ミュージアムINFO

11月

     11月

博物館開館30周年・千葉県誕生150周年・松戸市制施行80周年記念
企画展「あの日のまつど―写真でふりかえる150年―

開 催 2023年9月23日(土祝)~同11月12日(日)
場 所 松戸市立博物館
    松戸市千駄堀671
    ☏047-384-8181 時 間 9時30分~17時(入館16時30分まで)
主 催 松戸市博物館
後 援 松戸市文化振興財団、松戸市観光協会、北総線沿線地域活性化協議会、千葉テレビ
協 力 新京成電鉄、流鉄
入場料 無料


ジャパンバードフェスティバル
(JBF)2023

開 催 2023年11月4日(土)~同5日(日)
場 所 手賀沼親水広場・水の館、オオバン広場、我孫子市鳥の博物館、山階鳥類研究所、我孫子市生涯学習施設「アビスタ」
時 間 4日10時~16時、5日9時30分~15時
主 催 ジャパンバードフェスティバル実行委員会(山階鳥類研究所、日本鳥類保護連盟、日本野鳥の会千葉県、千葉県野鳥の会、我孫子市鳥の博物館友の会、我孫子野鳥を守る会、日本雁を保護する会、日本バードカービング協会、菅原安、♪鳥くん、日本望遠鏡工業会、アルパインツアーサービス、文一総合出版、宣陽社、中央学院高校、手賀沼同好会、我孫子青年会議所、我孫子市商工会、JBFサポーターズ、矢野安子、我孫子市教育委員会、我孫子市)
協 賛 サントリーホールディングス、我孫子ロータリークラブ、日本電気我孫子事業場、我孫子ゴルフ倶楽部、我孫子ライオンズクラブ、手賀沼貸舟業協同組合、シミズメガネ、シーズスペース・ヌック、我孫子市国際交流協会など
後 援 環境省、文部科学省、国土交通省、千葉県、柏・印西・松戸・野田など隣接各市、全国愛鳥教育研究会、二松学舎大学、麗澤大学、我孫子市文化連盟、クリーン手賀沼推進協議会など


暖冬なのか、例年並みなのか   

取材日 2023年11月8日(水) 場 所 柏市箕輪(旧沼南町)     柏市あけぼの山農業公園

 

うんがいい!朝市

開 催 2023年11月25日(土)
場 所 流山市東深井の運河水辺公園
時 間 9時~13時
主 催 流山市利根運河交流館

明治以後の松戸
豊富な写真と資料で綴る

――68年前、松戸市の旧水戸街道であった電話線工事現場。街並みを背にした自転車の新聞少年が満面の笑みを浮かべる。親しい知り合いに呼び止められたのだろうか。この写真がポスター、チラシの松戸市立博物館企画展「あの日のまつど―写真でふりかえる 150年―」が同館で開かれた。

 

 

写真上:企画展のポスター・チラシ(左)、家族連れの入場者が目立った会場

 

 

 

総合公園「21世紀の森と広場」の一角にある同館受付で企画展の入場を告げた。担当職員から「観覧無料」のチケット、新聞少年の写真が表紙の冊子を頂いた。A4判全文32㌻。写真と記事で企画展の解説をしており、ガイドブックのようなものだ。

 

 

「1315番地の松戸町役場」がタイトルのA4判4㌻の資料が挟みこまれていた。大正年間の写真や資料から松戸町役場の所在地に違和感を覚えた市民によって住所の変遷をたどって誤りに気づいた記録が載っている。

 

 

数段の階段を下り、右奥の会場に向かうと、入り口に畳2枚分はあろうか、大きく引き伸ばされた新聞少年の写真が出迎えた。右回りが順路になっていて会場は明治から始まり、大正、昭和の順に仕切られていた。

 

 

写真上:入り口に掲げられた超特大ポスター

 

 

 

入ってすぐの正面に同館の「ごあいさつ」があった。千葉県誕生150年、松戸市制施行80年、同館開館30年の節目の年である、と開催動機が説明されている。

 

 

さらに「さまざまな風景を切り取った写真を中心に、市内に伝わる貴重な資料をまじえ、松戸市域の明治から後の時代をふりかえる」とあった。江戸時代から水戸街道と江戸川水運の宿場町として栄え、明治以後も県西北部の中心都市として発展してきた松戸を再認識しようというわけだ。

