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8月

     8月

手賀沼今昔ものがたり
杉村楚人冠への誘い—新舞踊運動—

開催 2024年8月17日(土)
時 間 

1回目
開場10時30分
開宴11時
終演12時30分
2回目
開場16時
開宴16時30分
終演18時
場 所 ふれあいホール
(JR我孫子駅南口・けやきプラザ内) 我孫子市本町3-1-2
☏04-7165-2883
主 催 歌舞伎舞踊出張イベント亀鶴屋
協 賛 我孫子市、我孫子市教育委員会
協 力 若月舞踊学院
入場料 高校生以上3500円(前売り3000円) 小中学生1500円(前売り1000円)
問い合わせ 亀鶴屋(070-3191-0130)

チケット申込QRコード


なつだ オバケだ 全員集合!
ゾッとする展

開  催 2024年7月19日(金)~同9月20(金)
場  所 柏市郷土資料展示室
     柏市沼南庁舎2階
    (柏市大島田48-1)
     ☏04-7191-1450
時  間 9時30分~17時
主  催 柏市教育委員会
入 場 料  無料


第41回人形劇 みるひとよっといで   

開 催 2024年8月21日(水)
場 所 我孫子市並木
    秋田卓、桂子夫妻の自宅庭
時 間 18時~19時30分
主 催 秋田夫妻、人形劇団「くさぶえ」
入場料 無料


手賀沼と楚人冠の創作舞踊
8月17日に我孫子で公演

――我孫子市の日本舞踊若月流家元・若月仙之助さんが芸術監督を務めて主演、市民らが出演する創作歌舞伎舞踊劇「手賀沼今昔ものがたり 杉村楚人冠への誘い—新舞踊運動—」が8月17日、JR我孫子駅南口の「ふれあいホール」で公演される。

 

 

写真上:歌舞伎舞踊「鏡獅子」の若月仙之助さん(東京都荒川区のサンパール荒川での公演から)

 

 

 

「手賀沼に関連する人々や民話、伝説を採り入れた伝統芸能を創り上げ、手賀沼を、我孫子を盛り上げたい」と若月さん。

 

 

「今昔ものがたり」は今度で3回目。初演の2022(令和4)年10月は手賀沼の「藤姫伝説」と「将門伝説」が題材。昨年8月の第2回は「アオギリとの約束」の副題で、手賀沼湖畔にある「平和の記念碑」、広島から贈られた被爆アオギリ2世にちなみ、平和を訴えた。

 

 

写真上:「手賀沼今昔ものがたり」のチラシの表面(左)と裏面

 

 

 

3回目の今回は、明治の草創期から新聞界を牽引したジャーナリスト杉村楚人冠が登場する。手賀沼湖畔に別荘を建て、都内から移住した楚人冠と新舞踊運動の先駆者、藤蔭静枝との交流が基だ。

 

 

写真上:杉村楚人冠肖像写真(我孫子市杉村楚人冠記念館提供)

 

 

 

新舞踊運動は明治末から大正にかけ、従来の歌舞伎舞踊、日本舞踊の謡曲だけでなく、民謡や演歌、歌謡曲などを自由に振付し、踊ろうというものだ。

 

 

楚人冠は昭和の初め、秋田・八幡平を探勝中、落馬して左腕を骨折、地元温泉で静養中に作詞した三味線の小歌曲「湯瀬の松風」に静枝が振付をして披露した。

 

 

我孫子市の「杉村楚人冠記念館」によると、楚人冠が別荘での気ままな生活から作詞した「朝酒の歌」にも振付している。一時期、「白馬城」と呼んだ屋敷内に建てた「崖の家」に住み、楚人冠の母が住む「澤の家」で踊ることもあった、という。

 

 

若月さんは、楚人冠と静枝の交流が新舞踊を進化、発展させ、我孫子の「河童音頭」などの自由な振付につながる下地になった、と評価する。

 

 

公演は二部構成。一部は雷神と船頭が登場する古典舞踊「常磐津 雷船頭」を若月流一門が演じる。

 

 

写真上:第一部「常磐津 雷船頭」の一場面(過去の公演から/亀鶴屋提供)

 

 

 

第二部は若月さんが手賀沼を舞台背景に坪内逍遥の新舞踊作品「新曲浦島」「お夏狂乱」を河童とともに踊る。河童が楚人冠の落馬骨折の出来事を表現し「河童音頭」で歌舞伎の立ち回りもする。

 

 

