ミュージアムINFO

9月

     9月

生涯現役ときわ会
作品展・活動展

開 催 2024年9月2日(月)~同5日(木)
場 所 パレット柏・市民ギャラリー
    柏市柏1-7-1-301号
(Day Oneタワー3階)
時 間 10時~18時(初日13時から、最終日17時まで)
主 催 生涯現役ときわ会
後 援 我孫子、柏、流山、松戸各市教育委員会
入 場 無料


大野隆司
青空美術館 天からのメッセージ

日 程 2024年9月18日(水)完成
場 所 花井山 大洞院境内の塀
柏市花野井1757
04-7132-5868
設置者 大洞院ギャラリー運営委員会
拝観料 無料


ジャパンバードフェスティバル
2024プレイベント
バードカービング展
内山春雄&鳥刻の会と小学生の鳥たち
  

開 催 2024年9月24日(火)~同30日(月)
場 所 あびこ市民プラザギャラリー
    我孫子市我孫子4-11-1
    (あびこショッピングプラザ3階)
時 間 10時~17時(初日は12時から、最終日12時まで)
主 催 ジャパンバードフェスティバル後 援 我孫子市
協 賛 あびこショッピングプラザ、シミズメガネ、シーズスペース・ヌック
入場料 無料


絵画、写真、俳句……
「生涯現役」の力作並ぶ

――「出会い、ふれあい、そしてふるさと」をスローガンにした「生涯現役ときわ会」(逸見隆夫会長)の作品展・活動展が9月2日から柏市のパレット柏・市民ギャラリーで開かれた。

 

 

写真上:シニアの力作が並んだ会場(左) 「ときわ会」の作品展・活動展のポスター(右)

 

 

 

「ときわ会」には学んだり、旅行を楽しんだりの「わいわいクラブ」、花見や紅葉など季節を楽しむ「自然と親しむ会」など15クラブある。作品展にはアート・クラブ、写真クラブ、わかば俳句会がクラブとして出品。クラブに属さない会員個人の絵画や手芸品、ガラス工芸などの作品も並んだ。

 

 

写真上:会場に陣取った逸見隆夫会長(中央)らスタッフ

 

 

 

会場は四方の壁が展示スペース。右回りに絵画、写真、俳句と会員個人の作品が飾られた。中央に置かれたテーブルにはクッションやバッグ、焼き物などの工芸品が紹介された。

 

 

アート・クラブ、写真クラブの出品数はいずれも昨年より減ったという。両クラブによると、例年、会員1人3点ずつ出品するが、高齢化で体調を崩したり、猛暑だったりで、写生や撮影に出かける機会が減り、出品数が少なかったらしい。

 

 

アート・クラブは花とか、果物とかの静物画が多かった。クラブ代表の小山脩さんは今回、水彩、鉛筆、パステルと画材の違う3作品を出品した。

 

 

「違う絵をバラバラに出してみようと思った。水彩画が多いので、鉛筆とパステルで描いたものを選んだ。見に来てくださる方にとって変化があっていいかなと思った」と小山さん。

 

 

 

【アート・クラブ作品】

 

 

写真上:「想い出の一眼レフ」(宮本朝子)

 

 

 

 

写真上:「秋見つけた」(山城しい子)

 

 

 

 

写真上:「イケメン」(小山脩)

 

 

 

 

写真上:「わびすけ」(岩井洋子)

 

 

 

 

写真上:「ティータイム」(宮永紘子)

 

 

 

 

写真は風景、祭り、スナップとテーマは様々。クラブ代表の成瀬忠雄さんは「お祭りとか、子どもとか、会員個々の好みが違う。テーマはバラバラのほうが結構面白いので、各会員の得意分野を出してもらった」という。

 

 

 

【写真クラブ作品】

 

 

写真上:「ねぶた祭り」(橋詰淳二)

 

 

 

 

写真上:「そよ風」(立石節子)

 

 

 

 