 

 

松戸には江戸幕府将軍家、德川ゆかりの松龍寺や松戸神社があり、最後の将軍、徳川慶喜(1837~1913)の実弟で「幻の将軍」とも呼ばれる昭武(1853~1910)が戸定邸という居宅を構えた。

 

 

兄弟はカメラが趣味で農村風景や町民の暮らしなど数多い写真に残している。今回の展示にも特に昭武が撮った写真を松戸の原風景などとして紹介している。

 

 

写真上:徳川昭武が1906(明治39年)に写した古ヶ崎の農家(左)、1908(明治41年)に撮った江戸川の高瀬舟

 

 

 

大正期には国内唯一の陸軍工兵学校が開校し、戦時中には特攻隊の中継地点となった松戸飛行場も置かれた。展示の後半は戦後の民主主義の発展、「広報まつど」(松戸市報)の発行、大型団地開発による人口急増など時々の様子が映し出されている。

 

写真上:陸軍工兵学校の資料や軍服コーナー(左)、大正時代に開校した陸軍工兵学校の写真を眺める入場者

 

 

 

古い街並み、商店街の写真付き見取り図も展示され、家族連れは「俺の中学校はここにあったんだ」「お母さん、あの店、載ってる!」と驚いた様子。全体の出品数は写真約300枚、資料約90点という。

 

 

明治期の千葉県域には廃藩置県で26もの県が出来た。最終的に1873(明治6)年、木更津、印旛両県を合わせて千葉県に。5年後に東葛飾郡が発足すると、松戸に約150カ村、県内最大の11万4465人を抱える郡役所が置かれた。

 

 

写真上:明治期の松戸尋常小学校、松戸高等小学校の沿革誌や学籍簿(左)、松戸を再発見する資料にくぎ付けになる入場者

 

 

 

かつて今の市域に松戸、小金両町、明、八柱、馬橋、高木各村があった。東葛飾郡の中心として街道の整備が進み、江戸川に葛飾橋が架かる。常磐線などの鉄道も引かれて商工業も発展した。町村合併も進み、戦時下の1943(昭和18)年4月、松戸市が生まれた。

 

 

写真上:1958(昭和33)年の市議会議員選挙の開票風景(左)、1959(昭和34)年、市役所の家屋消毒作業。戦後の暮らしは病気との戦いでもあった

 

 

 

同館には市民から貴重な文書、生活用具とともに、街角風景などの歴史を反映する写真が提供されている。2012(平成24)年には「広報まつど」担当職員が撮影した写真も移管され、近現代資料として調査、分析して今回の企画につながった。

 

 

写真上:国内最大規模の常盤平団地開発を伝える1961(昭和36)年の「広報まつど」(左)、1960(昭和35)年代の常盤平団地風景

 

 

 

同館学芸員の中山文人さんは「松戸は1950から60年代に都市基盤が出来た。市民になじみ深い年代だが、市外、県外からの入場者も多い。松戸の写真や資料を通じて似たような歴史をたどった故郷を思い描いていると思う」と話していた。

 

 

写真上:1963(昭和38)年、バス乗降客でごった返す松戸駅西口(左)、1971(昭和46)年、市役所すぐやる課の海外からの視察風景

 

 

 

 

写真上:1973(昭和48)年、新松戸駅の開業式(左)、昭和30年代に活躍したオート三輪の実物

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

「鳥の祭典」が完全復活
賑わう青天の手賀沼湖畔

 

――国内最大規模の「鳥の祭典」が完全復活した。11月4、5両日、我孫子市の手賀沼湖畔で「ジャパンバードフェスティバル(JBF)2023」(JBF実行委員会主催)が開かれた。

写真:手賀沼湖畔に林立した出展者のテント(上)とJBFの大看板(手賀沼親水広場駐車場)

 

 

 

コロナ禍のため、過去3年は一部イベントのオンラインだったり、規模を縮小したりだった。今回は従来の手賀沼親水広場・水の館をメーン会場に海外からの出展を含め、4年ぶりにいつもの「鳥の祭典」を再現した。秋晴れにも恵まれ、手賀沼湖畔は大勢で賑わった。

