異色の「染色画」登場
不思議な縁とりもつ柏美展
――柏ゆかりの作家グループ「柏市美術会」(根本忠緒会長)の「第6回柏美術会展」が7月1日から柏市文化・交流複合施設「パレット柏・市民ギャラリー」で始まった。
■写真上:「風の景<C> 」(根本忠緒)=中央=など今年も大作が集まった
今年は新会員5人を加えた23人が計27点を出品した。うち、19点が100号を超える大作。今年も自然風景から街並み、建物、人物、心象風景など多彩なテーマで、油絵、水彩、アクリルなど画材も様々な作品が出そろった。
■写真:柏美展のポスター・はがき
同美術会事務局の香島ひで子さんは「会場の飾りつけを終えて根本会長と話したが、力のある新しい会員が入ってくれた。おかげで作品全体のレベルが上がったと思う」という。
■写真上:「ひとり旅ラプソディ」(香島ひで子)を鑑賞する入場者
新会員の一人、有井はるみさんは白い絹地を筆や刷毛で色づけして染め、絵に仕上げる「染色画」の130号を出品した。「しがらみの都市(まち)」と題した心象画だ。
頭の中の浮かんだ構図や色合いのイメージを一気に形にする。色づけしたくない箇所に蝋(ろう)を塗り、染料は交ぜないで薄い単色で染め、乾かし、蝋をはがし、別の色で染めを繰り返す。回数が増えるにしたがって色の濃さが増し、深みが出てくるのだという。
「生地に新しい色が生まれると、また、次の色を想像しながら染めを繰り返す。一つの作品で80~90回はやるかな」と有井さん。
■写真上:染色画「しがらみの都市(まち)」と作者の有井はるみさん
有井さんの話を聞いていて、我が郷土・青森を代表する伝統工芸品「津軽塗」を思い出した。漆液を何度も塗っては研ぎ、磨きを繰り返す。大変な手間と時間がかかるため、言葉は悪いが「津軽の馬鹿塗り」といわれるほどだ。
でも、有井さんは「描きたいものを考えるのに時間はかかるけど、イメージが出来上がると、乾くのを待って染めを繰り返すだけなので早い。この作品で3週間ぐらいかな」と話す。
実は有井さんと香島さんは柏市立柏第一小学校の同窓で、しかも、小学時代、場所は別々だったが、同じ先生の絵画塾に通っていたという。
有井さんは1947(昭和22)年に創立された創造美術会の染織画部長でもある。昨年7月の同美術展を訪れ、受付で入会案内を手にしたが「染色は工芸なので……」とやんわりと断られる形に。
しかし、今年1月、同じギャラリーで開いた個展「染色画展」に来た香島さんが有井さんと出会い、作品を観て「染色であっても堂々たる絵画」として入会を勧めた。
柏市美術会は柏在住、在勤、出身者らの会員制組織。2017(平成29)年からコロナ禍の20年を除き、毎年絵画展を開いている。
香島さんは「分野を問わず絵を描いている人に入ってもらっているが、有井さんとは特別なご縁を感じている」と話した。
■写真上:「NO PASARAN!」(中野耕司)
■写真上:「母の像(存命95歳)」(阿部悟)
■写真上:「見えない時間」(内田正子)
■写真上:「あの頃の実験室」(有賀敏明)
■写真上:「送電塔のある町」(井上武)(左)、「中野界隈」(早川清美)
■写真上:「風色」(細野茂紀)(左)、「無音の広場」(松谷登)
(文・写真 佐々木和彦)