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1月

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上杉健治絵画展

開 催 2024年1月4日(木)~同28日(日)
場 所 流山市利根運河交流館 流山市西深井836
☎04-7153-8555
時 間 9時~17時
休 館 毎週月、火曜日(祝日の場合は翌日)
主 催 流山市利根運河交流館
入 場 無料


線で表すふたり展 其ノ三

開 催 2024年1月13日(土)~同16日(火)
場 所 パレット柏・柏市民ギャラリー
柏市柏1-7-1-301号 (DayOneタワー3階)
時 間 9時~18時(初日は12時から、最終日16時まで)
主 催 麗翆、Chiy
入 場 無料


長縄えい子 彩遊一周忌展 ~かしわの街の絵描きの想い~   

開 催 2024年1月13日(土)~同21日(日)
場 所 花井山大洞院ギャラリー     柏市花野井1757     04-7132-5868
時 間 10時~16時
主 催 竹島いわお
入 場 無料

油絵、水彩、水墨……
三十数年、利根運河を描く

――利根川から江戸川にそそぐ利根運河を油絵や水彩、水墨、写真で描いた作品展が1月4日から流山市利根運河交流館で開かれている。地元作家の上杉健治さん(77)が流山に転居後の三十数年、様々な手法で利根運河を捉えた30点を集めた。

 

 

写真上:油絵、水墨画、写真などの作品を説明する上杉さん

 

 

 

明治時代に完成した利根運河は柏、流山、野田を通る8.5㌔。散歩で見つけたという上杉さんは「利根川から江戸川を抜けて海につながるなんて魅力がある。それに川の蛇行や適度な高低の構図もいい。自然も豊富だ」と惚れ込んだ。

 

 

写真上:冬の利根運河(左)、秋の利根運河

 

 

 

始めの頃は草花の写真を撮るサークルに入って、運河の四季の花を撮りに来ていた。そのうち自然と絵筆も振るうようになった。

 

 

展示作品のほとんどに題名がない。それもそのはずで、全て利根運河がモチーフだからだ。ただ、「第54回国際公募亜細亜現代美術展2018」(亜細亜美術協会主催)で入選した油絵には「家路」と名づけられている。真っ赤な夕陽を受けた運河橋を自転車で渡っている様子が描かれている作品だ。

 

 

写真上:第54回国際公募亜細亜現代美術展2018入選作品「家路」

 

 

もう一つは「アートを身近に感じる芸術祭」をスローガンに昨年5月、大阪・天王寺の「あべのハルカス」で開かれた「第28回オアシス2023」(オアシス実行委員会主催、外務省、文化庁など後援)に出品した油絵を「利根運河」としている。

 

 

写真上:「第28回オアシス2023」出品の「利根運河」

 

 

 

オアシス展には国内を始め、スペイン、フランスなどから210点を超える作品が集まった。上杉さんの「利根運河」に主催者から「作家が独自の表現を心得ている、と作品は伝えている。作風とテーマがマッチしており、観る者は郷愁をかきたてられることだろう」とのコメントが寄せられた。全作品はオンラインミュージアム(https://oasis-online.jp)で公開中だ。

 

 

2022(令和4)年3月に発行された15世紀からの名画と現代美術家の作品を収めた「今昔日本絵画図鑑」(麗人社)に長い茎が付いた油絵「家庭菜園の玉葱」が掲載され、ともに上杉さんの励みになっている。

 

 

写真上:「今昔日本絵画図鑑」に収められた「家庭菜園の玉葱」

 

 

 

会場にはお気に入りの作品をポストカードにしたものも数多く展示され、来訪者に記念として1枚ずつ贈っている。

 

 

前橋市出身の上杉さんは医療系専門学校で学び、検査技師となった。血液検査など今は機器による自動分析だが、試験管を振ったり、顕微鏡をのぞいたりして検査する時代からの技師だ。

 

 

神奈川県内の病院に勤めていた30歳過ぎの頃、週末を楽しむ趣味を持ちたいと思っていた。盆地の高台にある病院から眺める市街地や山並みがとても綺麗だった。そういえば、中学生の時、図工の時間に水彩で風景画を描いて先生に褒められたこともある。