 

 

JBF開催で無料開放された我孫子市鳥の博物館3階テラスから手賀沼方面を眺めた。手賀沼親水広場・オオバン広場の駐車場に出展者のテントが林立していた。鳥類の研究・保護活動、鳥関連の書籍・グッズの販売、カメラ・望遠鏡などの観察機器と様々だ。

 

 

写真上:JBFのチラシ(左)、出展した光学機器メーカーの望遠鏡などが手賀沼に向けられていた(手賀沼親水広場)

 

 

 

広場には香ばしい匂いが漂う焼きそばなどの露店も軒を並べた。一角の特設ステージで代わるがわる演者が登壇して歌や踊りのライブを披露。芝生に腰を下ろした入場者は楽しみながら食事をしていた。

 

 

写真上:出展者と談笑したり(左)、芝生でひと休みしたりの入場者(手賀沼親水広場)

 

 

 

水の館2階では子ども向けの情報発信や活動を支援する「あびこ子どもネットワーク」(あびっ子ネット)が鳥の折り紙展示と作り方を指導するコーナーがあった。折り紙で市の鳥・オオバンやタンチョウ、クジャクなど10種類が飾られていた。

 

 

写真上:折り紙の野鳥も展示され(左)、作り方教室も開かれた(水の館2階)

 

 

 

あびっ子ネット運営委員長の渡邊陽一郎さん、昴さん親子が会場で女子中学生らに折り方を教えていた。渡邊さんによると、クジャクは3時間ぐらいかかるがオオバンだと30分ぐらいだという。女子中学生らは15~20分で出来る山の鳥・シマエナガに挑戦していた。

 

 

水の館から湖畔の遊歩道を使ってアビスタに移動中、船上バードウォッチングの遊覧船が湖上に浮かんでいるのに気づいた。手賀沼をまたぐ通称「ふなとり線」(県道船橋―我孫子線)の手賀大橋から観ると、遊覧船はJBF会場の青白テント群の脇をスーと航跡を引きながら優雅に航行していた。

 

 

写真上:メーン会場の手賀沼親水広場沖を航行する船上バードウォッチングの遊覧船(手賀大橋から)

 

 

 

遊覧船には「我孫子野鳥を守る会」の会員が乗り込んでボランティアガイドを務める。湖上を飛んだり、湖面を泳いだり、岸辺にいたりの鳥に近寄ってリアルタイムに解説してくれる人気のイベントだ。

 

 

写真上:人気の船上バードウォッチング。乗船券を求める長い列ができた(手賀沼公園)

 

 

 

アビスタ1階の駐車場側入り口から入ってすぐの工芸工作室で、野鳥の写真撮影を楽しむグループ「写遊暈(ぼけ)」が写真展を開催していた。

 

 

グループはJBF初回の2001(平成13)年11月から参加している。今回はシマフクロウ、ミヤマカケス、オオワシ、カワセミなど一瞬の姿を撮った会員作品28点が展示された。

 

 

山口一誠会長はカイツブリに絞って10点を出品。去年と今年の5~8月にかけ手賀沼用水路にいるカイツブリを追った。交尾から産卵、ふ化の瞬間、ヒナを背負っての子育て……。カイツブリの生態が見事にとらえられていた。

 

 

「コロナで遠出できなかった。それなら手賀沼の鳥を狙おうと思った。オオバンは市の鳥で有名なので、カイツブリをまとめてみた。かなり粘って撮影した」と山口会長。

 

 

写真上:カイツブリの生態を追った山口一誠さん(アビスタ1階工芸工作室)

 

 

 

1階ストリート壁面では「日本ワイルドライフアート協会」の「鳥に魅了されたアーティストたち」の作品が飾られた。同協会は1994(平成6)年に「野鳥を描く会」として発足、その後、改称した団体だ。

 

 

色鮮やかなキジの仲間、ベニジュケイをモチーフにした絹地の手描き友禅染めのほか、色んな鳥が登場する油絵、水彩画などの作品に目を引かれた。

 

 

写真上:鳥をテーマにした絵画、染め物なども展示された(アビスタ1階ストリート壁面)

