ミュージアムINFO

1月

     1月

野田市の粋な試み
愛宕駅に「西口駅前美術館」

 

 

所在地:野田市中野台、東武アーバンパークライン(東武鉄道野田線) の駅

 

第10回柏写友会・楽写会 合同写真展

開 催 2022年1月16日~19日
場 所 パレット柏・市民ギャラリー
    柏市柏1-7-1-301号
主 催 柏写友会、楽写会
入場料 無料


野田市の粋な試み
愛宕駅に「西口駅前美術館」

――工事中の仮設通路が「駅前美術館」に変身した。野田市を走る東武アーバンパークライン(東武野田線)連続立体交差事業で新しく高架化された愛宕駅。西口広場建設工事の一環で出来た仮設通路の「目隠しフェンス」に小学生の絵60点が飾られている。野田市が殺風景なフェンスの通路を活用して児童の作品会場に仕立てた。名づけて「愛宕駅西口駅前美術館」。

写真上:「目隠しフェンス」に展示された児童の作品。駅利用客を楽しませている

 

 

改札を出て斜め左に進むと「美術館」の入り口となる。通路左側に工事エリアの金網、右側が隣接する住宅、アパートの「目隠しフェンス」になっている。絵は長さ36㍍、高さ2㍍のフェンスに縦3枚ずつ展示されている。同駅周辺の中央、宮崎、東部、清水台、柳沢の5校の児童による作品だ。

 

写真上:愛宕駅の改札を出て左斜めに進むと入り口。壁いっぱいに作品が展示されている(左)、広場の工事現場にある案内板。金網の反対側通路の壁が「ギャラリー」(右)

 

 

 

開設された昨年3月、2020(令和2)年度分として1~6年の各学年代表1点の各校6点、5校の計30点を集めて展示した。さらに21年(同3)年度分として同12月に30点が追加されて60点になった。作品は児童らが夏休みの宿題などとして取り組んだ。各校が独自に代表作を選んだ。

 

 

野田市が自然の再生、共生を目指す象徴として飼育するコウノトリ、四季折々の自然が楽しい大型の清水公園、歴史ある市内最古の櫻木神社、地元を代表する企業のキッコーマン、1929(昭和4)年に建造された中世ヨーロッパ風の興風会館、旧愛宕駅舎……。

 

 

展示品はB4判(364㌢×257㌢)の作品をデジタル処理し、校名と作者名、タイトルを入れてパネル化した。市側は「児童の自主性に任せたい」として、特に絵のテーマを設けなかったが、地元を取り上げた作品が目立つ。市は新年度も5校の30点を追加する予定だ。

 

 

連続立体交差事業は県と東武鉄道が2008(平成20)年度に着手した。清水公園―梅郷間の2.9㌔を高架化し、11カ所の踏切を解消して交通安全と渋滞緩和を目指す。愛宕、野田市両駅の高架新駅化も図られ、昨年3月の高架開始と同時に愛宕駅の新駅舎が完成した。西口広場整備は野田市が担当し、23(令和5)年に完成予定だ。

 

 

写真上:工事中の愛宕駅西口広場。左に進んで右に曲がった通路に「美術館」がある(左)、美術館の表札と作品案内のパネル(右)

 

 

 

美術館と広場整備を担当する市の愛宕駅周辺地区市街地整備事務所によると、広場完成時には仮設通路も新しく生まれ変わるが、児童作品はそのまま展示を続ける。市民から好評のため、ゆくゆくは古くなった作品から順番に更新も考えているという。

 

 

同事務所所長補佐の中山高裕さんは「無理に作品の方向性を決めず、子どもたちの感性に任せましたが、やはりローカル色を反映した作品が多いですね」という。展示が子どもたちの励みになったり、将来、故郷の思い出になったりすることを期待している。

 

 

 

「じまんの櫻木神社」(宮崎小6年、浦邉栞奈さん)(左)、「みんなにつたえたい野田」(宮崎小4年、角田杏奈さん)(右)

 

 

 

「しょう油の街 野田」(東部小6年、山下千絢さん)(左)、「旧愛宕駅」(東部小5年、桒原琉乃さん)(右)

 

 

 

「興風会館」(中央小3年、鈴木瑠花さん)(左)、「東武線とこうのとり」(中央小4年、山口真央さん)(右)

 

 

 

「清水公園」(清水台小5年、小貫恵奈さん)(左)、「清水公園 金乗院」(清水台小3年、山口優香さん)(右)

 

 

 

「大きなひまわり」(柳沢小3年、佐野玲奈さん)(左)、「あたご山」(柳沢小4年、瀬能美桜さん)(右)

 

 

(文・写真 Tokikazu)

10回目を迎えた合同展
柏市拠点の写真2グループ

――風景、草花、お祭りなど様々なテーマの写真が会場いっぱいに展示された。柏市の中心市街地にある「パレット柏・市民ギャラリー」で1月16日から開かれた写真愛好グループ「柏写友会」=阿部啓明会長(80)、会員12人=、「楽写会」=松崎誠会長(71)、会員12人=の合同写真展だ。