 

 

写真上:現地で写生して仕上げた水彩画

 

 

 

そんな想い出もあってか、絵を始めようと思い、画材店から油絵セットを購入した。誰に習うでもなく、自己流で相模湾の海辺や地元の景色をモチーフにした。

 

 

丹沢山地の山を描いた「大山」、街並みを背景に庭にあった桜2本の「官舎の桜」の2作品を周囲の薦めもあって出品した秦野美術展で2点とも入選した。

 

 

芽吹きが始まった山を緑、黄、赤を混ぜ、筆を立てて使ったのがよかった? ピンクのほんわりとした桜と、きりっとした官舎の柱のコントラストがよかった? いろいろ自己分析した結果、絵画教室に通って絵を習うことにした。

 

 

仲間のグループ展などに参加しているうち、亜細亜美術協会関係者らと知り合い、活動の輪が広がった。定年後は創作活動も本格化。今年の正月休み、近所に住む高校1年生の孫娘が風景画を描きたいといって、絵を習いに来た。今後の楽しみの一つだ。

 

 

写真上:懐かしさも醸し出す水墨画の利根運河

 

 

 

上杉さんは「空間芸術というか、絵を飾っている部屋に安心感があって、和やかな雰囲気になる。絵に題名はないけど気持ちがいい。AIの時代といえども人間の感性と、心のゆとりが感じられるものを描いていきたい」という。

 

 

最近、作品の下絵になる張り絵のエスキース作りを始めた。これまでは具象的な作風だが、エスキースはいろんな形、色の組み合わせで抽象的というか、シュールというか。新たな作品の模索が始まったようだ。

 

 

写真上:作品の素案となるエスキースの張り絵

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真上:運河の彼方に沈まんとする夕陽が水面に反射する

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

強く、繊細な「線」の競演
書家、デザイナーがコラボ

 

――書家とグラフィックデザイナーがコラボした作品展「線で表すふたり展―其ノ三」が1月13日から柏市のパレット柏・柏市民ギャラリーで開かれた。力強いタッチの書、直線や曲がった線による繊細な模様アートが競演した。

写真:落ち着いた雰囲気の会場

 

 

 

主催者は柏市在住の書家麗翆さん、柏市出身で都内在住のグラフィックデザイナーChiyさん親子。

 

 

写真上:作品を囲んだ麗翆さん(左)とChiyさん

 

 

 

麗翆さんは父親も書家で書道教室を開く家に生まれた。Chiyさんは大学でデザインを学び、切り絵や直線、曲線の組み合わせで模様を描く模様アートに取り組む。

 

 

2018(平成30)年11月、東京・原宿でChiyさんが切り絵と仲間の陶芸、イラストのグループ展を開いた。会場を訪れた麗翆さんは「この子なりにアウトプットできることに感銘した。作家は制作だけでなく、発表する場も大事。作品を観てもらうことで刺激も受ける」と思ったという。

 

 

写真上:書と模様アートが並んで飾られたコーナー

 

 

 

作品展開催を考えるようになったある日、たまたま訪れたパレット柏・柏市民ギャラリーで翌2019年9月に空きがあることを知った。Chiyさんに「ふたり展」を持ちかけたところ「中々じゃない」と前向きだった。

 

写真:瓶、グラスを使ったChiyさんの作品に麗翆さんが花を添えた

 

 

 

 

二人の手元にはたまった作品がある。それを持ち寄って実現した初回は思った以上に観客が入り、手応えもあった。コロナ禍で2020、2021両年度は中止とし、昨年度に続く「其ノ三」の今回、二人合わせて50点を出した。

 

 

無になって筆を握るという麗翆さん。7㌢四方の額に入れた「無」を会場の4カ所に忍び込ませた。「凛とした活き活きとした線を第一にしたい」という気持ちを表すように「凛」も複数あった。

 

 

写真上:麗翆さんが大事にする「凛」(左)、7㌢四方の額に入った小さな書「無」

 

 

 