 

 

 

反対側の手賀沼公園側出口では、我孫子を始め、茨城県取手市以南のJR常磐線沿線自治体、東京藝術大学、JR東日本の「JOBANアートライン協議会」の「JBF2023 アートアンブレラ」があった。

 

 

駅の忘れ物の傘に参加者が思い思いにペイントしてオリジナル傘を作るイベント。壁に藝大生が手掛けた作品が掲げられ、家族連れなどが果敢に挑戦。父親に連れられて来た小学1年の女児は、透明なビニール傘に油性ペンで絵を描いていた。

 

 

写真上:駅の忘れ物の傘にペイントされたアートアンブレラコーナー(左)で、絵付けするちびっ子(アビスタ手賀沼公園側出入り口)

 

 

 

2階に上がった。エントランスホールでは渡り鳥の絶滅危惧種、コアジサシ保護に取り組むNPO「リトルターン・プロジェクト」(東京)や環境保護の同「かしわ環境ステーション」(柏市)がコラボ。コアジサシグッズの販売やデコイの色塗り教室を開いた。

 

 

ミニホールには「人にも鳥にも優しい撮影を心がけよう!」という大きなバナーが掲げられた。「全日本鳥フォトコンテスト」の入賞作品を始め、ほぼ応募全作品が展示された。

 

 

写真上:全日本鳥フォトコンテスト応募作品の展示会場(アビスタ2階ミニホール)

 

 

 

日本バードカービング協会会長の野鳥彫刻家、内山春雄さんが指導するバードカービング(野鳥彫刻)愛好家の作品も学習室に並んだ。特に今回は内山さんが力を入れている目の不自由な人に触って野鳥を知ってもらうタッチカービングの作品だけを別室に集めた。

 

 

写真上:内山会長のタッチカービングコーナーで、音声再生ペンを試す入場者(アビスタ2階学習室)

 

 

 

オオルリ、ホトトギス、モズ、オオバンなど31点。色付けされていない白塗りだが、作り置きしている通常作品の型を樹脂で覆うなどで野鳥の柔らかな質感も描かれている。

 

作品の一つずつにデータコードが付けてあり「音声再生ペン」で読み込ませると「チ、チ、チー」「チュン、チュン」などの鳴き声がペンのスピーカーから流れる。内山さんは入場者にペンの利用を勧め、質問を受けると、野鳥の特徴や生態などを熱心に説明していた。

 

JBFの重鎮でもある内山さんは「手賀沼にこんなに人が集まるのはすごいことだ」と評した。

 

 

内山さんのタッチカービングは11月16日から東京・上野の東京都美術館で始まる同館企画展「いのちをうつす」で40点が出品される。

写真:展示品を説明する日本バードカービング協会の内山春雄会長(アビスタ2階学習室)

 

 

 

 

写真上:東京藝術大学の学生や出身者がアートや歌声を披露した(アビスタ手賀沼公園側出入り口)(左)、展望台から手賀沼を眺める入場者(水の館4階)

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

暖冬? それとも平年並み?
桜の狂い咲きに早春の花も

 

――穏やかな小春日和となった11月8日の「立冬」。いつも早めの花便りをくれる手賀沼南岸の旧沼南町で、早咲きのカワヅザクラがほころんでいるのを見つけた。

写真上:小春日和の中で開花したカワヅザクラ(柏市箕輪)

 

 

 

数本ある木のうち、南側の日当たりがよい枝に濃いピンクの数輪が咲いていた。ぽつんぽつんと遠慮気味ながら、北風に耐えるよう枝にしがみついていた。

 

 

近くの陽だまりには早春、ピンクのツンとした花をつけるホトケノザや春から夏にかけ可憐な黄色い小さな花をつけるオッタチカタバミも咲いていた。晩秋が見ごろというヒメツルソバもあった。

 

 

写真上:初冬の日差しの中で開花した早春のホトケノザ(左)と、春から秋に咲き続けるオッタチカタバミ(いずれも柏市箕輪)

 

 

 

四季の花が楽しい柏市あけぼの山公園を訪ねた。風車の近くで黄色のタンポポが顔を出し、チョウが止まっていた。紅葉の始まった日本庭園ではツツジも数輪、日差しの中で輝いていた。

