雨の船上観察で野鳥24種
「観て」「聴く」バードフェス
――「人と鳥の共存を目指して」がテーマの「ジャパンバードフェスティバル(JBF)2024」(山階鳥類研究所、日本野鳥の会千葉県、我孫子野鳥を守る会、日本バードカービング協会、我孫子市などによる実行委員会主催)が11月2、3両日、我孫子市の手賀沼湖畔で開かれた。
■写真左:双眼鏡を手に船上バードウオッチングを楽しむ乗客
■写真右: JBFのポスター・チラシ
雨となった初日、手賀沼公園の遊覧船で野鳥を観察する「船上バードウオッチング」があった。第1船のガイドを務める「我孫子野鳥を守る会」の田中功幹事は「この雨だからね。鳥にはよくない。どれだけ観察できるか……」と心配顔だった。
■写真左:船上バードウオッチングガイドの田中功さん
■写真右:湖上の杭で辺りをにらむミサゴ
午前10時15分発の遊覧船に地元を始め東京、埼玉、神奈川からの15人が双眼鏡を手に乗り込んだ。乗客を前に田中さんは「雨の風情を楽しみながらどれだけの鳥が観られるか。我々としても貴重な体験です」と船の左右に目をやった。
するとすぐにカワウの群れが出迎えるように姿を見せた。岸辺近くではカルガモが船に驚いたように飛び立ち、枯れたヨシ原に白いコサギやアオサギ、ダイサギがいた。水面をオオバンやカイツブリが泳ぎ、船の回りをユリカモメやトビが飛び回る。
湖上の杭には濡れた羽根を乾かすように翼を広げるカワウ、生魚しか食べず「空飛ぶ漁師」ともいわれるミサゴが辺りを伺うようにとまっていた。セグロカモメ、イソシギなども姿を見せた。乗客は左舷に右舷にと忙しく双眼鏡を向け、確認した。
1時間余りの遊覧で計24種の野鳥が観察できた。ガイドの田中さんは「最後になってパタパタと色んな鳥が観られてホッとしている。雨の割には楽しめたね」と締めくくった。
■写真上:杭にとまって翼を広げるカワウ(左)、船上を飛び交う2羽のトビ
手賀沼公園の一角にある我孫子市生涯学習センター「アビスタ」1階のストリート壁面では「鳥に魅了されたアーティストたち」(日本ワイルドライフアート協会)の鳥にちなんだ水彩、アクリル、鉛筆画の絵や木彫、染め物など作品14点が展示された。
■写真上:「鳥に魅了されたアーティスト」展(アビスタ1階)
■写真上:宮武正則さんの「トキ」(木彫り、アーティスト展)
■写真左:筧守さんの「ツルシギ」(アクリル画、アーティスト展)
■写真右:松田蘭子さんの「クロサギ」(日本画、アーティスト展)
2階の学習室では日本バードカービング協会会長で、我孫子在住の野鳥彫刻家、内山春雄さんのバードカービング教室に通う生徒の作品が飾られた。第25回全日本バードカービング・コンテスト(10月25~同30日、東京都美術館)の出品作品でもある。最優秀賞の大賞など入賞作品が紹介された。
■写真上:第25回全日本バードカービング・コンクール大賞 麻薙俊文さんの「ウズラ」
■写真上:第25回全日本バードカービング・コンクール我孫子市長賞 土山ひとみさんの「ミユビシギ」
別室では目の不自由な人が作品を触り、野鳥をイメージできるタッチカービングのコーナーがあった。内山さんが力を入れる作品。QRコードが付いていて、スマホで読み取ると、野鳥の名前や鳴き声が流れる仕組みだ。内山さんは、不思議に思う入場者に使い方を説明していた。
■写真上:内山春雄さん(中央)からタッチカービングの説明を受ける入場者(アビスタ2階)
愛鳥週間(5月10日~同16日)にちなみ、千葉県が県内の児童・生徒から募集したポスターコンクールの入賞作品や「全日本鳥フォトコンテストin JBF2024」の入賞・応募作品の展示もあった。
■写真左:児童・生徒2300人が参加した千葉県愛鳥週間ポスターコンクール上位作品(アビスタ2階)
■写真右:「全日本鳥フォトコンテストin JBF2024」の900点を超える応募作品(アビスタ2階)
■写真上:「全日本鳥フォトコンテストin JBF2024」生態・行動部門グランプリ(文部科学大臣賞 広島県、福田哲彦さんの「水鏡」(左)、同環境部門グランプリ(環境大臣賞) 北海道、今堀魁人さんの「旅の途中」=JBFホームページから
手賀沼公園から湖畔の遊歩道で「ふなとり線」(県道船橋―我孫子線)を渡り、主会場の手賀沼親水広場・水の館を訪れた。野鳥観察の望遠鏡やカメラ機材の光学系メーカー15社のテントが並んでいる。近くの岸辺では湖畔バードウオッチングも開かれていた。
我孫子市の鳥から名づけられた「オオバン広場」に北海道羅臼町、東京都三宅村、静岡県下田市などの市町村、野鳥保護のNPOをはじめ、台湾、モンゴルからの出展で80を超すテント村ができた。
■写真上:手賀沼親水広場に並んだ光学系企業15社のテント(上)、オオバン広場の大看板
「鳥」テーマのにぎやかな出展ブースだけでなく、各会場で鳥学講座や環境学会、各種講演会が開かれた。「観て、聴く」イベントだ。
■写真上:鳥の博物館友の会デジカメ同好会の「野鳥写真展2024 一期一会の一コマ」(水の館)
■写真上:「我孫子野鳥を守る会」の鳥のおもちゃ工作コーナー(オオバン広場)
「鳥に関わる芸術的、文化的な魅力に気づき、楽しんでいただきながらテーマに掲げている『鳥との共存』、そのために必要な自然環境について考える機会を持っていただければと思う」
そう期待するJBF実行委員長の小川博・山階鳥類研究所所長のあいさつがパンフレットに載っていた。
(文・写真 佐々木和彦)