版」の竹島いわおさんは「『めるへん』以外にもいろんな絵を描いていた長縄さんを知ってほしかった」という。

 

 

写真左:題不明

写真右:「また あした」

 

 

平安末期の歌謡集「梁塵秘抄」にある一節「遊びせんとや生まれけむ」は、無邪気に遊ぶ子どもたちの声に童心を呼び起こされた大人の心をうたったものと解釈されている。

 

 

写真左:題不明

写真右:版画集

 

 

写真上:40代頃の水彩画

 

 

 

このイメージから長縄さんが大勢の子どもが動物とともに群れて戯れている様子を200号の大カンバスに描き、代表作ともいわれる。竹島さんが「長縄さんらしくてとても好きな作品」として、会場入り口近くに飾られた。

 

 

写真上:津波で助かったスリランカの象を描いた絵本「つなみ」の原画。1万冊がスリランカの子どもに贈られた

 

 

 

長縄さんは2023(令和5)年1月、交通事故で亡くなった。85歳だった。翌月に発行予定の文庫作品第20集用に2枚の表紙絵を用意していた。

 

 

写真左:ポスターの数々

写真右:「めるへん文庫」表紙と挿絵

 

 

 

ほうきに乗った魔女が夜空を飛びながら子どもたちに星を振りまくのと、夜空の向こうに飛び去る様子を子どもたちが望遠鏡で見守っている図柄だ。

 

 

第20集には星を振りまく図柄が採用された。その理由について「表紙絵のひみつ」と出した我孫子市教育委員会の説明文があった。

 

 

「事故直後『魔女と望遠鏡』の絵はあまりに悲しすぎて発表できなかった。三回忌が過ぎ『めるへん』を愛してやまなかった長縄さんの想いが皆さんに届くことを願って」として、今回、初公開したのだという。

 

 

写真左:初公開となった長縄さんの「幻の表紙」

写真右:ワークショップに参加し、魔女を描いた小学2年生

 

 

 

会場の中央に置かれたテーブルで絵本やしおりづくりのワークショップもあった。長縄さんの魔女と子どもの絵が見本に置かれている。それを観た小学2年の女児が用紙された紙とペンでさらさらと文字と絵を描いた。

 

 

「ある日女のこがまじょにであいました」のタイトルと、長縄さんの絵より、少しふっくらした魔女が描かれていた。

 

 

「あのね、少し優しい感じの魔女にしたの」

 

 

柏の絵画教室で1千人上の子どもたちに絵を教え、「めるへん」表紙絵の魔女に自身を重ねているようでもあった長縄さんの想い……。絵を観た子どもに自然と引き継がれているような気がした。

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

本場より早い「津軽の夏」
2年ぶりの青森ねぶた囃子

――「ドン、ドドンド、ドン」「ラッセラー、ラッセラー」。柏まつり初日の7月26日夕、JR柏駅西口の商店街。にぎやかな太鼓、篠笛、手振り鉦の青森ねぶた囃子と威勢のよい掛け声がとどろいた。

 

 

写真上:跳人の花笠を飾った路上舞台で演奏された青森ねぶた囃子
     (いずれも7月26日、JR柏駅西口)

 

 

 

西口本通りの千葉銀行西口支店前で、午後3時30分を皮切りに同6時、同7時から1回30分のステージ。


豪快な太鼓、ヒュール、ヒュルヒュル、ピィと歯切れよい篠笛、チャリンチャリンとリズミカルな手振り鉦。青森・津軽の夏を再現するように法被姿の奏者が汗だくでまつりを盛り上げた。

 

 

 

写真左:岡野会長が久しぶりにMCを務めた
写真中央:手振り鉦のちびっ子も名調子
写真右:3人並んで腹に響くような太鼓を打った

 

 

柏まつりでは本場・青森より小さい「柏ねぶた」が運行され、呼び物の一つだった。維持管理の問題などから2023(令和5)年を最後に取りやめになった。地元商店街の企画で実現した2年ぶりのねぶた囃子だった。

 

 

「柏ねぶた」運行を地元の色んな囃子連が支えていた。今回、登場したのは練習、伝承活動を続けている「青森ねぶたファンクラブ四神会」(岡野宣正会長、30人)のメンバーだ。

 

 

写真上:息の合った小気味よい篠笛の音色が会場を包んだ

 

 

 

久しぶりにMCを務めた岡野会長は「商店街のご協力で演じることができました。感激で涙がでそうです」とあいさつ。数あるねぶた囃子の種類を紹介しながら、なじみ深い「進行」の演奏に合わせ「ラッセラー、ラッセラー」「ラッセ、ラッセ、ラッセラー」の掛け声を飛ばした。

 

演奏の合間、メンバーに駆け寄り「あす(7月27日)は何時から?」とか「来年はやるのか?」と熱心に質問する市民もいた。そのたびにメンバーは「きょうだけなんですよー」とすまなそうに答えていた。

 

 

 

写真上:終演後、観客にあいさつするメンバー

 

 

午後7時30分、最後の演奏を終えたメンバーは、集まった観客に深々と頭を下げた。

 

 

岡野会長は「柏ねぶた」のお囃子を29年間、妻の絵津子さんとともに支え続けた。「演奏の場をつくってくれた商店会の皆さんに感謝、感謝です。久しぶりに観客の笑顔を見た時は本当に涙が出てきた。復活はまだ先の話でしょうが、たくさんの皆さんのご協力が必要です」

 

 

写真上:最後の運行となった「柏ねぶた」。「29年間ありがとう」のメッセージがあった
写真下左:特設ステージの前で踊る「跳人」(はねと)
写真下右:別れを惜しむように「柏ねぶた」を囲んだ観客
(いずれも2023年7月29日、JR柏駅西口)

 

 

 

 

本場・青森ねぶたの出陣は毎年8月2日。「柏ねぶた」の再出陣は見通せないが、ねぶた囃子が柏まつりのレガシーとして「定番」になればいいな、と思った。

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)