ミュージアムINFO

2月

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ふれあい塾あびこ

開 塾 2000(平成12)年9月
2001(平成13)年3月NPO化
所在地 我孫子市

目 的 社会教育・まちづくりの推進、学術・文化・芸術・スポーツ振興
公開講座 2005(平成17)年、開塾5周年から公開講座開始
記念講座 2015(平成27)年、開塾1000講座達成
最 終 2023(令和5)年3月13日の第1309回講座

連絡先 080-3008-1765(秋田桂子理事長)


「花野井ひなめぐり 2023」(第2回)

旧吉田家住宅歴史公園
期 日 1月29日(日)から3月3日(金)
所在地 柏市花野井974-1
旧吉田家住宅主屋の「ミセ」
入場料大人210円、60歳以上110円、大学生以下無料

花井山大洞院 周辺9店舗
期 日 1月28日(土)~3月12日(日)
所在地 柏市花野井1757
大洞院ギャラリー・本堂など
入場料 無料
主 催 大洞院ギャラリー運 営委員会
入場料 無料

「ふれあい塾あびこ」終幕へ
1309講座、5万人超が受講

 

――「こんにちは」「いらしゃいませ」。2月6日、手賀沼湖畔にある我孫子市生涯学習センター「アビスタ」ホールの出入り口。NPO法人「ふれあい塾あびこ」(秋田桂子理事長・塾長)の公開講座「新内節の担い手再び」のスタッフが受講者を出迎えた。

 

写真:講座で司会を務める秋田桂子理事長

 

 

 

 

 

「ふれあい塾」の講座はこの日、第1306回を迎えた。講師の新内節富士元派七代目家元・新内多賀太夫さんは、江戸時代に三味線音楽の浄瑠璃から派生した新内節の歴史を解説。我孫子が舞台の志賀直哉著「和解」の名場面を生かした創作曲などを三味線で語るような、歌うような節回しで披露した。

 

 

 

 

写真上:第1306回「新内節の担い手再び」で三味線音楽を披露する新内節富士元派七代目家元の新内多賀太夫さん(2月6日、アビスタ)

 

 

 

2000(平成12)年開塾の「ふれあい塾」は、3月の第1309回講座を最後に閉塾する。スタッフの高齢化で続けられなくなった、という。

 

 

起源はその2年前に発足した平均年齢65歳の定年退職者ら17人の「あびこ懇話会」。都内で勤めた「千葉都民」が大半だったが、土地っ子も仲間に加わった。

 

 

市民活動を目指し、月1回、市政、市民団体などのゲストを招き、話を聞いた。当時からのメンバー多田正志・前理事長は「初めは介護・福祉関係を考えていたが、すでに先行グループがいた。それなら生涯学習的なサークルにしようという話になった」という。

 

写真:音響装置を担当する多田正志・前理事長

 

 

 

 

「ふれあい塾あびこ」と改称して2000年9月11日、会員が運営する幼稚園で、塾生、園児と保護者の「三世代交流の場」として開塾。同園に我孫子にある川村学園女子大学の斎藤哲瑯(てつろう)教授(当時)を招き、開塾記念講座「生涯学習について」を開催し、同園を拠点にスタートした。

 

 

 

翌年3月、市内3番目のNPO法人となった。当初は塾生対象の講座だったが、公共施設を確保して2005(平成17)年から公開するようになり、2013(平成25)年にはすべてが公開講座となった。

 

 

写真上:前売り完売の第1307回講座「私の『くちびるに歌を』アルバム」。出演したソプラノ歌手、塚本江里子さんは我孫子市出身。ピアノは渋川ナタリさん(2月23日、アビスタ)(左)、第1261回講座「太宰治と私―取材こぼれ話」で講師の元朝日新聞記者佐藤清孝さん(2021年6月10日、アビスタ)(右)

 

 

 

月1回の会合で講座を吟味する。受講料は700~1000円なので高い講師料は難しい。秋田理事長は「少ない謝礼でも来てくれる講師、自分たちのできる範囲でどういう講座が喜ばれるか常に考えた」という。

 

 

スタッフの個人的につながりのある分野の伝手を頼った講師選びが中心になった。「近くで、安く、簡単に買える知恵のりんご」をスローガンに地元の歴史から政治・経済、美術、写真、文学、音楽、環境、自然科学、趣味をテーマにした多岐にわたる講座が実現した。

 

 

23年間の受講者は地元を始め、近隣市、都内などから5万2千人を超える。登壇した講師も300人超。小説家の故坂上弘さん、元最高裁判所長官山口繁さん、オペラ歌手佐藤康子さんら我孫子にゆかりある著名人の講演、コンサートなどの大型企画も成功させた。

 

 

写真上:受付の受講者を申込名簿に記入するスタッフ(左)、開場時間に合わせ、ホール出入り口に立って受講者を受付に案内する(右)

 

 

 

2015(平成27)年7月に開塾1000講座に達した。我孫子市と協働の「市民カレッジ『我孫子を知る』コース」も実践し、2007(平成19)年から11年間にわたり、市民約400人に毎年12講座を提供した。

 

 

開塾20周年の2020(令和2)年春、突如吹き荒れた「コロナ旋風」に巻き込まれた。3月、4月に計画した計9講座が休講を余儀なくされ、5月以降の見通しも立たない状況だった。

 

 

写真上:会場に並べた椅子の上に講座のテキストを用意する(左)、終了と同時に椅子を撤去、片付ける作業も手慣れた様子だった(右)

 

 

 

同3月7日、JR我孫子駅南口の「けやきプラザ・ふれあいホール」で予定したベートーヴェン生誕250周年記念ピアノリサイタルは400枚を超える前売りがあった。

 

