題名のない作品
作者の「心」感じる写真展
――木立に差し込む斜光、紅い夕陽に包まれた森、朝陽のスポットライトで照らされた園路……。4月20日から柏市の大洞院ギャラリーで始まった写真展だ。
■写真上:組み写真も展示されたギャラリー
柏市の県立柏の葉公園近くにフォトスタジアム「アサヒカラー」を開設していた写真家安蒜静雄(あんびる・しずお)さん(75)の作品。同公園に近い自宅から職場に通うついでなどに撮影した。公園の季節感があふれる。
写真家としてフィルム時代からいろんなタイプのカメラを使いこなした安蒜さんだが、驚くことに作品のほとんどは「コンデジ」と呼ばれるコンパクトデジタルカメラの手持ち撮影だという。
手振れなし、ピシャリ合ったピント、思い切った画角、てっきりデジタル一眼を三脚に固定しての撮影と思い込んでいた。
■写真左:安蒜静雄さん
■写真右:写真展の案内はがき
「いやー、自転車で移動しながら撮影するものだから、持ち運びが便利だ。撮り方によって一眼レフと変わらないよ」と安蒜さん。さすがだな、と思った。
仕事の合間に柔らかい光が差し込んだり、霧がかかったりの風景を撮るのが好きという。今、2冊目の写真集を準備中だ。
安蒜さんは市民写真講座の講師も数多く務め、主宰する写真集団「写団萌木」や「楽写会」など柏、野田を本拠とする五つの写真グループを指導する。
大洞院での写真展は今年1月、柏の葉公園に隣接する生涯学習・芸術文化センター「さわやかちば県民プラザ」で、教え子たちが開いた安蒜さんの写真展「県立柏の葉公園の四季」の100点の中から選んだ20点が中心という。
【安蒜静雄作品】
安蒜さんは日頃「写真は撮影者の気持ちや世界観が反映される。空気感や臨場感を感じてほしい」と話す。
その意をくんだ大洞院ギャラリー運営委員会は「題名は観た人に先入観を与える恐れがある。素直な気持ちで観て、撮影者の『心』に触れてもらおう」と今回、作品に題名をつけなかった。
(文・写真 佐々木和彦)