初めて参加する市内布佐中学校の卒業生らによる合唱団「アンサンブル・ルミエール」の「あびこ市民の歌」に合わせて踊り、フィナーレとなる。

 

 

写真上:「アンサンブル・ルミエール」の練習後のミーティング(我孫子市の近隣センターふさの風)

 

 

 

 

コンサートマスター當前一輝さんは「参加出来て光栄。舞台をじゃましないようにしたい」という。

 

 

河童は若月さんの長女で小学5年のつるはさんのほか、1、2回目の公演を観て参加したいと、若月さんの門を叩いた高校2年の中村帆乃加さんも登場する。

 

 

中村さんは「立ち廻りの途中、手賀沼の河童モニュメントを再現している場面があるので、ぜひ見つけて下さい」。

 

 

若月さんは大学や歌舞伎役者の養成所で学んだ。「日本の伝統文化の魅力に興味を持ってもらいたい」と出張イベントの「亀鶴屋」も立ち上げ、国内外で年間約200公演、大学、中学・高校など30カ所を回るなどの活動を続ける。

 

 

写真上:一人で獅子舞(左)、忍者などを演じる若月さん(東京都荒川区のサンパール荒川の公演から)

 

 

 

若月さんは「伝統芸に興味を持ってもらうきっかけや、手賀沼関連の舞踊劇を通じて自分たちの街を知り、大切にする気持ちを持ってほしい」と話している。

 

 

写真:公演の打ち合わせをする若月さんと「語り」の秋田桂子さん(我孫子市)

 

 

 

 

 

 

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(文・写真 佐々木和彦)

リアルな幽霊、妖怪図
夏にぴったり「ゾッとする展」

 

――柏市沼南庁舎の郷土資料展示室から「ヒュー、ドロドロドロー」というおなじみの効果音でお化けが出てきそうだ。「なつだ オバケだ 全員集合! ゾッとする展」会場。お化けや幽霊、龍、河童など伝説上の資料がたくさん展示されている。

写真上:夏休み期間とあって親子連れの入場客が目立った

 

 

市内のお寺などにある怖い掛け軸や絵馬などを集めた夏休みの子ども向け歴史企画展。2014(平成26)年夏にも「幽霊とものゝけ ~柏の怖い絵見に来ませんか~」のタイトルで開催したところ、怖いもの好きの子どもに好評だったため、第二弾の企画だ。

 

 

写真上:「ゾッとする展」のポスター・チラシ

 

 

 

会場は左回りだが、中央の四隅をパーテーションで囲ったコーナーに幽霊の掛け軸14幅を集めた。幽霊画を得意とした伊藤晴雨(1882―1961)らの手による日本画の美人画のようでもあるが、よく見ると、どれも足が描かれていない。

 

 

写真上:一見美人画の掛け軸のようだが、いずれも足がない幽霊画だった

 

 

 

奥にはご存知、四谷怪談のお岩さんが変形した顔で、すいた髪が抜けるシーンが登場。ほかにも恐ろしい顔をした女の掛け軸がずらり。エリアの照明もぐっと抑え気味で超リアル。夜中に一人で居たら怖いだろうな、と思った。

 

 

写真上:幽霊といえば四谷怪談のお岩さん。ひと際存在感があった

 

 

 

「今回はこれが売りです」と企画を担当した柏市教育委員会文化課の池亜季さん。「どういう見せ方をするか考えました。子どもが怖がりそうだったらスルーしてもらって、興味がある方に入ってもらおうと部屋空間のようにしました」

 

 

写真上:閻魔様のお面を紹介する柏市教委文化課の池亜季さん

 

 

 

見せ方の工夫は、外からも見える入り口付近にもあった。子どもが喜ぶように、かぶることもできる閻魔大王や鬼のお面を飾り、お化け、妖怪の絵17点を展示した。

 

 

四隅が囲われた幽霊掛け軸部屋

 

 

お化け、妖怪の絵は幽霊の掛け軸とともに市内名戸ヶ谷にある法林寺のコレクションという。法林寺はコレクターでもある檀家からの寄贈を受け、お盆に公開している物を今度の企画のために借り受けたという。

 

 

入り口から順路通り左回りに進むと「柏の龍伝説」の説明があった。柏市教委文化課OBで郷土史家高野博夫さんは「柏には龍の伝説が多くあって、龍のつくお寺も多い」という。

 

 

写真上:資料を説明する郷土史家高野博夫さん

 

 

 

龍の名が付いた12寺のリストが紹介されていた。特に布施地区には布施弁天(紅龍山布施弁天東海寺)をはじめ、龍が付く四つのお寺がある。布施弁天には紅色の龍が島をつくり、光明の中に天女が現れた、という起源にかかわる「紅龍伝説」もある。