 

 

写真上:タンポポに止まったチョウ(柏市あけぼの山農業公園)(左)、日差しを受けたツツジ(柏市あけぼの山農業公園日本庭園)

 

 

 

さくら山のソメイヨシノもひょっとして、と期待して登った。が、やはりそんな「異変」はなかった。代って所々に植わっていた英国生まれのアーコレードが咲いていた。

 

 

写真上:イギリス生まれの二季咲きアーコレードは5分咲きだった(柏市あけぼの山農業公園さくら山)

 

 

 

コヒガンザクラ、オオヤマザクラの交配種。英国では春咲きだが、日本では春、秋の二季咲きという。根元では野菊のコヨメナが群れをなしていた。

 

 

写真上:晩秋が見ごろというヒメツルソバ(柏市箕輪)(左)、秋の野菊を代表するコヨメナ(柏市あけぼの山農業公園さくら山)

 

 

 

東京では11月7日、最高気温27・5度を記録して11月の最高気温を100年ぶりに更新した。さらに11月の最高気温25度以上の「夏日」がこの日で3日目となり、これも観測史上初めてとか。

 

 

暖かい日が一転。一週間後の13日、気象庁が一気に冬の訪れを告げる「木枯らし1号」を観測し、発表した。長期予報通りの暖冬と思っていたが、平年並みの寒い冬になるのかな?

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

「うんがいい!朝市」
流山の利根運河で14年続く

――133年前に出来た利根川と江戸川をつなぐ利根運河で、地元商店や農家らの朝市が続いている。「うんがいい!朝市」としゃれの利いたネーミングだ。11月25日の土曜が今年最後の朝市というので訪れた。

 

 

写真上:今年最後の朝市を告げるチラシ(左)、利根運河右岸の土手に軒を並べた朝市のテント

 

 

 

東武アーバンパークライン(野田線)運河駅から徒歩5分の運河水辺公園が会場だ。利根運河に架かる流山街道運河橋を渡って左折すると、右岸にある桜並木に朝市テントがずらり。黄色地に赤字で「うんがいい!朝市」と染め抜いたのぼり旗がはためく。

 

 

写真上:利根運河を見守る「ビリケンさん」(左)、にぎにぎしい朝市ののぼり旗

 

 

 

テント村の手前に「幸福の神」とされるビリケン像がある。元は利根運河を造り、運営した会社役員が110年前に建立した石像だ。5年前に何者かに壊され、今あるのは二代目の錫製。初代石像は修復され、流山市立博物館に収容されているという。

 

 

写真上:開店と同時に大勢が入場した

 

 

 

入り口では焼き鳥職人二人が、二つの焼き鳥器で煙を巻き上げながら焼いていた。中々の人気でみるみる買い物客の列ができた。注文に焼きが間に合わないようで職人は休む間もない。

 

 

写真上:焼き鳥店は開店から焼きっぱなしだった

 

 

 

奥に進むと、今回はクリスマスがテーマとあって、サンタ衣装やクリスマスツリーの着ぐるみ姿のスタッフもいた。野菜、パン、お菓子、アクセサリーなど様々な店が並ぶ。洋菓子店の「流山プリン」とか、自家焙煎コーヒー店の「利根運河」とか、地元ブラントの商品も目立った。

 

 

写真上:地元ブランドの「流山プリン」(上)と「利根運河」コーヒー 、サンタの衣装姿で楽しそうな朝市ボランティアスタッフ

 

 

 

「手作りですよ」と声掛けしていたのは、野田市にある石塚製菓所の三代目という石塚ひろみさんだ。昔はおまんじゅうなども作っていたが、今は野田自慢の醤油を使った揚げおかき中心という。

 

 

 

揚げ時間や醤油、塩加減を工夫し、コクを出したり、あっさり仕上げたり。「油少な目は女性向きかしら。朝市のたびに来てくれるお客さんもいるので『朝市価格』にしている」とか。

 

写真:味自慢の自家製揚げおかきを並べた石塚ひろみさん(右)

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギンナン細工」の看板があるテントではスポーツ選手、パンダ、ネコ、野鳥など、ギンナンをくり抜いて作った超ミニ人形が展示されていた。両手やしっぽが風に吹かれてくねくね動く。