写真上:「恋人の住む街へ」(中里直子)

 

 

 

 

写真上:「想い」(山本絢子)

 

 

 

 

写真上:「かわたれ時」(成瀬忠雄)

 

 

 

【わかば俳句会作品】

 

 

写真上:鳥飼成雄(左2句)、玉井信子(右2句)

 

 

 

 

写真上:中村由美(左2句)、松尾涼(右2句)

 

 

 

 

写真上:浦野五郎(左2句)、田中喜翔(右2句)

 

 

 

「ときわ会」にある15クラブの活動紹介コーナーでは、クラブごとに違う写真やイラスト入りポスターが貼り出された。

「『柏にはなんにもない』とよく耳にするが、調べてみると、そんなことはまったくない」。「郷土史友の会」の鈴木睦夫代表が強調した。

 

 

「郷土史友の会」は厳冬期と猛暑期を除く年9回、地元を始め、首都圏の史跡・文化財を探訪したり、勉強会を開いたりする。鈴木さんは「私の場合、三つの楽しみがある。第1に探訪先を事前に下調べすること、そして現地を訪れる。そのリポートを『ときわ会通信』に載せる、この三つだね」と話した。

 

 

「ときわ会通信」は年に3回発行の機関誌。今年7月20日の109号のコラム「わがまち歴史散歩」に鈴木さんの署名記事があった。旧水戸街道小金宿にあった「虚無僧寺」とも呼ばれた「一月寺」(いちげつじ)のゆかりの地や資料が展示されている松戸市立博物館の探訪記が載っていた。

 

 

 

【個人出品】

 

 

写真上:水彩画「清澄(セイチョウ)下栗」(柳本和也)

 

 

 

 

写真上:油絵「尾瀬 わたすげ」(今成紘)

 

 

 

 

写真上:水彩画「ハイデルベルク(ドイツ)」(平本まさ子)

 

 

 

 

写真上:編み物(三浦喜代子)

 

 

 

 

写真上:江戸切子(増田克司)

 

 

 

 

写真上:陶芸(須田イヨ子)

 

 

 

健康麻雀、卓球、ゴルフ、ボウリングの各クラブに入っている逸見会長の作品はない。「私はイベント担当だから、この広いギャラリーに見合うだけの数量と品目の作品を集めるのが目標だから」

 

 

「ときわ会」は高齢化社会の中で、心身健康に生きがいに満ちた生涯を送り、地域貢献しようと、東葛エリアの住民が1993(平成5)年4月に生まれたボランタリーグループ。

 

 

クラブ活動のほか、一般参加の講演会やチャリティーバザー、歌声喫茶、スポーツ大会などを開催している。

 

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

猫の壁画完成、へーえー?
大野隆司流の青空美術館

――猫の絵にだじゃれが利いたメッセージが楽しい木版画家大野隆司さんの壁画「青空美術館 天からのメッセージ」が秋の彼岸入り前日の9月18日、柏市の大洞院境内で完成した。

 

 

写真上:大洞院の墓地にある壁に猫のアクリル画とだじゃれが利いたメッセージを描く大野隆司さん

 

 

墓地の東側にある37㍍の壁画。反対側の壁面に昨年1月の交通事故で亡くなった画家長縄えい子さんの壁画もある。鬼と子どもが遊んでいるのを観音様のような女性が見守る「遊戯(ゆげ)」と名づけられた作品だ。2004(平成16)年から年をまたがり半年かけて描かれた作品だ。

 

 

写真上:最終日、出だしの猫が持つ若芽(左)が最後に根付く様子が描かれて完成した

 

 

 

大野さんの絵はF25サイズ(縦80㌢、横65㌢)の19作品が等間隔で並ぶ。すべてが新作という。元々あった大野さんの壁画が劣化してきたため、今年7月末から秋の彼岸までの完成を目指し、3か月かけて全面リニューアルした。

 

 

