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6月

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砂川七郎コレクション第29回芹沢銈介作品展 「花鳥風月—心を染める ものがたり—」

開 催 2023年3月22日(水)~同7月2日(日)
場 所 柏市郷土資料展示室
    柏市役所沼南庁舎2階
    月曜休館
(柏市大島田48-1☎04-7191-7403)
主 催 柏市教育委員会
入場料 無料


「第27回風の会絵画展」

開 催 2023年6月1日(木)~同4日(日)
場 所 パレット柏・市民ギャラリー     柏市柏1-7-1-301号 (Day Oneタワー3階)
主 催 風の会
入場料 無料

住宅街の「あじさい通り」   

取材日 2023年6月9日(金)
場 所 流山市前ヶ崎の住宅街

家族で「矢切ねぎ」を植えて育てよう

日 時 2023年6月17日(土):苗植え
9月:土寄せ作業、 24年1月:収穫

場 所 坂下ほんでんこどもの遊び場(松戸市下矢切606他)
参加者 松戸市在住の小学生以下と保護者
費 用 1人初回のみ200円
主 催 松戸市青少年相談員矢切支部・松戸市

柳宗悦が紡いだ縁
故砂川氏寄贈の芹沢作品展

――型絵染の人間国宝、芹沢銈介(1895―1984)の作品展が柏市郷土資料展示室で開かれている。同市が譲り受けた「砂川七郎コレクション」の第29回展「花鳥風月―心を染めるものがたり―」。

 

 

写真上:芹沢銈介作品展のポスター(左)、型絵染技法の紹介コーナー

 

 

 

芹沢が影響を受けた「民芸運動の父」とされる柳宗悦(1889―1961)との出会い、芹沢が装丁した柳の雑誌「工藝」の作品に感銘して収集を始めた故砂川氏。芹沢作品展は柳が紡いだ縁といえそうだ。

 

 

「砂川コレクション」は600を超えるといわれている。主催の柏市教育委員会はタイトルの「花鳥風月」にちなんだ美しい自然がテーマの図案や文字などの作品41点を選んだ。

 

 

写真上:ガラス越しに「晴雨二曲屏風」(左)などが並んだ

 

 

 

のれん、着物、帯地、屏風、カレンダー、うちわ、字模様……。名もなき職人手作りの生活に根づいた「民衆工芸品」(民芸)にこそ「美」があるという柳の思想を偲ばせる。

 

 

写真上:「草の字のれん」(左)、「風の字壁掛」

 

 

 

「華の字」の壁掛はいろんなところに貸し出す人気作品だけにダメージもある。今回はしわを伸ばす修復後の初展示となった。「梅に鴬文」は梅の枝先にウグイスが止まっているのれん。一見、シンプルだが、藍の濃淡で染め分けられていて、芹沢の繊細さがわかる作品だ。

 

 

写真上:「華の字」(左)、「梅に鴬文のれん」

 

 

 

着物の「小花入爪文緑地縮緬着物」はちりめんに黄緑色の小紋。よく見ると一つずつ白く染め抜かれた爪模様の中に、カラフルな植物、鳥、魚、三重の塔などがデザインされている。気づいた入場者にとって新しい芹沢作品の発見につながっている。

 

 

写真上:「小花入爪文緑地縮緬着物」(左)、「雪持笹に松梅文鼠地縮緬着物」

 

 

 

作品保護のため、会場は暗めに抑えられており、灯りがスポットライトのように作品を照らす。芹沢が丹精を込めた作品が静かに見学者を待っているかのようだ。

 

 

写真上:照明を抑えた会場で静かに鑑賞する入場者

 

 

 

作品展を担当する柏市教育委員会文化課の髙橋彩友季さんは、かつて作品の扱い方などを習いに静岡市立芹沢銈介美術館で研修した。「作品は鮮やかな色使いですが、決して派手ではない。落ち着いていて、独特の温かみがあり、手に取りたくなるような作風が受けているようです」

 

 

