撮影者の空気感、臨場感を
「写団萌木」の第2回写真展
会場は同プラザ2階にある回り廊下を利用した文字通りの「回廊ギャラリー」。入り口の受付左側から入る時計回りが順路だ。通路左側の壁が展示スペースで、最初に「御挨拶」の文書が貼り出されている。
■写真上:回廊ギャラリー入り口の受付。メンバーが交代で入場者と応対する
写団萌木を主宰、メンバーを指導する写真家安蒜(あんびる)静雄さん(72)が「風景やスナップ等メンバーが思いのままに撮影したものの中から個性あふれる表現の75点を展示している」と説明。その上で「写真は撮影者の気持ちや世界観を反映する。その空気感や臨場感を感じてほしい」と呼び掛けている。
■写真上:第2回写真展を主宰した「写団萌木」の指導者で写真家安蒜静雄さん
会場を順路通りに回った。作品は目の高さに合わせるように展示されている。身近な里山や公園の草花、田園から高原、山岳、そして天体……。すべてデジタルカメラで撮影されたものだというが、四季が織りなす色どりを基にした風景が多い印象だ。入場者は夫婦で熱心に見入ったり、作品目録を手にチェックするように眺めたりしていた。
■写真上:右回りが順路となった回廊ギャラリー。左側の壁が展示スペースになっている
メンバーの中で山歩きが好きな白井市の森山光男さん(73)は山の写真を出品した。うち1点は群馬県片品村尾瀬ケ原で昨秋、至仏山(2228㍍)を背景に2本の白樺を撮ったものだ。「間隔を空けた2本は、コロナ感染防止のソーシャルディスタンスのように見えた」として「ディスタンス」と名づけた。
■写真上:群馬県片品村尾瀬ヶ原で撮った白樺2本の「ディスタンス」と森山光男さん
我孫子市の須田猛さん(73)は住民グループが環境保全している自宅近くの谷津を撮り続ける一方、周辺を自転車で回ってテーマを探している。今年2月の早朝、赤いネットがかけられたブロッコリー畑に霜が下り、朝日に輝く場面に遭遇した。その一瞬をカメラに収め「寒い朝」のタイトルをつけた。幾何学模様を描くような作品は、須田さんが得意とする地元の風景とは異質のようでもある。が、本人は「私にとっては何の不思議もない風景写真ですよ」と笑った。
■写真上:我孫子市で撮影した「寒い朝」を説明する須田猛さん
主宰者の安蒜さんは「写団萌木」のほかにも「楽写会」「狗尾草」(えのころぐさ)など柏、野田両市拠点の5グループを指導し、写真教室の講師も務めている。かつて柏市で毎回150点を超す定期的な作品展を開いていた。その会場が使えなくなったため、参加者に発表の場を確保しようと2019年夏、「写団萌木」をつくり、同年10月、同じ会場で第1回写真展を開いた。
この写真展は1週間の会期予定だったが、会場の火災報知設備に不具合が見つかり、改修のため、2日開いただけで閉館となった。昨年はコロナの影響などで開催が見送られた。
■写真:会場入り口に掲示されているポスター
安蒜さんは「技術的なことより、撮りたいもの、撮影目的をはっきりするよう教えている。なるべく新しい物を出してほしいとお願いしたが、今回はコロナで好きな場所に行けず、近場で撮った作品が多かったようだ。そのせいか、前回の作風と大きな違いがなかったように思う。コロナ終息後の新作に期待したい」という。
ここでもまた、コロナの計り知れない影響を感じた。
■写真上:安蒜静雄さんの「朝陽浴びて」
■鶴岡勝利さん の「里の朝」
■坪井繁さんの「よさこい祭り」
■中山眞吾さんの「光射す」
■大関祥子さんの「リズム」
■上野優子さんの「蜜を求めて」
■稲川一正さんの「漂流」
■山下孝良さんの「凍て付く」
■松本彰さんの「妖艶に」
■萩原淳司さんの「さざ波」
(文・写真 Tokikazu)