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8月

大雨、暴風にめげずに開花
柏市あけぼの山農業公園のヒマワリ畑

――1970年公開のイタリア映画「ひまわり」をご存じだろうか。イタリア出身の名優ソフィア・ローレン主演の話題作だった。戦争に引き裂かれた夫婦愛を描いた作品だが、冒頭、悲哀に満ちたピアノで始まる音楽が流れ、風に揺れる広大なヒマワリ畑が映し出される。毎夏、「柏市あけぼの山農業公園」の風車前にあるヒマワリ畑を見る度に、その映画のシーンを思い描いていた。
写真上:青空が似合うヒマワリ。今年は風車の周りはやや寂しい感じになった

 

 

ところが、今年はいつもと様子が違った。一面ヒマワリ畑のはずだが、折れたり、倒れたりの一角があった。それでもお日様に向かって笑みを浮かべるように咲いていた。

 

写真:畑の中で倒れたり、折れたりのヒマワリ

 

 

 

実は7月11日にあった局地的な大雨と暴風で伸び盛りの茎が倒れる被害を受けたのだ。夕方、雷鳴とともに一気に土砂降りの雨となり、強風も重なった。2㌶を超える畑の開花を控えた時期で、畑の中央部に被害が多かったが、比較的外周の花は無事だった。

 

 

 

 

 

 

同公園は来園者に被害を知らせるとともに「現在、頑張って咲くヒマワリがあるか、見守っているところです。ヒマワリの花を楽しみにされていたお客様には申し訳ありません」という看板を設置した。

 

 

写真上:大雨と強風の被害を説明する看板(左)、被害が集中した中央部の畑。見学の市民の足取りも重そうに見えた(右)

 

 

そんな関係者の心配をよそに、7月16日の梅雨明け、盛夏の青空を待っていたかのようにヒマワリは同20日過ぎには咲きそろい始めた。被害を免れた外周の花は群れをなして満開となり、倒れたものも枯れることなく、地面にはいつくばるようにしながら懸命に花を付けた。訪れた家族連れなどは「あら大変、倒れている。でも頑張って咲いているね」。激励するように写真に収めていた。

 

 

写真上:倒れても枯れずにあちらこちらで地面をはうようにしながら開花した(左)、いつもとやや違ったが、それでも季節の花を楽しもうという家族連れなどが連日のように訪れた(右)

 

 

 

同公園は柏市制40周年の1994(平成6)年に開園した。桜山や日本庭園、茶室などがある「あけぼの山公園」を合わせて約24㌶。園内には四季を通じて花が咲き誇り、体験・市民農園、展示温室、バーベキューガーデンなどが備えられ、市民の憩いの場になっている。

 

 

 

四季を代表する花が見学者を迎える風車前の花畑は公園のシンボルだ。季節に合わせて植え替えられ、春のチューリップ、ポピー、夏のヒマワリ……。今夏、頑張って咲いたヒマワリは秋にはコスモスに主役を譲るため、8月2日にきれいさっぱりと刈り取られた。映画のシーンのような光景は、来年に期待しよう。

 

 

写真:被害が比較的少なかった外周の花はいつものようにお日様にほほえむように咲きそろった

 

 

(文・写真 Tokikazu)

 

生きる力育む「くりくり美術教室」
命の「礎」の水テーマに創作

――1戸建てが立ち並ぶ柏市増尾台の閑静な住宅街。8月の夏休みのある日、一軒の玄関ドアに「くりくり」という小さな看板がかかった。柏市美術会会員の画家神田みきさんが自宅一室のアトリエで開く「くりくり美術教室」(https://www.kurikuriart.com/)の日だ。

写真上:「くりくり美術教室」で、神田さん(左から2人目)らとともにクラフトを楽しむ参加者

 

 

 

油絵などの作品が飾られたアトリエで、小学3年生の女児が講師の神田さん、神田さんが卒業した武蔵野美術大学の女子学生アシスタントの指導を受け、紙と発泡スチロール製のカラフルな屋根のメリーゴーランドを作っていた。

 

 

 