30代の時のものという中国・儒学者の詩を54㌢×235㌢の画仙紙に描いた作品を示し「自分でも若さを感じる線。あの頃は書展に出すため、締め切りに追われるように描いていた。心に余裕がなかった」と振り返った。かつて無監査会員だった産経国際書展に出品していた頃だ。

 

 

写真上:麓翆さんの書2点

 

 

 

Chiyさんの作品はグループ展を開いた2018年までに描いたペン画や切り絵だという。あれから結婚し、今年二つになる娘がいる。子育てしながらもインプットする時間があり、心境の変化や魔法使いをテーマにした漫画をヒントに新たなテーマにつながる世界観も生まれた。

 

 

写真上:「子」と題した書(上)と切り絵「回想」

 

 

 

それまで一点ものが多かったが、正方形や楕円、三角に星形など様々な形を組み合わせた小品10点一組の新作「変化する中での記録」3シリーズを制作し、出品した。

 

 

写真上:「変化する中での記録」シリーズの1点

 

 

 

「ペン画ではあるけど、特定のジャンルに収められない。それも個性かなって思う。描きたいものは頭の中にいっぱいあるので、増やしていきたい」

 

 

会場の中央に「ふたり展スクリーン」と名づけた作品がある。縦3・5㍍、横2・28㍍の木綿布の右下に書、左上に後ろからプロジェクターで投影した模様アートが浮かぶ。二人のコラボ作品で「互いの作品を食い合わないよう、いい具合に半分半分を考えて思いついた」(Chiyさん)という。

 

 

写真上:天竺木綿に書と投影した模様アートの「ふたり展スクリーン」

 

 

 

麗翆さんは父親の教えもあって1歳11カ月で筆を持って以来、一時期、離れたこともあるが、ずっと書道を続けている。「書のすべてを父から学んだ。最後の弟子」という。

 

 

写真上:書とともにアクリル画材を使った絵のような作品(中央)もあった

 

 

 

孫となるChiyさんも習いに通ったが、小、中学で吹奏楽を続け、高校時代は名門・柏市立柏高校でも情熱を燃やした。「高校でやりすぎちゃって、燃え尽きた。元々、筆というか、ペンというか、絵も好きだった」とデザイン学科がある大学に進学し、今につながったようだ。

 

 

写真上:「ブルーグレーとシルバー」(上)、「青と黒の気持ち」

 

 

 

手法は違っても「線」にこだわる作風は互いに認め合った共通点。二人とも「其ノ四」「其ノ五」と続けていくつもりだ。

 

 

 

写真上:「コントラバスの左ぶどうと共に」(左)、「金の花」

 

 

 

 

写真上:「喫茶去」の掛軸

 

 

 

 

写真上:「ふたり展」のポスター・案内はがき

 

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

故長縄えい子一周忌展
大洞院で法要、偲ぶ会

 

――柏市の画家、故長縄えい子さん(当時85)が昨年1月6日夜の交通事故で亡くなって1年余。同市の花井山大洞院で1月13日から「長縄えい子 彩遊一周忌展~かしわの街の絵描きの想い~」が開かれた。最終日の同21日、大洞院で追善供養法要と偲ぶ会があり、ゆかりの人々が参列した。

 

 

 

長縄さんの創作活動を長年にわたって支えた「たけしま出版」の竹島いわおさん(79)が主催。大洞院ギャラリーに竹島さんが所蔵する油絵や水彩を中心に絵本などの書籍、写真、スケッチブックなどが展示された。

 

 

写真上:油絵、水彩、ポスターなど多彩な作品が並んだ会場

 

 

 

「一周忌展に当たって」と題したあいさつ文で、竹島さんは「この1年は故人を深く、いとおしく思う、心豊かな年でもあった」と振り返った。

 

 

作品は昨年7月に流山市で開いた追悼展で、展示しきれなかったものを選んだという。その中で唯一、個人所有の「座敷童子」(ざしきわらし)という作品がある。

 

 

写真上:東北地方の民話に登場する「座敷童子」(ざしきわらし)をスマホで撮る入場者

 

 

 

 