砂川氏は1913(大正2)年、柏市(旧田中村)出身。学生時代、柳が1931(昭和6)年創刊の「工藝」で芹沢作品に出合ってとりこになり、コレクションを生涯続けた。

 

 

今回の作品展に芹沢夫妻とともに撮った写真が紹介されている。そんな交流もあって収集が進み、1981(昭和56)年5月、柏市役所から国道16号を挟んだ向かいに「砂川美術工芸館」を開館し、所蔵品を一般公開した。

 

 

芹沢の生まれ故郷、静岡市でもこの年、市立美術館が開館。砂川館は小さいながらも芹沢ファンらの関心を集めた。14年後の1995(平成7)年、砂川氏が体調を崩し、惜しまれながらも閉館。「作品の散逸を防ぎ、柏の文化振興のために」と柏市へ寄贈し、その年に亡くなった。

 

 

「砂川コレクション」を引き継いだ柏市は工芸館を市立施設化し、翌1996(平成8)年2月に再開。閉館する2007(平成19)年6月までに32回の企画展を開催し、延べ4万5447人が入場した。

 

 

合併で柏市の沼南庁舎となった旧沼南町役場がリニューアルされ、2008(平成20)年8月に郷土資料展示室が誕生。「砂川コレクション」の企画展がここで復活する。

 

 

芹沢は柳とともに1939(昭和14)年、民芸調査で沖縄を訪れ、染物「紅型」(びんがた)技法を学んだ。独特の大胆な色彩、美しさ、華やかさがあり、「型絵染」の基礎となったとされる。復活初回が「沖縄に魅せられて」だった。

 

 

写真上:「花蝶文地白縮緬帯地」(作品個々の写真は柏市教育委員会提供)

 

 

 

以来、「祈る人」(第8回展)、「芹沢銈介の風」(第17回)、「クール&ラブリー」(第25回)、「セリザワブルー」(第28回展)と2020(令和2)年をのぞき、毎年1~3回、独自のタイトルで開催を続けている。

 

 

さて、次回はどんな「セリザワワールド」を見せてくれるのか。楽しみに待つことにしよう。

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

こだわり作品並ぶ
旧柏美展の入賞グループ

 

――かつて開催されていた柏市美術展の入賞者でつくる「風の会」(松谷登代表、会員12人)の絵画展が6月1日から柏市の「パレット柏・市民ギャラリー」で開かれた。会場には風景、人物、動物など独自のモチーフにこだわったB5判の小品から100号の大作が並んだ。

写真上:「ミャンマー 2012 Ⅰ」(丹羽千賀子)の大作などが並んだ会場(左)、「風の会絵画展」のポスター

 

 

 

稲田マリさんはマンボウ、クラゲを描いた5点を出品した。「夏に作品展を開くので、魚を思いついた。形が面白いからキャラクター的なマンボウになった。最初は小さい絵だったけど、だんだん大きくなって」。雲の間を泳いだり、クラゲとのツーショットだったりの作品になった。

 

写真上:「雲間を行く」(稲田マリ)

 

 

 

 

龍に乗った天使(?)が空を飛ぶようなファンタジーがあれば、写真と見まがうような精密なタッチのリアルな風景画……。バラエティーに富むが、佐藤香里さんは「私のは半分具象、半分抽象といった感じかな」と笑う。

 

 

 

いろんな模様の中で躍動する女性に「女(ひと)」のタイトルをつけ、50号のアクリル画2点を出品した。元々油絵を描いていたが「アクリルのほうが早く乾くし、油絵の臭いは家族は迷惑をかけるから」という。

 

 

 

写真:「女(ひと)―45」(佐藤香里)

 

 

 

 

 

 

松谷代表はスペインへの留学経験もあり、渡航先の街並み、自然の心象画など描いている。「赤い台地、真っ青な空、煉瓦の村、オリーブ色の緑がいいですね」という。国内ではスペインに似た雰囲気の長野や福島・会津の山里をテーマにする。

 

 

今回は風景に加え、30年ほど前、ハイキングに出かけた際、木々の間を歩く妻を写した写真のイメージから「春」という作品を出した。

 

