ミュージアムINFO

10月

     10月

我孫子動物彫刻展
島田忠幸
プリニウスの動物たち


 

 

2020年10月1日~11月19日

場 所
我孫子市水の館・手賀沼親水広場、ゲートスポット(親水広場入り口)、アビスタ、手賀沼公園ミニSL子ども広場、千葉銀行我孫子支店、杉村楚人冠邸園、我孫子市役所ほか

主 催 我孫子手づくり散歩市
共 催 我孫子市 我孫子市教育委員会
協 賛 我孫子建設業会、立沢建設
板橋建設、三協フロンティア
協 力 千葉銀行我孫子支店
入場料 無料


我孫子市制50周年記念
手賀沼と民藝の心展Ⅱ


 

2020年10月16日~10月21日

場 所
あびこ市民プラザ(あびこショッピングプラザ3階)

主 催
手賀沼アート・ウォーク実行委員会
我孫子市教育委員会
協 力 あびこショッピングプラザ、ギャラリーヌーベル、シミズメガネ、渋谷産業 後 援 我孫子市、日本民藝協会、我孫子の文化を守る会、江戸東京散歩茜会、国際新版画協会、我孫子の景観を育てる会、東葛川柳会ほか
入場料
1,000円(税込)、高校生以下無料

手賀沼の畔に小動物園!?
等身大のアルミ製に匠の技

――キリン、シマウマ、サイ、ダチョウ……。我孫子市の手賀沼湖畔を中心にアルミ板製の動物が展示されている。今にも動き出しそうな等身大の精巧な作品。さながら湖畔に小動物園が出来たかのようだ。
手賀沼のきりん

■「見上げればアフリカ(キリン)」人類の祖先はアフリカで誕生して永い時をかけ現在にいたっている。アフリカが我々の故郷だ。キリンの首があれほど長いので、きっとアフリカが見えているはず

 

 

我孫子市を走る県道の通称「船取線」の手賀沼にかかる手賀大橋の北側交差点脇の草地にニョキと長い首の「キリン」が姿を現した。市役所本庁舎方向をじっと見つめている。東側にある水の館1階の手賀沼ステーションでは「シマウマ」の親子が入館者を出迎えていた。

 

 

鳥類最速という「ダチョウ」、精悍な顔立ちの「ハシビロコウ」の二羽もシャキっと立っている。館内展示のバードカービング(鳥の彫刻)で手賀沼の鳥として紹介されているオオバン、カイツブリ、カルガモなどの仲間入りしたようだ。外の手賀沼親水広場では6体の犬のように見える「プリニウス」がそれぞれ三つの支柱に乗って輪になり、追いつ追われつつ走り回る。

 

 

「船取線」を挟んで西側の手賀沼公園にある生涯学習センター「アビスタ」のロビーでは「サイ」の親子が家族連れを楽しませる。ミニSL子ども広場では作品の骨組みがワイヤーアートとして紹介されていた。

 

 

JR我孫子駅南口の千葉銀行我孫子支店ロビーで「プレーリードッグ」と「カモノハシ」、市役所本庁舎ロビーでは左手に花束をつかんだ「ゴリラ」が来庁者に優しい視線を送る。杉村楚人冠庭園では尻尾を上げて今にも取っ組み合いをしそうな2匹の「イノシシ」がにらみ合う。

 

 

市民参加のまちづくりと地域の文化・創造活動を後押しする我孫子市民グループ「我孫子手づくり散歩市」(太田安則代表)が市制50周年記念事業として企画したアーチスト島田忠幸さん(73)=茨城県取手市=の「プリニウスの動物たち」と題した個展だ。

 

 

プリニウスは、古代ローマの有名な博物学者。天文、地理、動植物、絵画・彫刻などを網羅した百科全書「博物誌」を著し、後世の知識人らに大きな影響を与えた。

 

 

出荷前の接客

 

島田さんの工房は、壁に大小無数のベンチ、バール、のこぎりなどが掛かり、万力やドライバーなどの電動工具がぎっしり。まるで鉄工所のようだ。「博物誌」に出てくる動物などをモチーフに作品作りを続ける。

写真上:鉄工所のような作業場で、制作を続ける島田忠幸さん

 

 

 

動物園で実物を見て覚え、床の鉄板に石筆で下絵を描く。スケッチはあまりしないという。これを基にスチールワイヤーを溶接などして骨組みを作る。ミニSL子ども広場で展示しているようなものだ。骨組みに合わせて洋裁のように型紙をとり、アルミ板を裁断。球状だったり、レール状だったりの金床を使ってハンマーで叩き、形づくる。

