「写心」の交差・融合
3回目の合同写真展
――同じ指導者、同じ年代、そして同じ写真心……。柏市拠点の市民写真グループ「フォト・ふじごころ」=根岸勝壽代表(81)、会員10人=と「フォト2000」=塩澤武会長(81)、同16人=がコラボ作品展を企画して3年目。今年も5月12日から柏市の「パレット柏・市民ギャラリー」で開いた。
■写真上:初日から大勢の入場者でにぎわった会場
「フォト・ふじごころ フォト2000 合同写真展 Vol:3」。会場は三つのコーナーに分かれていた。まずはグループ共通の「柏フォトさんぽ」と名づけた地元のお気に入りの撮影地コーナー。
■写真:写真展ポスター
あけぼの山農業公園のコスモス畑、旧吉田家住宅歴史公園の秋景色、県立柏の葉公園でとらえた幾何学模様の水面、朝日が昇る手賀沼など、四季の自然を描いた作品19点が並んだ。大判地図の上に作品と同じL判写真を貼って撮影場所を紹介する「柏マップ」もあった。
■写真上:撮影地を紹介する大判の地図
「自由作品」としてグループごとの作品コーナー。地元・柏や伊豆、山形、長野、山梨など旅先で出合ったり、柏市の「ふるさと交流都市」になっている福島県只見町に出かけたりして見つけた美しい風景写真計59点が出品された。
■写真上:「フォト・ふじごころ」(左)、「フォト2000」のグループ別展示コーナー
両グループはともに二十数年前、写真をテーマにした柏市生涯学習講座の受講者らが結成したグループ。講座終了後もアシスタント講師だった写真家猪又かじ子さん(72)の指導を仰ぎ、定期的な活動で腕を磨いた。
■写真上:指導者の猪又かじ子さん(左から3人目)、「フォト・ふじごころ」の根岸勝壽代表(同4人目)、「フォト2000」の塩澤武代表(同5人目)ら写真展スタッフ
2グループは2020(令和2)年にコロナ禍で作品展の中止を余儀なくされたが、それまでは同市民ギャラリーや柏市中央公民館で、それぞれ独自のスタイルで毎年のように作品展を開催してきた。
会員の高齢化が進み、ピーク時のほぼ半数以下になって、かつてほど作品が集まらなくなった。同じ猪又さんが指導者で成り立ちも、グループ構成も同世代で似ていることから団結し、2021(令和3)年から合同写真展を企画した。
指導者の猪又さんは、柏市の利根川やアトリエを構える福島県只見町で、自然をテーマにした撮影活動を続けている。「静寂の刻(とき)」シリーズの「利根河原の詩」「只見憧憬」などの写真集がある。今回の作品展では「講師作品」として利根川堤(柏市)の季節の表情をとらえた3作品を出品した。
■写真上:「寒い朝」(利根川堤=猪又かじ子)
「ふじごころ」の根岸代表は就職した化学工業会社の研究室に現像用暗室があったことからカメラに興味を持った。当時、月給の3倍近い一眼レフを購入したり、中判カメラも手にしたり。定年退職後、本格的な撮影活動。「撮影地でどう撮ろうかと考えたり、愛好家らと写真談議をしたりが好きで楽しい」
■写真上:「竹灯籠」(手賀沼・曙橋=根岸勝壽)
「2000」の塩澤会長は子どもの頃、雑誌の付録だったレンズを使わない針穴式の「ピンホールカメラ」から興味を持った。近所の知人に誘われて会員になり「いつの間にか散歩の途中で被写体を見つけるようになった。それをうまく撮れても撮れなくても探し歩くのが好きになった」という。
■写真上:「花に囲まれて」(松ケ崎城跡公園=塩澤武)
「太陽の光は平等に当たるが、動くと見える物が違ってくる。そんな時の流れ、風を感じる自然との出合いが好き」という猪又さんに触発されて、会員の多くが自然をテーマにしているようだ。
グループを指導する猪又さんは「写真について撮り方を口で言うより、自分のやっていること、撮った作品を観てもらうほうが良いかなって思う。でも、創作は人のまねではなく、自分の感じたものを撮る、写す心『写心』なんですね」と強調した。
二つのグループの「写心家」。その交差と融合が相乗効果となって新たな写真、作品が生まれるきっかけになるのかも知れない。
■写真上:「光の夕景」(柏の葉アクアテラス=山本修史)(左)、「水もよう」(県立柏の葉公園=河野雅也子)
■写真上:「朝日に向かって」(手賀沼=宮崎三郎)(左)、「春を待つ(稲株踏み)」(名戸ヶ谷ビオトープ=倉岡尊)
■写真上:「展覧会にご招待」(あけぼの山農業公園=嶋田美奈子)(左)、「晩秋の光景」(旧吉田家住宅歴史公園=堀尾幸晴)
(文・写真 佐々木和彦)