 

 

写真上:ギンナン細工のミニ動物など(左)を作り続ける天木誠司さん

 

 

 

「福島の『赤べこ』にヒントを得たんだ」と作者の天木誠司さん。近くの自宅に作業場「木の実工房」を構えている。二十数年前にサラリーマンを定年退職し、絵画を始めたり、竹細工で尺八を作ったり。孫が喜ぶ物を作りたいと、誰もやっていないギンナン細工を思い立った。

 

 

福島・会津の郷土玩具「赤べこ」は頭に触れると、振り子のように動く。天木さんは小さい実をくり抜いて細工するが「手が動くようになるまで3年かかった。実の中のバランスが難しかった」という。

 

 

1個作るのに1週間。これまでに3千種は作っただろうか。「珍しいって喜んでもらえるし、楽しいよ。ぼけ防止にもなるし」とにこやかだった。

 

 

 

流山市の仕出し弁当店「キッチンとべ」の戸部滋朗さんは7月からクラフトビール造りを始めた。妻の実家にある古い酒店倉庫に「安田屋ブリュワリー(醸造所)」を開設。「ペールエール」、黒ビール「スタウト」など6種類を完成させ「流山麦酒」と名づけた。

 

写真:「流山麦酒」を造った戸部滋朗さん

 

 

 

地元にある東京理科大生がデザインした「利根運河」のラベルを貼った小瓶(330cc)を持ってきた。ビールサーバーも置き、小瓶、グラスビール1杯ともに700円。朝市では初のお披露目で、戸部さんは「皆さんに『流山麦酒』を知ってもらい、飲んでアドバイスしてほしい」という。

 

 

 

コロナ禍で弁当店の仕事に空きができた。流山の新しい土産品に何か出来ないか考え、クラフトビールに行きついた。「私自身、酒に強くないので皆さんの意見を聞きながらやっている」

 

 

生産は月に600㍑(小瓶1800本)の見込み。流山はみりんの産地でもあり、将来的にはみりん粕(こぼれ梅)が原料のものも造るつもりだ。

 

 

シクラメンなど季節の花々の鉢植えを並べたのは、県立流山高校園芸科草花専攻の尾原春那さん(3年)ら女子生徒4人。学校で花作りからスタートし、最終ゴールとなる販売を朝市で体験するのが狙いだという。尾原さんは「今年始めて来たけど、にぎわっていますね。いい経験になります」。

 

 

写真上:季節の花を持ち込んだ県立流山高校の生徒

 

 

 

1890(明治23)年に完成した利根運河は、利根川から江戸川まで柏、流山、野田3市を通る全長8・5㌔。舟運時代は大いににぎわったが、鉄道の普及で衰退した。今でも当時の面影を留め、四季折々の風情を見せる。

 

 

朝市は利根運河の史資料などを展示する会場近くの流山市利根運河交流館主催。地域交流と運河の観光活用などのため、2009年11月から始めた。毎月第4土曜開催だったが、コロナ禍で中断。2021年12月に再開後、猛暑と厳冬期を避けて開くようになり、今回で131回を数える。次回は来年3月。

 

 

写真上:利根運河交流館の写真展(左)、運河駅ギャラリーのクリスマス展示

 

 

 

同交流館7代目館長の中村光佐子さんは「イベントの参加者として来たことがある経験を生かしている。展示だけでなく子どもの遊具なども置いて、親子で来てもらって笑って帰ってもらえるような朝市を続けたい」という。

 

 

同館では写真展「利根運河の紅葉と冬景色」が開催中だ。同館職員の古川みゆきさんが撮影したモミジやイチョウの写真が展示されている。古川さんは「運河の朝夕の景色、やってくる鳥が大好き。散歩コースになっている」として、運河周辺を被写体にしている。

 

 

写真上:妙見神社のモミジ(左)におどり公園のラッパイチョウ(いずれも古川みゆきさん撮影)

 

 

 

運河駅ギャラリーでは同館飾り付けのクリスマス展示もあり、駅利用客に迫りつつある年の瀬を感じさせている。

 

 

 

(文・写真 佐々木和彦)