ミュージアムINFO

6月

嘉納治五郎別荘跡地に記念像
愛でた手賀沼を眺め続ける

嘉納治五郎の像
――手賀沼を見下ろす我孫子市の天神山に、嘉納治五郎(1860~1938)の銅像が立った。建立を呼びかけた「我孫子の文化を守る会」(美崎大洋会長)の会員らが、4月に「除幕」した。かつての別荘地で、嘉納は「安美湖」と名づけて愛でた手賀沼を見つめるように立っている。

写真:建立関係者が除幕した嘉納の像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我孫子市の天神坂

手賀沼公園から我孫子市生涯学習センター「アビスタ」入り口前を通り、にぎやかな「手賀沼ふれあいライン」を渡る。右側の細い道に入ると一転、静かな住宅街になった。すぐ左側に「三樹荘」「嘉納治五郎別荘跡」の案内板がある。

 

写真:うっそうとした木々が石段を囲う天神坂

 

 

 

案内に従って左折すると石段があり「天神坂」という左カーブの上り坂。四十三段を登り切ると、右側に我孫子市が「天神山緑地」として保存する嘉納の別荘跡地。そのすぐ西側には嘉納の甥で思想家柳宗悦の別荘があった所だ。敷地に三本のシイの木があったことから嘉納が「三樹荘」と名づけた。

 

 

 

 

嘉納と我孫子市のつながりは、2019年10月の本欄「人と街の記憶」で記しているが、1911(明治44)年に土地を購入し、別荘「臨湖閣」を建てた。亡くなる直前まで訪れ、家族も1969(昭和44)年ごろまで住んでいたという。

 

 

手賀沼方面パネル2800平方㍍の跡地に建物は残っていない。嘉納が眺めていたであろう、当時の手賀沼方面の写真入り案内板、嘉納が講演した我孫子尋常小学校(現・我孫子市立我孫子第一小学校)に贈った2種類の書が飾られたあずま屋、季節の花々にベンチ……。意外と殺風景だったが、嘉納の像が建って主が戻ってきた感じか。

 

 

写真上:嘉納が当時見ていた手賀沼方面がパネルで紹介されている

 

 

嘉納治五郎別荘別荘跡地

写真上:別荘跡地は緑であふれている(左)、季節の花が像を囲んでいた(右)

 

 

90㌢四方で高さ80㌢の台座に高さ214㌢の像。講道館や筑波大学などゆかりの5カ所にあるものと同じだ。「嘉納が我孫子で過ごしたことを後世に伝え、残したい」。文化を守る会が2年掛かりで市民らに呼びかけ、450人から浄財が集まった。像の台座に寄付者名が刻まれている。

 

 

手賀沼を眺める飼おう治五郎の像

 

写真上:像は手賀沼を眺めるように立つ

 

守る会や市は地元の「新名所」として期待している。像の嘉納は移ろう季節の草花に囲まれ、宅地化が進んで今は遠くなった手賀沼を見つめたままだ。

 

 

嘉納治五郎の顔

 

写真:時を経た手賀沼を見て何を想う?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(文・写真 Tokikazu)

 

紫陽花と花菖蒲が真っ盛り
松戸・本土寺で続く「競演」

――松戸市平賀の長谷山(ちょうこくさん)本土寺が花の季節を迎えた。深緑の境内で紫陽花と花菖蒲が艶やかに「競演」し、見物人を楽しませている。

本土寺のあじさい

写真上:花菖蒲と紫陽花のツーショットが人気だ

 

 

 

本土寺は今から743年前の1277(建治3)年に開山した下総にある日蓮宗中心寺の一つ。「あじさい寺」「花の寺」として親しまれているが、お釈迦様が本佛となって住む「本土」に由来する寺名で、花は本佛に捧げるものだという。

 

写真:五重塔を背にいろんな表情を見せる紫陽花

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JR常磐線北小金駅北口から商店街を抜けて参道に入る。松や杉の古木、老木の並木が500㍍続く。沿道には店頭に「草だんご」ののぼり旗や農産物を並べる土産品店が並ぶ。

 

写真:仁王門前の参道にある土産物店

 

 

 

 

入り口となる朱塗りの仁王門をくぐると、緑あふれる桜、楓などの樹林が迎えてくれる。階段を下りた先にある受付で入園料500円(中学生以上)を払って境内に入った。

 

 

約10万平方㍍の境内にヤマアジサイやガクアジサイなど10種類以上、約1万株があるという。薄紫を中心に白っぽかったり、赤みがかったりで、行った日の空模様にもよるのかグラデーションが豊富だ。

 

写真左:「梅雨の花」も日差しに輝く

 

 

紫陽花

写真上:左右に花を広げた紫陽花

 

 

花菖蒲奥にある菖蒲池の花は数年前、スギナと雑草に覆われて枯れてしまった。しかし、今春、親株を植え換えたところ、見事に開花して復活した。白に紫、薄紫の花菖蒲と岸辺にせり出す紫陽花のコントラストがいい感じだ。

 

写真:復活した花菖蒲

 

トンボ

写真:花菖蒲で羽を休めるトンボ

 

 

蓮連

弁財天の池では白い睡蓮が輪になってキリっと咲いていた。

 

写真:花便りに加わった弁財天の睡蓮

 

 

 

 

 

 

(文・写真 Tokikazu)

 

田んぼで親子の歓声
梅雨晴れに1カ月遅れの田植え

――梅雨空が一転、青空が広がった6月20日、手賀沼北岸の我孫子市根戸新田の田んぼで、田植えがあった。周辺にある里山の保全活動を続けているNPO法人「手賀沼トラスト」の田んぼだ。子ども部会メンバーの親子が小さな田んぼに入り、昔ながらに手で植えた。
我孫子の田植え

写真上:苗を分け合いながら田植えする女児

 

いつもなら5月20日前後に田植えする。今年は1カ月遅れとなった。春先から我孫子市の整備工事があったためだ。細かく7区画あったのを4区画に分け、圃場が約10㌃から約15㌃に広がったという。

 

田植え

 

写真上:畦で作業の説明を受ける親子連れ



手賀沼トラスト 工事に合わせて種を植え、苗を育てる作業も1カ月遅らせたが、高温が続いたせいで苗の育ちが早かった。例年15㌢ほどの苗を植えるが、みるみる30㌢ほどになり、一般会員が一足早く別の区画にウルチ米やモチ米など数品種を植え込み、子ども部会の作業に合わせて捕植した。

写真左:膝下まで浸かっての補植作業

 

 

 

畔に集まった子どもたちは、メンバーから手ほどきを受け、父母と一緒に田んぼに入った。苗をつかんだ小さな手を水の中に突っ込んで植える。足元がゆるいため、バランスを崩して転んだり、ついでに水遊びしたり。小さな歓声が何度も上がった。小学5年の男児は「足元は悪かったけど、水は気持ちよかった」。

 

 

 

写真:真剣な表情のちびっ子(左)、長く伸びた苗を植え込む会員(右)

 

 

子どもたちの様子を見守っていた手賀沼トラスト事務局長の富沢崇さんは「子どもたちや、一緒の若いパパ、ママが地域のお年寄りと交流しながら、我孫子の自然を楽しみ、守っていってほしい」と話した。
草取りなどの手入れを続けながら、田んぼに案山子が並ぶ7月末~8月の「案山子まつり」などを実施する。いつもなら収穫は9月中旬だが、今年は同下旬になりそうだ、という。

 

手賀沼の田植え

 

写真:田植えが終わった田んぼに夏の雲が浮かんでいた

 

 

 

(文・写真 Tokikazu)