 

 

写真上:紅龍伝説がある布施弁天の龍の絵馬

 

 

 

会場には布施弁天にある龍の絵馬を始め、初公開という龍の姿が浮かぶ「蟠龍石(ばんりゅうせき)」、骨の一部とされる「蟠龍骨」が展示されている。我孫子で暮らしていた志賀直哉が1920(大正9)年に参詣し「蟠龍骨」を見て、9年後に発表した短編小説「雪の遠足」で触れている。

 

 

写真上:布施弁天の寺宝、龍がわだかまっているとされる「蟠龍石」(左)、龍の骨とされる「蟠龍骨」

 

 

 

民俗学者柳田国男は13歳から3年間、長兄がいる布川(現茨城県利根町)の小川邸で暮らした。学校に行かずに野山で遊び、小川邸の土蔵にあった利根川流域の地誌「利根川図志」などの書物を読み漁った。

 

 

写真上:民俗学の柳田国男に影響を与えたとされる徳満寺の「間引き絵馬」

 

 

 

小川邸の祠で見つけた丸い球のような石が紹介されている。「柳田国男のふしぎ玉」と名づけられ、柳田の一文が添えられている。

 

 

写真上:柳田国男が旧家で見つけた「ふしぎ玉」

 

 

 

「美しい珠を覗いたとき、フーと興奮してきて、妙な気持になり、青い空で十数の星を見た。ヒヨドリのピーという鳴き声で身がギュッと引き締まった。ヒヨドリが鳴かなかったら気が変になっていたんじゃないかと思う」(「故郷七十年」から)

 

 

地獄の閻魔大王や鬼、苦しむ人々、それを見守るかのようなお地蔵様……。お寺や個人所有の大小さまざまな掛け軸が展示されている。怖い絵柄だけではなくほのぼのとした民話8話も紹介されている。

 

 

柏市観光協会がホームページに載せている50話の中からちょっと怖い物をセレクトした。その一つ、「手賀沼のかわぼたる」はお盆に川を渡ると、火の玉のようなかわぼたるに襲われるお話だ。

 

 

柏市教委文化課の池さんは「『ゾッとする展』に興味を持って来場の方々には、地域の歴史、文化を発信している当郷土資料展示室の存在を知っていただき、また来て頂けるようになれば」と期待している。

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

夜の秋に野外人形劇
夫婦と仲間が舞台手づくり

――我孫子市の国道6号に近い住宅街で8月21日、段ボールで作ったタヌキ人形の案内板が立った。タヌキやキツネの絵柄とともに「人形劇 みるひとよっといで」という誘い文句入りのポスターが貼られていた。

 

 

写真上:人形劇のポスター・チラシ

 

 

 

同市並木の秋田卓さん、桂子さん夫婦宅の庭で毎年、夏休みが終る8月下旬に開かれる人形劇。一人劇団「望舞出乱」(ぼぶでらん)の卓さん、アマチュア人形劇団「くさぶえ」の桂子さんが仲間とともに企画している。

 

 

写真上:自宅庭のシアターでぺープサート人形劇を熱演する秋田桂子さん

 

 

午後6時の開演前から近所の子どもたちが集まり始めた。舞台の準備をしていた「レモンちゃん」こと人形劇団「たんでめ」の廣瀬一峰さんが「もう来たの君たち。ならまだ早いけど始めようか」と舞台に上がった。

 

 

写真上:玄関先に置かれたたぬきの案内板

 

 

 

出し物は童謡のしりとり歌「こぶたぬきつね」。タヌキやキツネの小さな縫いぐるみを両手に表情豊かに歌う。「こぶた、たぬき、きつねー、ねーた(寝た⁈)」と人形を倒すアドリブに会場の親子連れは腹を抱えて大笑い。

 

 

写真上:表情豊かに人形を操る「レモンちゃん」こと廣瀬一峰さん

 

 

 

桂子さんは、うちわのような紙人形を使うペープサートの「すいかばたけ」を演じた。スイカを育てた農民、そのスイカを盗みに来るタヌキとのやりとり。紙人形を操りながらしっとり口調で語った。

 

 

辺りが暗くなり始めた頃、卓さんの影絵「もちもちの木」が始まった。おじいちゃんと暮らす少年が、具合が悪くなったおじいちゃんのため、普段は怖くてたまらない夜道をかけ、医者を呼びに行く。おじいちゃんを思う少年の勇気に「もちもちの木」がパーと明るく光って出迎える。

