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2月

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我孫子市文化財展
「薬師三尊・十二神将像修復完了特別展」

 


開 催:2020年2月15日(土)~18日(火)
場 所:我孫子市民プラザ
主 催:我孫子市教育委員会

 

住民が守る薬師三尊と十二神将
修復終えた15仏像

――温和だったり、目を吊り上げて怒っているようだったり。我孫子市民プラザであった同市文化財展「薬師三尊・十二神将像修復完了特別展」。会場の中央にずらりと並んだ15の仏像は様々な表情だった。
薬師三尊像

写真上:修復完了後、初めて一堂で公開された薬師三尊像と十二神将像

 

 

薬師三尊は人々の病苦を癒すとされる薬師如来と、薬師如来を補佐し、脇侍として、お日様や月の明かりで照らす日光菩薩、月光(がっこう)菩薩の三尊の総称。十二神将は薬師如来の分身で、干支の子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥を表わす12の像だ。

 

 

写真上:(左から)月光菩薩像、薬師如来像、日光菩薩像 

 

比較的やさしい表情の三尊に対し、十二神将は槍や刀の武器などを手に、キッとした怖めの顔立ちだ。十二支にあやかって各神将の頭にはネズミ、ウシ、トラなど動物のミニ飾りが付いている。薬師三尊と十二神将12体そろっての保存は大変貴重とされ、2006(平成18)年に我孫子市文化財に指定された。

 

 

写真上:辰神像の頭に付いている「龍」の飾り。象のように鼻が長いが、利根川流域の神社仏閣の一般的な「龍」という

 

 

仏像は普段、JR成田線湖北駅近くの住宅街にある中里薬師堂に安置され、地区住民が守ってきた。毎年2月11日に御開帳されるが、江戸後期の作品とされ、絵の具が剥げ、金具類などの傷みが激しくなった。地区住民は15(平成27)年度から奉賛会をつくって一般に広く寄付を募り、市の補助を受けながら修復を始めた。

 

 

写真上:薬師三尊像と十二神将像が安置されている我孫子市の中里薬師堂

 

 

 

茨城県の仏師に頼み、年に3体、5年計画の作業が昨年12月に終わった。薬師三尊と十二神将をお堂で2月11日に御開帳。同15~18日に一挙公開され、会場には大勢の市民らが見学に訪れた。

 

 

最終の今年度の修復で亥(い)神像の胎内から1853(嘉永6)年の修理記録を示す古文書が出てきた。茨城県の仏師によると、塗り重ねの状況などから制作後、少なくても2回目の修復だったとみられる。

写真左:胎内から古文書が見つかった亥神像 
写真下:今回の修復作業で見つかった修復記録を示す古文書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

像の制作時期は専門家の見立てで江戸後期とされてきた。我孫子市教育委員会文化・スポーツ課の辻史郎さんは「通常40~50年経って修理するので、古文書で神将像が作られた年代が1700年半ばと考えられる。神将像より前に作られる薬師三尊はもっと古いことになる」と古文書発見が制作年代を伺う発見につながったことを強調した。

 


写真:展示された仏像を説明する我孫子市教育委員会文化・スポーツ課の辻史郎さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修復作業を終えた協賛会の小池正夫会長は「今や市民の財産だが、我々の心の拠り所であり、眼病を癒す信仰も集めてきた。先祖が残してくれた貴重な宝物として大事にしていきたい」という。

 

4日間の展示を終えた仏像はお堂に帰り、薬師三尊は厨子に、十二神将も両脇に6体ずつ安置。「秘仏」となり、来年の2月11日の御開帳まで拝観できない。運が良ければ、地区住民が風入れや掃除等の日に会えるかもしれない、という。

 

 

(文・写真 Tokikazu)