 

写真上:講座の最中は最後列に陣取って待機する(左)、配布された講座テキストを開始前に読み込む受講者(右)

 

 

 

申込者への電子メール、郵送での中止連絡、1万枚の新聞折り込みによる周知、同3月7日から3日間、会場での払い戻し、返金作業などに追われた。

 

 

秋田理事長は「仕方ないことだった。講座は10月に再開したが、会場は人数制限され、受講者の不安もあって参加も減り、精神的にも財政的にも大変だった」と振り返る。

 

 

同年9月に発行した20年周年記念誌に、スタッフ全員で困難を乗り切った記録が2ページにわたって掲載されている。

 

 

写真上:各周年記念誌に全講座の内容とスタッフ、講師、受講者らの想いが詰まっている

 

 

 

現在のスタッフ21人。草創期からのメンバーも少なくない。多田・前理事長は「後継問題から一区切りつけざるを得ない。身の丈に合った活動をしてきたが、決して安くはない料金で参加してくれた方々がいたから継続できた」。

 

 

2018(平成30)年、4代目理事長になった秋田理事長は「自分にできないことがたくさんあり、皆さんに助けられ、いつも申し訳ないと思いながらやってきた。でも、いろんな講師といい講座をやれるのが一番楽しい」という。

 

 

写真上:前列中央の秋田桂子理事長を囲んだ「ふれあい塾あびこ」のスタッフ

 

 

3月6日に美術愛好家長野一隆さんの「絵画を観る喜び・内外四大美術館―その特徴と代表的収蔵品」に続き、同13日のレクチャーコンサート「トランペットと共に旅をする」が最終講座となる。

 

 

世界的なトランペット奏者杉木峯夫さん(東京芸術大名誉教授)が、やはりトランペット奏者の長男淳一朗さん、次男馨さんとトリオを組んで出演。親子の奏でる息の合った音色が講座と「ふれあい塾」のフィナーレを飾る。

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

もうすぐ「桃の節句」
今春も「花野井ひなめぐり」

――3月3日の「桃の節句」までもうすぐ。今春も東葛エリアのあちらこちらで「ひな祭り」が開かれている。2年目になる柏市花野井の「花野井ひなめぐり 2023」を訪ねた。

 

 

写真上:旧吉田家住宅に飾られた七段飾りは純和風の座敷との調和を見せた

 

 

旧吉田家住宅は江戸時代から代々続く豪農、商家、武家の顔がある名家。築後200年ともいわれる寄棟の重厚な茅葺の主屋、庭園に面した書院、屋敷への表玄関となる長屋門、新蔵などが国の重要文化財や名勝に登録されている。

 

 

 

ひな人形は主屋の「ミセ」と呼ばれる18畳の和室、15畳の茶の間で飾られていた。「ミセ」には旧吉田家の勤め人から寄贈された七段飾りが三つ展示されていた。

 

 

写真上:「花野井ひなめぐり 2023」のおひな様たちは様々な表情だ

 

 

 

渡邉健二園長によると、どれも昭和40年代のもので、足組が木材から軽量金属に代わり、収容しやすくなった頃のものだという。これを聴いた見学者の女性は「そうそう、私らの頃は確かに木だったわね」と懐かしむように補足した。

 

 

古い純和風の座敷にきらびやかなひな飾りがよく似合う。渡邉園長も「古民家の中で昔ながらの人形の雰囲気を味わって頂けたら」と話した。

 

 

隣の茶の間には、昨年から参加した茨城県の陶芸家江崎紀子さんによる陶芸のひなが飾られている。一段や三段飾り、さらに真竹の中や立ち姿のお内裏様やおひな様もいて興味深かった。

 

 

写真上:陶芸家江崎紀子さんによる陶芸のひな人形三段飾り(左)、「たちひな」(右)(旧吉田家住宅)

 

 

 

旧吉田家住宅から北西へ約500㍍離れたお寺「花井山 大洞院」も約500年前の安土桃山時代から続くとされる古刹だ。仕舞う場所がなく、手放したいという檀家が持ち寄ったおひな様を2015(平成27)年からギャラリーや本堂で飾ってきた。

 

 

写真上:お釈迦様が安置されている本堂に飾られた雛飾り(左)、段飾りから降りた三人官女(右)(大洞院)

 

 

 

昨年から旧吉田家や周辺の商店とコラボして「ひなめぐり」を始めた。A4判のチラシを作り、参加店の紹介やマップを載せている。参加店は昨年7店だったが、今年9店に増えた。

 

 

写真上:「花野井ひなめぐり 2023」マップ

 

 

 

昨年から参加している住宅街の柏ビレジにある商店街のパン店「Fort Greene Bakery」(フォート グリーン ベーカリー)は店に入って右側の壁際に飾ってあった。

 

 

写真上:店のレジ脇にも飾られたミニひな人形と「花野井ひなめぐり」のチラシ(Fort Greene Bakery)

 

 

 

店の女将、二渡理恵さんは「特にご年配の方は、娘さんがマンションに越してから飾らなくなったようで、皆さん、懐かしいっていいますよ」という。

 

 

写真上:店内にひな人形を飾った「Fort Greene Bakery」女将の二渡理恵さん

 

 

 

旧吉田家住宅や大洞院のひな飾りも引っ越したり、仕舞うところがなくなったりの縁者から集められたものだ。昨今の住宅事情から豪華な七段飾りの置き場は限られるのだろう。

 

 

我が子の健やかな成長と幸せを祈る雛飾りは、親の想いとは別に小さくなったり、飾るものから観るものに変わったりしていくのかもしれない。

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)