大事なオーナーシップ
複合・融合施設的な美術館を
――柏市立美術館建設構想を進めるグループ「柏の文化を育てる会」(三坂俊明代表)主催の「『柏に美術館を創りましょう』講演会 柏にふさわしいミュージアム―学芸員からの提案―」が4月19日、柏市教育福祉会館「ラコルタ柏」であった。

■写真上:「柏に美術館を創りましょう」講演会会場
講師は柏市在住で、東京の独自性や多様性を生かした芸術文化活動を展開する東京都歴史文化財団・アーツカウンシル東京企画部企画課長の佐々木秀彦さん。江戸東京博物館、東京都美術館などの学芸員を務め「文化的コモンズ―文化施設がつくる交響圏」(みすず書房、2024年)などの著作がある。

■写真左:学芸員の立場から美術館を語る佐々木秀彦さん
■写真右:講演会のチラシ
佐々木さんは「集めたコレクションを観てもらうだけの施設は二十数年前に終わっている」として、美術館を建てる目的、使命が重要と力説した。
上野公園にある都美術館は1995(平成7)年、東京都江東区で開館した都現代美術館にほとんどのコレクションが移り、存在意義が問われた経験談を披露した。
職員が知恵を絞って新たなミッションを考え、子どもたちのミュージアムデビューとなる「アートの入り口」を目指すことにした。一般ボランティアの「アートコミュニケーター」を募り、隣接の東京藝術大学などと連携し、特別展の対話型鑑賞やコミュニケーターが考えたワークショップなどを展開した。
近くにある国立科学博物館、藝大美術館のコレクション巡りなども企画、実践した。佐々木さんは「コレクションはなくても、連携によるコネクションで一定の使命は果たせるのではないか」。

■写真上:アートセンター志向施設を説明する佐々木さん
目指す美術館の方向性として①収蔵品中心のコレクション志向(市川市東山魁夷記念館など)②展覧会会場としてのギャラリー志向(国立新美術館など)③音楽とアート、ワークショップなどのアートセンター志向(川口市立アートギャラリー・アトリアなど)④コレクション、展示、センター機能の総合志向(千葉市美術館など)の4タイプを挙げた。
① 美術館にふさわしいコレクションがあるか②話題の展覧会などは都内で鑑賞できる③テーマや活動方針が決まれば着手可能④これから始めて何年かかるか――として、柏にはアートセンター機能がふさわしい、との考えを示唆した。
佐々木さんは「いかにして持続可能な施設にするか。そのためには地域に役立つ意味のある施設、地域の活力に貢献できるものを考えるべきだ」と強調した。
税金を使って箱モノを造ることに嫌悪感を持つ住民も多い、とも指摘。「税金を払って美術館のオーナーになるとの意識を持ち、建設、実現だけを目的とせず、オーナーシップをもってミッションづくりなどに関わっていくべきだと思う」と述べた。
街づくりに貢献できる施設として、図書館などの文化施設とともに教育、市民運動、福祉活動なども採り入れた複合・融合施設がベターとの考えも明らかにした。
柏には風景画の高島野十郎、浮世絵師の川瀬巴水、素朴な「下総玩具」の松本節太郎らゆかりの作家が少なくない。砂川コレクション(染色家芹沢銈介、板画家棟方志功)、クレヨン画の中村順二美術館、摘水軒記念文化振興財団江戸絵画コレクションなどもある。

■写真左:美術館建設を訴える三坂・柏の文化を育てる会代表
■写真右:地域に貢献する複合・融合施設を提言する佐々木さん
佐々木さんは、柏や隣接各市を含めた文化・芸術資源をリサーチするとともに全国の中核市を見本に市民ニーズを汲み取り、財政事情に応じた美術館施設の規模を柏市や市議会に提案すべきだ――として講演会を閉めた。
主催した「柏の文化を育てる会」は昨年10月20日、旗揚げのキックオフミーテングを開き、市内の経済人や画家、書家、文化人ら23人が参加した。
講演会の冒頭、三坂代表は「市民で議論を続け、県や周辺都市とともに美術館などの文化施設を充実させ、柏を潤いのある文化・芸術都市に昇華、発展させよう」と参加者に訴えた。
(文・写真 佐々木和彦)






















