青空を泳ぐこいのぼり
3年ぶりに利根運河に揚がる
■写真上:青空を泳ぐ大小さまざまのこいのぼり。3年ぶりに復活した
■写真上:作業の段取りを説明する中村光佐子・利根運河交流館長
利根運河は利根川から柏、流山、野田3市に接しながら横断し、江戸川まで続く全長8・5㌔。船運時代に利根川を上り、分流部(現・野田市関宿地区)の江戸川から下る従来ルートのバイパスで、オランダ人技師ムルデルの設計で1890(明治23)年に完成した。
距離にして40㌔、時間にして3日を1日に短縮できるとあって年平均2万隻が航行してにぎわった。しかし、明治から大正にかけた鉄道の普及で衰退し、1941(昭和16)年の大洪水で機能停止した、とされる。
そんな歴史ある利根運河は「土木学会選奨土木遺産」「近代化産業遺産」「美しい日本の歴史的風土準100選」などに入っている。今では春は水辺に似合う桜に菜の花、秋には彼岸花などが咲き誇る自然豊かな市民憩いの場だ。
「うんがいい! こいのぼり」は子どもたちの健やかな成長を祈って、同交流館が2014年から「子どもの日」を前にした4月中旬、市民から寄贈されたこいのぼりを揚げている。毎月第4土曜の「うんがいい! 朝市」とともに運河の呼び物になった。
今年も市民からこいのぼりを募ったところ、大小百を超える物が集まった。こいのぼりを揚げる作業を「こいのぼり泳がせ隊」と名づけ、参加者を募集した。作業当日の4月16日、小学生らの手を引いた親子連れなど7組20人が集まった。中村館長ら同交流館スタッフ、ボランティアら20人とともに朝9時から取り掛かった。
■写真上:ベテランボランティアからこいのぼりの吊るし方を習う子どもたち
こいのぼりは0・5㍍のミニサイズから4㍍を超える大物まで。ベテランボランティアが揚げる間隔やバランスを見極めながら長さ約100㍍のロープに吊るす位置を決めた。参加の親子はスタッフのお手本に従って真剣な表情で丁寧に結び付けた。
■写真上:ロープに吊るす前に手作りこいのぼりを披露する市民グループ
■写真上:参加したちびっ子は真剣な表情で作業に取り組んだ
スタッフが右岸の時計塔に結んだロープを手に持って土手を下り、歩いて川を渡ってから対岸の大きな岩にくくりつけた。一箇所数人がかりで計5本のロープを川に渡した。
■写真上:右岸の時計塔に結んだロープを手に川を渡るボランティアスタッフ(左)、ロープから外れたこいのぼりを川の中で吊るす作業もあった(右)
■写真:川面を渡ってきたロープは河原の大きな石に結ばれた
家族連れは川に架かる小橋を行き来しながら作業を手伝ったり、見守ったりしながら、こいのぼりが揚がるのを待った。作業開始時はどんよりした曇り空だったが、いつの間にか青空が広がっていた。終了後、こいのぼりを背景に全員でハートマークを描きながら記念写真を撮った。
■写真上:土手の上からロープを対岸に伸ばす家族連れ
昨年12月からは朝市も復活した。中村館長は「感染対策をしながら少しずつ活動再開ができればと思います。新緑の中のこいのぼりで皆さんの気持ちが少しでも明るくなればいいですね」という。
こいのぼりは5月31日まで利根運河を泳ぐ。
■写真上:作業を終えてハートマークで記念写真に納まる参加者
(文・写真 Tokikazu)