 

 

「常に新しい物を見たいという意識が強い。自分が見たいもの、興味があるものを作っている。作ってしまえば思いは離れて、執着しない。そして次の意識に移ってしまう」と島田さん。動物シリーズはこれまで32体を制作したが、100体を目標に保管する倉庫を確保したそうだ。制作意欲は盛んだ。

 

 

手賀沼周辺を散歩しながら各所で展示する作品を楽しんでもらう「我孫子アートな散歩市」を企画してきた太田代表は「匠の高い技術で作られた動物たちを手賀沼湖畔に集め、見てもらいたかった。水辺空間の中で実物大の作品を楽しんでほしい」という。

 

 

作品

 

シマウマ

 

■「草原の貴婦人(シマウマ)」美しいシマウマの縞模様が気になっていた。虫除け迷彩いろいろな説があるが定かではない。この模様を如何にして描くか、思いついたのが日本画で使う青銀箔。かなりシュールでよい。時間が経つと銀箔なので経年変化で黒っぽくなるのも楽しみだ。10月19日から「アビシルべ」に移動。

 

 

 

 

■「追うプリニウス逃げるプリニウス」心の意識の中で常に何かに脅えたり、逃げたいと思う強迫観念はだれにもあるだろう。時代の先頭を走ってた者の価値観が変わったら追われる者になっていた。戦前戦後またはコロナ禍。なにが善で悪だかわからない時代を感じる。追う者がいつの間にか追われる立場になり、逃げることができない時代

 

 

 

サイの親子

 

■「プリニウスのサイ(インドサイ大) おやサイ(インドサイ小)」制作にあたり、いきなり大きなモノを作るのは難しいし困難だ。まずは、床に3分の1の絵を描き、それにそって番線を曲げて立体彫刻デッサンを作る。それを頼りにアルミニウム板を切ったり叩いたり。あるいは溶接して小型サイズの作品ができあがり基本原型になる。これからが本番だ! 小さいサイは子供ではなく親サイになる

 

 

 

ワイヤーアート

 

■「ワイヤーアート」彫刻作品を作る過程で使うマケット(試作模型)だ。大きさや形が決まったところで型紙をとり、型紙から金属素材へと写しかえて本作品が出来上がる

 

 

サイノ親子

 

■「存在の不条理(イノシシ)」 哺乳類は約4500種いるが、中でも嫌われ者はイノシシだ。人に見つかると退治され、鍋の中。でも大丈夫、子だくさんだから

 

 

 

 

■「ハシビロコウ」(左)動かない鳥として人気が高く、精悍な顔立ちのハシビロコウだが、羽を広げると2.5㍍にもなり飛べる。その翼が気になり、作ってみた

■「ダチョウ」(右)鳥の中で最も速く、時速60㎞以上で走ることができ、背の高さは2.2㍍にもなる。このダチョウは進化が進み、100㎞で走ることができる

 

 

 

 

■「タコ壺の兵士(プレーリードッグ)」巣から顔を出し、すぐに立ち上がり周りを見、監視する姿が実に面白いし可愛い。映画「硫黄島からの手紙」で、兵士が塹壕を掘りながら海を見、監視するでもなく立ち上がる姿と重なり、プレーリードッグに鉄兜をけてみた

 

 

 

 

■「カモノハシ」日本の動物園にはいない。オーストラリアに行けば見られる。歯がなく、子供を卵で産む唯一の哺乳類。銅箔を貼り付けて仕上げた

 

 

 

 

■「恋するゴリラ」ゴリラは荒々しく粗野なイメージがあるが、知能が高く繊細な性格でとてもシャイ。好きな雌が前にいるとイジイジして目を見ることすらできない。威嚇するときは両手で胸をたたき、音を出しドラミングする。戦いを避ける行為だ

 

■作品説明はいずれも作者原文

 

(文・写真 Tokikazu)

東葛ゆかりの作品が一堂に
創作意欲燃やす手賀沼の自然

――我孫子市の「あびこ市民プラザ」(あびこショッピングプラザ3階)で10月16日から同21日、柏、我孫子両市にまたがる手賀沼、その周辺にゆかりあるアーチストの作品を一堂に集めた「手賀沼と民藝の心展Ⅱ」が開かれた。

手賀沼と民藝の心展

写真上:絵画、イラスト、陶芸……バラエティーに富んだ展示会場

 

 

様々な作品を通じて地元文化を発掘、発信してきた「手賀沼アート・ウォーク実行委員会」(鈴木昇委員長)が我孫子市制施行50周年を記念し、我孫子市教育委員会と共催した。