 

写真上:「春」(松谷登)

 

 

 

柏市美術展(摘水軒記念文化振興財団主催)は柏市内だけでなく、近郊を含めた16歳以上が対象の公募展。上位入賞者には10万円から2万円の副賞が付く人気の美術展だった。

 

 

写真上:「ダイヤモンドダスト」(江田澄子)を覗き込む入場者

 

 

 

2015(平成27)年11月、JR柏駅隣接の高島屋ステーションモール8階「柏市民ギャラリー」(当時)での第30回展を最後に終了した。同展には約100人から約140点の応募があったという。

 

 

写真上:「君に会えた日」(きつない えりこ)(左)、「楽しい街」(土井弥生)(右)

 

 

 

「風の会」の作品展は今回で27回を数える。松谷代表は「特に指導者がいるわけでもない。自由に描いた絵を年に1回、持ち寄って開く絵画展を続けていきたい」という。

 

 

写真上:「花の咲く丘」(西隅哲夫)(左)、「豊洲ぐるり公園から」(和倉義一)(右)

 

 

 

 

 

写真上:「窓をあけて」(今井侑子)(左)、「『未完成』を聴きながら」(萩原良一)(中)、「M市で逢った雲」(深沢由美子)(右)

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

梅雨空に映える
住宅街の「あじさい通り」

 

 

――梅雨空でジメジメ、ムシムシのうっとうしい日が続く。台風2号、3号が前線を刺激し、大雨をもたらした。ぐずついた天気の中、関東甲信は6月8日、昨年より2日、平年より1日遅い梅雨入りとなった。

 

 

 

この時期、ぐっと存在感が増すのは紫陽花。ネットなどで話題になっていた流山市前ヶ崎の住宅街にある「あじさい通り」を梅雨入りした翌9日午後の雨上がりに訪ねた。

 

 

マイカーで国道6号を上り、流山、松戸両市境の名都借交差点を右折して流山運転免許センター方面に進む。右手の流山市東部公民館を過ぎた先の左側に閑静な一戸建ての住宅街がある。表通りから住宅街に入って二本目の通りに紫陽花が咲く通りがあった。

 

 

写真上:植え込みの中に立つ看板(左)をカラフルな花が囲む

 

 

 

東部公民館側にある「前ヶ崎2号公園」付近から始まる。左側の斜面などにふんわり手まりのようだったり、伸びた茎が真ん中の小さな花を囲むように花をつけたり。約250㍍にわたって赤、紫、ピンク、白の色とりどりの株が群生していた。

 

 

地元住民有志が1991(平成3)年4月から地主の協力を得て、竹林の傾斜地を開墾し、紫陽花を植えたのだという。「あじさい通り」と名づけ、地元の県立特別支援学校流山高等学園の生徒らとともに手入れしてきた。

 

 

普段は渡る風の音、野鳥のさえずりが響く静かな住宅地。季節になると散歩がてらに見学に来る市民やゆっくり走る車中から眺めるグループも少なくない。

 

 

元々、花好きな住民が多いのだろう、きれいなガーデニングをする家も目立つ。知る人ぞ知る「隠れ名所」だが、観光地のように駐車場、トイレ、売店などはない。見学の際はくれぐれも住民の迷惑にならないよう気をつけよう。

 

 

写真上梅雨空に「あじさい通り」のカラフルな紫陽花が彩を添えていた

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

「矢切ねぎ」育てよう
家族15組48人が挑戦

 

――江戸時代から引き継がれて歌謡曲にもなった「矢切の渡し」があり、伊藤左千夫の小説「野菊の墓」の舞台になった松戸市矢切。地元ブランドの「矢切ねぎ」の産地で、今年も家族連れによる作付けから収穫までの体験イベントが6月17日始まった。

写真上:遠くに東京スカイツリーを望む畑が会場

 

 

 

千葉県は全国トップ級のねぎ産地。2021(令和3)年産は全国44万400㌧のうち、12%の5万2300㌧で、埼玉県の5万2400㌧に次いで2位だった。

 