手賀沼と民藝の心展

写真上:「このトリミングいいわね」。会場の女性グループは作品をじっくり見て回って楽しんでいた

 

 

それぞれ20年以上前に発足し、別々に活動する2グループが合同写真展を開くようになって、ちょうど10回目を迎えた。

 

 

朝陽を浴びて赤やオレンジ、グレーのグラデーションを描く遊水地の茎草、朝もやに包まれた雑木林、ボサボサ雪に震える公園の木々、映画の一場面のような夕焼け空、昭和30年代を連想させる学舎、朝に開いた紫のアサガオ、マクロレンズで狙った野草の朝露……。

 

我孫子市市長

 

写真上:鮮やかな色彩の作品の前に立ち止まって鑑賞する入場者

 

 

 

両会員計23人が地元や旅先で撮りためた写真をA3サイズにプリントし、全紙大の額に納めて1人3点ずつの計69点を出品した。270平方㍍ある広い会場の四方を飾った。

 

 

 

入場者は時計回りに見学、鑑賞していた。女性グループが多い印象も受けた。自分たちも写真を撮るのだろう、「ピントがいいわね」「トリミングもなかなかだわ」などと感想を漏らしていた。

 

 

 

柏写友会、楽写会とも70代中心の会員が毎月1回、パレット柏や市内にある県立柏の葉公園の公園センターで例会を開き、技を磨いている。作品を持ち寄って互選したり、批評し合ったり。年に数回、県外での撮影会を企画したりしている。

 

 

 

 

 

 

写真上:お気に入り(?)の作品をスマホのカメラに収める女性

 

 

さらなる共通点は、公民館などの公共施設で写真講座の講師を務める写真家安蒜(あんびる)静雄さん(72)の指導を受けていることだ。安蒜さんは「技術的なことより、撮りたいもの、撮影目的をはっきりさせる」を基本にしている。

 

 

柏写友会の例会でも、何を撮るか、そのための構図、ピント合わせなどをポイントにしているという。阿部会長は「作品への批評も大事です。でも、相手が傷つかないよう、柔らかい言葉を選んで言うようにしている。わだかまりを残さず、楽しく集まれる会にしたいでしょう」という。

 

 

楽写会の松崎会長も「同じ趣味を愛する者同士、それぞれの人格を尊重して楽しく、和やかな会の運営を心掛けている」と強調した。

 

 

写真上:会場で談笑する楽写会の松崎誠(左)、柏写友会の阿部啓明両会長

 

 

 

それぞれ柏市の公民館などで独自の作品展を開いてきた。しかし、ともに高齢化が進み、会員も減ってきて出展する作品数も限られてきた。そこで同じ指導者の下で活動するなどの共通点もあり、2012(平成24)年から合同開催を始めた。

 

 

展示スペースの最前列に両グループの「ご来場の皆様へ」と題した挨拶文が掲示されていた。「前回の合同展の際、次回即ち今回はコロナ禍に煩わせられることなく開催できると期待していたが、その思いは見事に裏切られた」とあった。

 

 

その上で「節目となる第10回をコロナ禍で迎えたことを残念に思うか、無事に開催できたことを幸せととるか。我々は後者と受け取りたい」ときっぱり。

 

 

会場の作品を眺めながら1点1点の写真に込めた会員の秘めたる意志、意欲を想い描いた。

 

 

 

塙さん

 

写真上:柏写友会・松本彰さんの「朝陽の遊水地」(茨城県取手市岡)(左)、柏写友会・坪井繁さんの「三匹の獅子舞」(柏市の西光院)(右)

 

 

塙さん

 

写真上:柏写友会・阿部啓明さんの「盛夏」(茨城県常陸太田市大中町)(左)、柏写友会・岩佐靖子さんの「朝霧立つ」(茨城県守谷市大柏)(右)

 

 

塙さん

 

写真上:柏写友会・花井卓郎さんの「夏の朝」(柏市柏)(左)、柏写友会・小西一久さんの「骨の舞踏」(京都市東山区の東福寺)(中央)、楽写会・萩原数子さんの「降りしきる午後」(柏市の柏の葉公園)(左)

 

 

塙さん

 

写真上:楽写会・堀尾幸晴さんの「クリスタルビュー」(東京都江戸川区の葛西臨海公園)(左)、楽写会・水庫利重さんの「夕焼けの散歩道」(柏市の利根川堤)(右)

 

 

塙さん

 

写真上:楽写会・鈴木博之さんの「黎明富士」(山梨県富士河口湖町)(左)、楽写会・松崎誠さんの「小春」(柏市の曙橋)(右)

 

 

塙さん

 

写真:楽写会・花嶋洋子さんの「分校の春」(佐倉市青菅)

 

 

 

 

 

 

 

(文・写真 Tokikazu)