「座敷童子」は岩手県中心の北東北の民家に棲みつく子どもの妖怪で、観た者の家には富や幸福をもたらすとの言い伝えがある。

 

 

この作品に「座敷童子がいた?」という長縄さんの説明文がある。かつての展示会で、小学5年の女児を連れて作品を観た知人が「座敷童子、この子に似ているね」と言った直後、女児が持っていたガラスコップが刃物で切ったように真っ二つに割れた、というのだ。

 

 

長縄さんは「私は座敷童子を見たわけではないが、その時、確かに座敷童子は絵から抜け出てそこにいたのだ」と解説している。

 

写真:一周忌展の葉書

 

 

 

 

お祭りで踊るふくよかな女性ら独特のタッチの個性的な油絵が多かった。ファッションイラストレーター長沢節(1917―1999)の私塾ともいうべき「セツ・モードセミナー」で学んだ直後や「竹取物語」の朗読用に描いたという紙芝居のような水彩画も目を引いた。

 

 

写真上:セツ・モードセミナー卒業後に描いた水彩(左)、「竹取物語」の朗読用に水彩で描かれた月に帰るかぐや姫

 

 

 

描きかけのスケッチブック、着物姿ですまし顔やマイクを握ってシャンソンをしっとり歌っている写真などもあって、彼女の日常が偲ばれた。

 

 

写真上:偲ぶ会参加者の話を聴く竹島いわおさん(左)、シャンソンを歌うありし日の長縄さん

 

 

 

大洞院の墓地東側に長さ37㍍の壁画がある。子どもたちが観音様のような女性や鬼と遊ぶ姿が描かれている。長縄さんが2004(平成16)年から翌年にかけて制作した「遊戯(ゆげ)」という作品だ。

 

 

原画のベニヤ板1枚ほどの絵や2019(令和元)年にお釈迦様の誕生から入滅(死)までを8枚組にした「釈迦八相図」が奉納されている本堂で法要が営まれた。

 

 

参列者は「利根川の放水路を歩く」などの著作で知られる歴史研究家青木更吉さん、画家松谷登さん、版画家大野隆司さん、写真家で醤油アートの松本多恵子さんら地元の気の置けない仲間たちだ。

 

 

写真上:偲ぶ会で献杯するゆかりの人々

 

 

 

読経が流れる中、祭壇でほほ笑む長縄さんの遺影に焼香した。法要の終わりに櫻井大文住職は「鬼と遊ぶ子どもの壁画を観た外国人は不思議に思うようだ。なんで悪魔(?)の鬼がってね。でも、鬼の中にも心優しい鬼もいることを長縄先生が描いてくれた、と説明している」と話した。

 

 

竹島さんは「ワイワイやっていると、本人がひょっこり現れてくれるような気がする」と語り、参列者を別室の偲ぶ会の会場に誘った。

 

 

写真上:長縄さんが手掛けた絵本などの書籍(左)、遺されたスケッチブック

 

 

 

「亡くなった頃は仏や神を描いて尽くして来たのになんでこん目にと……と思っていた。色々わかったことがあって、事故の瞬間に彼女は脳死し、痛みを感じる間もなく亡くなっている。病気などいろんな最期がある中、神仏の導きというか、見事というか、彼女らしいと思うようになった」

 

 

偲ぶ会の冒頭、竹島さんは今の気持ちを披露し、参列者が代わるがわるマイクを握って想い出話などを話した。

 

 

写真上:追善供養の遺影の前で焼香する参列者

 

 

 

事故現場は自宅近くの大手スーパー前にある市道の横断歩道。信号機は設置されていなかった。昨年12月30日付の朝日新聞ちば版は「長縄さんの悲劇 動かした信号機」の見出しで、近くの信号機が移設されることを報道した。

 

 

記事によると、事故の3年前にも死亡事故が発生しており、地元住民から信号機の要望もあった。国の指針で隣接する信号機との距離から新設は難しく、柏警察署が移設を検討していたという。

 

 

 

写真上:展示作品群

 

 

 

 

写真上:花井山大洞院の月替わり御朱印

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

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