出だしにある「青空美術館 天からのメッセージ」の上から左手に若芽を持った猫が現れる絵からスタートする。

 

 

写真上:故長縄えい子さんが描いた壁画「遊戯」(ゆげ)

 

 

 

雲に乗り「天上は地上の鏡。笑うと笑う。泣くとなく。」 胸に猫がいる「お別れしたんじゃない。心の中に同居したんだ。」 4匹の子猫を引き連れ「生まれて生きて、生きて死んで。次の世代におすそわけ。」

 

 

モチを焼きながら「だいじにしてね。命の持ち時間。」 顔が猫のラクダ「ラクダの顔、ネコでいいや。こういう生き方が楽だ。」 尻尾をクルクル巻いた猿「くるしみ去る去る。しあわせ来る来る。」

 

 

所々にだじゃれが交じる。最後に若芽が一番下に描かれているが、若芽は最初の絵の猫も手にしていた。大洞院の責任役員で大洞院ギャラリー運営委員会の三坂俊明さんは「絵は観る人の解釈だが、作者はすべてのものが若芽のように地面に根付いて成長していくことを表したかったのでは」と解説した。

 

 

写真上:3カ月にわたる作業で37㍍の壁画を完成させた大野さん

 

 

 

【大野さんの壁画(一部)】

 

 

 

 

 

 

 

 

大野さんは東京・葛飾生まれで都内在住だが、かつて柏に20年以上住み、地元の画廊や同市立図書館などで個展を開催した。

 

 

2021(令和3)年にはパレット柏・市民ギャラリーで、ざっと300点の作品を集めた「大野隆司版画展 ビタミン絵~こころにえーよう」を開いた。

 

 

大勢の絵描き仲間がいて、長縄さんも深い交流があった一人。実は今回のリニューアル、長縄さんとの約束があったのだという。

 

 

「あなたが生きた証、一生の記録になるよう、もう一度、描き直しなさい」と長縄さんから持ちかけられ、一緒にやることになっていたのだという。

 

 

「70歳も過ぎた今、原点に戻って描きたいものだけ描こうと思って取り組んだ。頼まれたものではないし、締め切りもない。そうしたら絵が生き生きして、大変満足している。解放された絵の第一号だ」。大野さんは自己評価した。

 

 

長縄さんとのコラボ壁画の再来となった。大野さんは「近くに吉田家(旧吉田家住宅歴史公園)もあり、観光名所の一つになればいいね。パワースポットはいっぱいあるが、心がポワーとなる『ポワースポット』としてね」とだじゃれで締めた。

 

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

野鳥彫刻で蘇る鳥たち
ハワイの絶滅種を完全復元

――バードカービング(野鳥彫刻)の第一人者、我孫子市の内山春雄さん(74)のバードカービング展「内山春雄&鳥刻の会と小学生の鳥たち」が9月24日からあびこ市民プラザギャラリーで開かれた。

 

 

写真左:色んな作品が展示された会場  写真右:カービング展のポスター

 

 

 

今回も会場いっぱいに作品が展示された。内山さんが直径90㌢の円形展示物にまとめたハワイに生息する固有種「ハワイミツスイ」の系統樹も置かれている。アジアの「オオマシコ」が祖先で、500万年かけて約60種に進化したが、蚊が媒体するウイルスなどで3分の1以下に激減している野鳥だ。

 

 

写真上:バードカービングで復元したハワイミツスイの常設展で感謝状を手にする内山春雄さん(ハワイのビショップミュージアム、本人提供)

 

 

 

 

写真上:ハワイミツスイの系統樹

 

 

 

2016(平成28)年の太平洋海鳥学会に縁あって参加した内山さんは、この現実を知った。バードカービングで復元することにして、はく製のあるハワイのビショップミュージアムと交渉し、収蔵庫への出入りを許された。

 

 

同年から8年かけ、13回ハワイに渡った。はく製40種の寸法を測って図面にしたり、写真を撮ったり。はく製のないものは見つかった骨などを参考に59種を完成させた。

 