 

 

写真:作品に見入る入場者(左)、手賀沼に関係する書籍も数多く出品された(右)

 

 

「40年以上続けた地元文化企画の集大成にしたい」という鈴木委員長の意気込み通り、絵画、彫刻、陶芸、ガラス工芸、染め物……。地元ゆかりの80人による「民藝」(民衆的工芸)など500点余がずらりと並んだ。

 

 

「民藝」は大正期に手賀沼湖畔に居を構え、「白樺」同人の志賀直哉(1883~1971)、武者小路実篤(1885~1976)らを湖畔に招いた柳宗悦(むねよし=1889~1961)が提唱者。観賞用の作品が主流だった当時、マチの職人が作り上げた民衆の生活道具に美術品に負けない「美」があるとして「民藝」と名付けた。

 

 

会場入り口正面には柳が著した「柳宗悦全集」の初版本が置かれ、入場者を出迎えるように紹介されている。すぐ左側の壁には武者小路による「蓮根図」の掛け軸が下がっていた。柳の邸宅(三樹荘)に窯を設けて作陶し、「民藝」を推進したイギリス人のバーナード・リーチ(1887~1979)の作品も柳の書籍近くに展示された。

 

 

写真:武者小路実篤の墨彩画「蓮根図」(左)、バーナード・リーチの「白釉花鉢」(右)

 

 

 

野田哲也作品柏市在住の版画家野田哲也さんは大英博物館で個展を開いた数少ない日本人の一人。展示された「日記:2010年2月10日、柏」は手賀沼周辺がテーマだ。「柏の風景は大津川沿いに東柏、戸張方面を望んだところで、この頃から年齢を重ねたぼくと妻のウォーキングコースとなっています」とのコメントを添えている。柏市に住んだ日本画家小野具定(1914~2000)の「積丹の月」、彫刻家木村堅太郎(1924~2019)の「立像」も展示された。

 

写真:版画家野田哲也が描いた手賀沼付近の風景

 

 

 

 

 

写真:木村堅太郎の「立像」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我孫子市在住で日本職人名工会会員、日本バードカービング協会会長の内山春雄さんのカラフルな小鳥2羽のバードカービング(野鳥彫刻)も目を引いた。精巧に手作りされた赤と黄色の小鳥が今にも飛び上がりそうだ。

 

写真:内山春雄・日本バードカービング会長の作品

 

 

 

我孫子の農家に生まれ、手賀沼などを描き続けた農民画家で、自然保護や景観づくりのNPO法人「手賀沼トラスト」の創始者となった日暮朝納(とものり=1935~2008)の油絵もあった。

 

写真:「農民画家」日暮朝納の油絵「育ち」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手賀沼と民藝の心展」は2014年8月に次いで2回目のため「Ⅱ」だが、今回は手賀沼近くにある我孫子東高校図書委員会の生徒が手がけた作品も目玉の一つ。2㍍四方の発泡スチロールのカンバスを使った「つまようじアート」2作品だ。

 

 

8色のポスターカラーで1本ずつ塗り分けたつまようじを発泡スチロールに刺してモザイク画のように描いた「カメレオン」と「ヒクイドリ」だ。合計25万8460本を使って半年がかりで完成させた。鈴木委員長が正月に高校生の作品を見て「発表の場を作ってあげよう」と参加を呼びかけた。

 

写真上:我孫子東高校図書委員会の生徒20人が制作した「つまようじアート」

 

 

 

期間中、鈴木委員長は「私が手掛けた40年間の色々な展覧会・イベントの歴史と裏話」(10月17日)、「これからの手賀沼に期待すること、役割」(同21日)とのテーマで講演した。自らの作家、作者との交友録を会場の作品に添えている。

 

 

写真:講演する鈴木昇・手賀沼アート・ウォーク実行委員長

 

 

「40年間で多くの出会いがあった。だいたいの作家と会っている。直に触れないと情熱が伝わってこない。皆さんにはこれだけ多くの作家、作者が地元にいることを知ってほしい」と力説した。入場料は1千円で高校生以下は無料。当日なら半券で何度でも再入場できる。期間中なら半額で再入場できるシステムも大勢に見てほしいからだ。

 

 

メニュー当初は4月開催の予定だった。コロナ禍の影響で会期や期間中のイベントも半減したという。が、大正期から多彩な作家、作者のジャンルを問わない作品が手賀沼の自然や東葛の風土とあいまって高い文化の香りが漂う、見応えある内容だった。

 

写真:案内板代わりの特大ポスター

 

 

 

(文・写真 Tokikazu)