 

写真上:白身が長くて太い「矢切ねぎ」

 

 

 

この中で松戸は県内有数の産地であり、矢切は江戸川と坂川が運んだ砂と粘土の堆積で肥よくな土地でねぎ栽培に適している。明治初期に東京府下砂村(現東京都江東区)からもらい受けた「千住ねぎ」の種をまいて栽培が始まったのが「矢切ねぎ」の起源とされている。

 

 

一般の長ねぎと比べて、白身が太くて長く、甘みも強い。「煮てよし、焼いてよし」といわれ、1本150円は下らない高級品だ。全国品評会で農林水産大臣賞を3度も受賞し、2007(平成19)年には地域ブランド(地域団体商標登録)となり、現在、地元農家50軒が年に800㌧を生産する貴重な野菜でもある。

 

 

家族連れに名産「矢切ねぎ」の栽培を経験してもらう試みは2015(平成27)年度からスタートした。今回は15組、48人が参加した。

 

 

コロナ禍で一時中断したが、年々、人気が高まったこともあって10組定員を今年度から増やしたが、なんと77組の応募があったという。

 

 

体験農園は「矢切ねぎ」が一面に広がる一角の児童公園にある。長さ20㍍、幅6㍍の畑を作り、畝の脇に深さ15㌢、幅20㌢に掘った6本の溝が用意された。

 

 

写真上:種から20㌢ほどに伸びた苗が用意された(左)、畝の回りに陣取り、苗の配給を待つ参加者

 

 

 

遥か彼方に東京スカイツリーのとんがりが見える。植え付けピークとあって、あちらこちらの畑で作業する農家の姿も目立った。

 

 

初日の6月17日は梅雨の合間に青空が広がった。苗植え作業が手始めで、2歳から小学生の子どもの手を引いた家族連れ、父と娘、祖母と孫などが集まった。

 

 

写真上:農家のお手本を見ながら植えるちびっ子(左)、楽しそうに並んで作業をする家族連れ

 

 

 

指導役は松戸市青少年相談員矢切支部員で農家の市川嘉一さんで、20㌢に伸びた3本1セットの苗を溝の真ん中に植えるよう説明した。注意点として大人だと握りこぶし1個分、子どもだと2個分の間隔に植え、土をかけるよう呼び掛けた。

 

 

写真上:植えた苗の土を踏み固める作業

 

 

 

盛夏を思わせる炎天の中、参加者は思い思いの場所で作業を始めた。手早く植え込み、畝の土をかけ、苗の両脇を歩きながら足で土を踏み固めた。最後に紙コップに入れた肥料をまき、約1時間で作業終了となった。

 

 

写真上:作業の仕上げに肥料をまく参加者

 

 

 

地元に住む会社員坂東真之さんは妻の万理子さん、2歳の長女真由子ちゃんと一家3人で参加した。「あらかじめ畝や溝を掘って準備してくれたので、作業は思ったより簡単だった。『矢切ねぎ』の名前は聞いたことはあるが、食べたことはない。収穫が楽しみ」

 

 

 

深く帽子をかぶり、真由子ちゃんの世話をしながら作業をした万理子さんは「暑くて大変だったけど、楽しかった」と汗をぬぐった。

 

写真:「矢切ねぎ」一本の炭火直焼きが人気だった(「全国ねぎサミット 2019 in まつど」)

 

 

 

2回目は9月の見込みだ。「矢切ねぎ」の特徴である長く、太い白身は、成長した部分に土をかけて遮光することで可能になるという。次回はこの「土寄せ」作業が中心になる。

 

 

最終の3回目は年明けの1月。冬の寒さで土中の水分が凍って硬くなり、それに「圧力」を感じたねぎの生存本能で糖分をため込むので、甘みが増すのだという。

 

 

坂東さん夫婦は時々の水やりなどで、様子を見に来たいという。3回目の収穫を取材し、食味なども併せて記すことにしたい。

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)