 

今年7月、ビショップミュージアムに地元画家による森の絵を背景に内山さんの作品を飾る常設展示エリアが出来た。

 

 

同時に1980年代に絶滅した、透き通るように響く鳴き声が美しい「オ―オー」の5種も彫り上げ、同じフロアで展示された。脇羽の一部が美しい黄色で、飛ぶのに支障がないよう少し羽を抜いたり、抜け落ちたものだったりを使って、ハワイのカメハメハ大王ら王族のマントが作られていたとか。

 

 

写真上:「オーオー」を制作する内山さん

 

 

 

ビショップミュージアムであった大勢の鳥研究者らが集まった完成記念のパーティーに参加した内山さんには、ハワイ出身の米上院議員から感謝状が贈られた。

 

 

今回も内山さんが力を入れている目の不自由な人に触ってもらって大小の野鳥を知ってもらうタッチカービングコーナーが設けられた。

 

 

写真上:内山さんが力を入れている目の不自由な人のためのタッチカービングコーナー

 

 

 

従来、作品一つずつに付けたデータコードを「音声再生ペン」で読み込ませて鳥の名前と鳴き声をペンのミニスピーカーから流していた。今回はQRコードを加え、スマホをかざすと、名前と鳴き声に加え、着色していない鳥のカラー写真が画面に出る機能が加わった。

 

 

写真上:タッチカービンのネームプレートにあるQRコードをスマホで読み込むと鳴き声が聞こえる

 

 

 

中央テーブルでは内山さんが愛鳥教育の一環で始めた我孫子市立我孫子第一小学校、同高野山小学校のカービング教室で、両校6年生による約200点が並んだ。

 

 

写真左:「シマエナガ」(我孫子第一小、沼田紗那)
写真右:「シロハラムクドリ」(我孫子第一小、栗山武斗)

 

 

 

写真左:「セキセイインコ」(我孫子第一小、稲木悠太)
写真右:「セキセイインコ」(高野山小、中西未来)

 

 

予めスズメ大に加工された柔らかな外材を子どもたちが専用の小刀を使って彫ったツバメ、メジロ、オオルリなどだ。孫の作品を観に来たという女性は「どれもみんなよく出来ていますね。それに可愛い」。

 

 

家族連れで訪れた幼女はニコニコしながら見入っていた。内山さんの指導を受ける一般市民の「鳥刻の会」会員も約30点を出品した。

 

 

写真上:小学生の作品に興味津々のちびっ子

 

 

 

 

写真上:「鳥刻の会」会員の作品コーナー

 

 

 

【鳥刻の会 会員作品(一部)】

 

 

写真左:「アナホリフクロウ」(茨城県取手市、橋本勇喜)
写真右:「チョウゲンボウ」(柏市、向井剛)

 

 

写真左:「メジロ」(印西市、池田得利)
写真右:「ベニアジサシ」(千葉市、長棹康晴)

 

 

 

写真上:「カルガモ」(市川市、小池健一郎)

 

 

 

内山さんは今、米・スミソニアン博物館関係者からの依頼で、絶滅したハワイの「オ―オー」を制作している。

 

 

「絶滅種とか、絶滅危惧種のはく製はカービングに代えたほうがいいと思う。悪くなっても代えが利かないし、研究者にとってはく製は大事なものだ。DNA解析などで進化を研究したり、絶滅種を復元したりの未来もある」

 

 

内山さんが会長を務める日本バードカービング協会や山階鳥類研究所、我孫子市鳥の博物館友の会、我孫子市など主催による国内最大級の鳥の祭典「ジャパンバードフェスティバル2024」が11月2、3両日、我孫子市の手賀沼湖畔で開かれる。「人と鳥の共存を目指して」をテーマに愛鳥団体などが活動発表や鳥の彫刻・絵画・写真展などを計画している。入場無料。

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)