 

 

舞台裏から透明シートに描かれた切り絵をスクリーンに投影する装置を使い、名優・宇野重吉の語りとともに上映。シートは40年前、卓さんが切り絵の原作をなぞって写しとり、語りも円形フィルムレコードのソノシート音源を使って再現した手づくり品だ。

 

 

写真上:舞台裏で孫と一緒に投影装置で影絵(右)を上映する秋田卓さん

 

 

 

卓さんは「今はコピーとかスキャンとかの機械を使って出来るけど、素朴さに欠けるんだよね」と手づくりの味を強調した。

 

 

写真上:汽車ごっこするウサギとイヌの「なかよし」

 

 

 

桂子さんが考案した「ハンギングシアター」も登場。絵のあるパネルにアイテムを引っかけて小道具に使う。隣家のタヌキとキツネが贈り物をし合う「おかえし」だ。

 

 

「くさぶえ」の仲間がタヌキとキツネに扮し、テーブルやいすなどを「これおかえしです」「これはおかえしのおかえしです」と繰り返す。子どもや家まで贈り合い、しまいにはお互いを贈って、そっくり入れ替わる落ちだ。

 

 

写真左:2匹を両手で操る「わけちゃん」

写真右:エプロンシアターを披露する「ぶんちゃん」

 

 

 

全国で活躍する「ぶんちゃん」の荒木文子さん、「わけちゃん」の和気瑞江さんも特別出演。ボードに絵人形を貼ったり、外したりの「パネルシアター」、エプロンのポケットから人形を取り出して演じる「エプロンシアター」なども披露した。

 

 

いずれも人形劇だが、寸劇のようでもあり、大人も子どもも楽しめる内容だった。

 

 

写真上:「わけちゃん」「ぶんちゃん」のパネルシアター

 

 

 

卓さんは学生時代から児童文学研究会で人形劇を楽しんだ。一方の桂子さんも東京都内で幼稚園の先生の傍ら「くさぶえ」で地方公演などの劇団活動をした。二人は絵本研究会で知り合って結婚、我孫子で新婚生活を始めた。

 

 

写真上:じーと見つめたり、大笑いしたりのちびっ子たち

 

 

 

桂子さんは都内に通って勤めや「くさぶえ」を続けたが、1980(昭和55)年夏、長男を出産して人形劇に参加できなくなった。「ならいっそのこと自宅で稽古し、近所の子どもたちに観てもらおう」と野外人形劇をスタート。以来、次男誕生の1982(昭和57)年を除く毎夏、続けた。

 

 

写真上:庭をいっぱいに使った野外劇場で繰り広げられたハンギンシアター(左)などを楽しむ親子連れ

 

 

 

2019(令和元)年の39回を終え、区切りがいい翌年40回までのつもりだった。コロナ禍で20、21、22年を休演、再開した昨年に40回を迎えたが、初回からレギュラーの「レモンちゃん」が体調を崩して出られなかった。

 

 

写真上:最後は出演者全員がそろって入場者を見送った

 

 

 

「仲間のみんなが『最後にレモンちゃんがいないと締まらない』って思った。それで今年もやることになった」と桂子さん。そんなわけでポスターやチラシに「エーッ、今年もやるのぉー」の一文が入っている。

 

 

桂子さんは「こんなに長く続けようと思わず、途中でやめようとも思わなかった。観てくれる人がいるからと一緒に楽しめる。独身時代からの『くさぶえ』の仲間、ご近所、家族の協力があってこそできた」。

 

 

卓さんは「今だと時間があるけど、仕事から帰ってきて裏方として何を準備するか、バタバタした時期もあり、精一杯だった」と振り返った。

 

 

桂子さんは自宅でミニ音楽やお話サロンの「午後のた・か・ら・ば・こ」を開いたり、「朗読サークル・樹々(きぎ)の会」「我孫子の景観を育てる会」に参加したりで忙しい。

 

 

写真上:41回目の野外人形劇を終えた秋田卓さん、桂子さん夫婦

 

 

 

来年の公演は? と聞くと
桂子さん「42回はやるんです」
卓さん 「えっ、なんで、なんで」
桂子さん「卓さんの舞台装置も年々進化し、次は舞台の前でやるための照明を考えているのよね」
卓さん 「いやぁー、やるとすれば、こうした方がいいのでは、という話で……」

 

 

まるで「タクちゃん」「ケイちゃん」の寸劇を観ているような感じだった。

 

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)