女児の作品を見比べた神田さんが、一人の女児に「もっとゴージャスな屋根にしようよ」と声を掛ける。すると、女児は「んー、なんか細かくて……」と首を傾げた。広く大きな机を囲み、楽しい時間を過ごしているようだった。

 

 

写真上:教えを受けながらカラフルなメリーゴーランド作りに挑戦する女児

 

 

「美術を通じて成長し、世界と繋がろう」と11年前、「くりくり」を開設した。ネーミングは「Creative」(創造的)から採った。自宅アトリエを始め、パレット柏、リフレッシュプラザ柏を会場に幼稚園児から80代の男女が通う。

 

写真:住宅街の玄関ドアに掛けられた看板。「くりくり美術教室」開催中のお知らせだ

 

 

 

絵を描いたり、物を作ったり。活動は幅広い。5年前には中国・武漢の美術教室の教師と子ども10人が来訪し、工作、絵手紙などで「くりくり」と国際交流をした。その後、神田さんは武漢に招かれて現地交流もした。

 

 

実は、神田さん、美大を出ているが、絵描きではなかった。大学で商業デザインを学び、卒業後、音楽系出版社や大手百貨店でポスター、パンフレット、書籍などを制作するデザイナーの道を歩んだ。

 

写真上:子どもの作品などが展示されている神田さんのアトリエ

 

 

 

デザイナーは作品の納期や締め切りに追われる。間に合わなければ徹夜することもしばしばだ。無理がたたって体調を崩した時期もあり、結婚生活と長男、次男の子育てを優先しようと仕事を辞めた。

 

 

美術教室を開きたい気持ちが強かった。子育てがひと段落した時期に出版社系の美術講座を3年受講。デッサン、油絵、粘土こねなどを「ゼロ」から学んだ。そして、色を塗り重ねる油絵の魅力を感じ始めた頃、「3.11」の東日本大地震が起きた。

 

 

巨大な津波が沿岸の住宅をのみ込んでいく。「水は何かが起きる予兆とか、いろんな表情を見せ、ちょっと怖い感じもある。人の命を奪うこともあれば、救うこともある。生命体の『礎』なんだ」と思うようになり、テーマにしようと思った。「2年前に最愛の父が90歳で亡くなった。最期を看取ったその時も水の重要性を感じた」と振り返る。

 

 

テーマを「AQUA」と名づけ、これまでF6号、同30号、同50号、同100号の5、6点を描き上げた。2019年7月と今年7月、パレット柏・市民ギャラリーであった「柏市美術会展」には「AQUA」を連続出品した。

 

 

写真上:「第3回柏市美術会展」に出品した「AQUA」を紹介する神田さん

 

 

 

今年の第3回展には水の中で女性が泳ぐF50号の2枚組を出品した。「コロナ禍の中で皆さんの気持ちが少しでもたおやかに、のびやかになりますようにとの気持ちを込めて、水の中を自由に泳ぐ女神を描いた」という。

 

写真:「AQUA」で描かれた光を求めて? 水の中を泳ぐ「女神」

 

 

 

 

これまでに描き上げたF30号の「AQUA」の1枚が、フランス・パリで毎年秋に開催される「サロン・ドートンヌ展」に初入選した。絵画、写真、彫刻、版画、建築など10部門がある1903年創設の美術公募展。作品は10月にパリのシャンゼリゼ大通りの特設会場で展示されるという。

 

 

写真上:2021年「サロン・ドートンヌ」で入選した「AQUA」。10月にフランス・パリで公開される

 

 

 

神田さんの夫、息子2人も神田さんと同じ武蔵野美術大学で工業デザインを学んだ同窓一家。3人とも現役デザイナーとして、それぞれ勤める会社の第一線で活躍している。

 

 

 

行動美術協会、日本美術家連盟の会員でもある神田さんは「自分は自然体で生きているので、これといった欲求もない。自分のライフスタイルで感じるタイミング、運とかで行動する。『くりくり』の子どもたちにはアート、デザインを通じ、自分で生きる力をつけてほしい」と願っている。

 

写真:神田さんのセカンドテーマともいえる作品のシクラメン(油絵)

 

 

 

 

 

 

(文・写真 Tokikazu)