我孫子の名所でロケ
大学生ら自作自演の映画
――創立100周年を迎えた我孫子市の川村学園女子大学で10月19、20両日、学園祭「第35回鶴雅祭~100花繚乱」が開かれた。にぎやかなキャンパスにある14号館2階大教室で、我孫子を舞台に地元大学生ら自作自演の映画「それでも、夢を。」が上映された。
■写真上:我孫子舞台の映画「それでも、夢を。」の上映会=10月19日、川村学園女子大学(左) 映画製作プロジェクトのポスター(右)
監督の今井桜子さん(川村学園大学4年)、主演の本田琉一郎さん(中央学院大学1年)らスタッフが登壇して舞台あいさつした。我孫子生まれ、我孫子育ちというスタッフの一人、佐藤ゆうりさん(同3年)の「作品を通して少しでも我孫子の魅力が伝わればいいですね」が印象に残った。
■写真上:上映会場で舞台あいさつする今井桜子監督(左)や出演者、スタッフ(10月19日、川村学園女子大学)
川村学園女子大学や中央学院大学、中央学院高校を始め、我孫子出身の大学生、高校生ら40人のチーム「Unitry」(ユナイトリー)が製作した。名づけ親でもある佐藤さんによると、団結や協力を意味する「united」(ユナイテッド)と試みる、努力するの「try」(トライ)をかけた造語だそうだ。
就活面談シートを出せず、進路に悩む中央学院大学3年中川志信(本田さん)、脚本家を夢見る中央学院高校2年天北望夢(金潤柱さん=中央学院高校3年)、中川の憧れの先輩で川村学園女子大学4年加沼天音(重野羽美さん=川村学院女子大学3年)が登場人物。
クランクインは8月17日、同市布佐のファミリーレストラン「ステラ」跡地。100以上の映画、ドラマにロケ地を提供しているNPO法人「手賀沼フィルムコミッション」が世話した。
■写真上:ファミリーレストラン「ステラ」跡地でクランクイン=8月17日、我孫子市布佐
高校でアシスタントティーチャーをする天音の紹介で知り合った望夢と志信がある日、「ステラ」で偶然出会うシーンの撮影だ。見守っていた同コミッションの甲斐俊光専務理事は「地元の学生たちが地元で映画撮ろうなんて初めてだ。応援したい」という。
■写真上:撮ったばかりの映像を確認する今井監督(右)ら撮影スタッフ=8月17日、「ステラ」跡地
この出会いで志信が望夢をドライブに誘う。二人は五本松公園、手賀沼公園、手賀沼親水広場、志賀直哉邸跡の地元名所を巡りながら語り合う。
■写真上:主人公の大学生と高校生が出会うシーンの台本を手に撮影を見守るスタッフ(左)=8月30日、川村学園女子大学
夕日を受けた手賀沼湖畔のベンチで語り合う場面で二人の心の奥がのぞく。天音から教員なることを勧められて大学入ったが、現実に何になりたいのか思い悩む志信、夢を追うことで勉強や人間関係から逃避していた望夢……。似た者同士とわかって心を通わせる。
■写真上:メーンロケ地となった手賀沼湖畔での撮影(左)、夕方まで繰り返し続けられた=9月1日、Unitry提供
「夢から覚めた大人になった」「現実と向き合ってしまった」「それでも二度と夢を見られないわけではない」。志信は教員を目指し、望夢は大学に進学して新たな夢を探す決心をする。
今井監督は「人のつながりが夢を追う支えとなり、困難を乗り越える力を与えてくれると考えている。この映画で夢に挑戦する勇気、現実を乗り越える力が届くことを願っている」という。
■写真上:映画製作を報告した星野順一郎・我孫子市長(右から3人目)の激励を受ける製作スタッフ=8月9日、我孫子市役所
「Unitry」の代表でプロデューサー橋本匠さん(東京大学4年)は「今井さんらと話しているうち、何気なく出た『映画を作って我孫子を盛り上げよう』という話が二つの大学や行政、地域住民の皆さんの協力で現実になった」と振り返る。
そして「我孫子で人々の地域交流が続くよう、住民だけでなく関りある大学生や大人が参加できるよう願う。それが子どもたちの学び、成長につながると信じている。我孫子のため、映画だけでなく、これからも活動したい」と強調した。
(文・写真 佐々木和彦)