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1月

     1月

手賀沼の初日の出は?
晴天の初詣客でにぎわう布施弁天

場所:我孫子市 手賀大橋、 柏市布施布施弁天


手賀沼沿いにコミミズク
野鳥ファンでにぎわう田園

 

 

場所:手賀沼北岸東側

 

無形文化財の「おびしゃ」
柏、流山で一味違う伝統行事

 

 

場所:柏市船戸(船戸会館)  、流山市鰭ヶ崎(鰭ヶ崎雷神社)

 

寒風に耐える早春の花々
冬景色に淡い色どり

 

 

場所:柏市布施(あけぼの山農業公園) 

手賀沼の初日の出は?
晴天の初詣客でにぎわう布施弁天

手賀沼の初日の出

――柏、我孫子両市にまたがる手賀沼の元旦。手賀沼公園や沼をまたぐ手賀大橋で初日の出を拝もうと、防寒着に身を包んだ家族連れやカップルら大勢が集まった。薄暗い中、だんだん白む東の空を見つめているうちに、午前6時49分、日の出の時間を迎えた。


が、沼越しに見える東の空には分厚い雲がかかる。「まだか?」「きょうはだめ?」。誰彼となくささやく。東の雲の隙間が明るくなってきたが、目当てのお日様は鳴りを潜めたままだ。


午前7時を過ぎると、手賀大橋では欄干脇に張り付く見物人を尻目に、ぞろぞろ歩きながら帰り始めるグループが出始めた。ほんの数分で橋上の人だかりが散り散りになった。

 


日の出時刻から約30分後。雲の切れ間からキラリと輝くお日様の光が漏れだした。これを合図にしたように、だんだん天気が回復し、昼前には青空が広がった。

 

写真上:日の出時刻から30分たった雲の隙間からの日差し。ドーム天井がシンボル「水の館」のシルエットをつくった

 

 

 

「布施の弁天様」と親しまれる柏市の布施弁天東海寺には、晴天に誘われたように初詣客が繰り出した。本堂には大小三つの鐘が吊るされているが、中央にある一番大きな鐘を鳴らそうと、例年、長蛇の列ができる。

 

 

写真:力を合わせて鐘を鳴らすお参りのカップル

 

 

 

 

 

 

 

 

今年も本堂までの参道に50段ある石段下のバス停付近から長い列ができていた。石段を登って千葉県の重要文化財に指定されている二階建て瓦葺の楼門をくぐって、さらに石段を登って本堂を目指す。

 

 

写真:にぎわう本堂前の境内

 

 

30分近くでにぎやかな境内に着いた。初詣客は本堂にある大小の鐘を思い思いに鳴らしてお参りした後、伝統の獅子舞を楽しんだり、お守りを頂いたりしていた。

 

 

布施弁天

 

写真上:お参りの後、露店を楽しむ初詣客(左)、舞が終わった「獅子」と戯れるちびっ子(右)

 

 

筆者も巫女さんから破魔矢とお守りを頂いた。今年の恵方は「西南西」だそうだ。自宅に帰って破魔矢を「西南西」方向に向けて飾った。

 

 

東京五輪がある2020(令和2)年が始まった。さて、今年はどんな年になるのだろうか。

 

(文・写真 Tokikazu)

 

手賀沼沿いにコミミズク
野鳥ファンでにぎわう田園

――柏、我孫子両市にまたがる手賀沼北岸東側にフクロウの仲間、コミミズクが飛来した。暮れから複数羽やって来たらしく、夕方近くの田んぼで低空飛行を続けている。


コミミズク

写真上:田起こし前の水田で、えさを探して低空飛行を続けるコミミズク

 

丸顔の愛らしい姿が超人気で、1月8日付の毎日新聞千葉版で「バードウオッチャーの『冬の草原のアイドル』」と紹介された。連日、カメラを抱えた野鳥ファンが列をなしている。

 

 

コミミズクはシベリアから渡ってくる冬鳥で、全国の湿原やヨシ原、農耕地などにいる。以前、茨城県坂東市の河川敷や埼玉県川島町の休耕田などに飛来して話題になった。

 

 

 

我孫子野鳥を守る会によると、手賀沼でも観察例はあるが、夜行性のため、日中はあまり活動しないので見つけにくいという。今回のように安定して観察できるのは珍しいが、田起こし前の田んぼにエサとなるネズミが多いため、とみる。

 

写真:水田に向けてカメラを構える野鳥ファン

 

 

 

噂を聞いて1月のある夕方、現地に行った。平日にも関わらず水田脇にマイカーが並び、畦道や用水路の橋上で、長い望遠レンズを付けた重装備のカメラの放列が出来ていた。そばで双眼鏡を覗きながら「今日はまだか」「飛んでいるのが見える?」などといった会話が聞こえた。

 

写真:用水路の橋上にできたカメラの放列

 

 

 

列から離れた畦道を歩いていると、突然、ゆっくり羽ばたきながら飛んでくるコミミズクに遭遇した。慌てて手にしていた300ミリ望遠レンズを付けたカメラで連写した。ほんの一瞬だった。コミミズクは辺り一帯を飛び回り、遠くの杭にとまった。そのままじっとしているうちに夕暮れが迫った。

 

帰る途中の田んぼから西方向を見ると、送電線の先に夕映えの富士が姿を見せていた。

 

手賀沼の夕映えの富士山

写真:コミミズクが飛び交う近くの水田から姿を見せた夕映えの富士

 

 

(文・写真 Tokikazu)

 

無形文化財の「おびしゃ」
柏、流山で一味違う伝統行事

おびしゃ

――小雪が舞った肌寒い前日から一転、青空が広がった1月19日の日曜。柏、流山両市で年頭恒例の「おびしゃ」があった。五穀豊穣、無病息災を祈り、地元神社の氏子が江戸時代から綿々と受け継いできた伝統行事。いずれも市指定の無形民俗文化財だが、行事の様は違っていた。

写真上:二人一組になって弓を射る七福神と袴姿の氏子 / 鰭ヶ崎


「バーン、バンバン」。午後1時、柏市船戸に上がった花火を合図に船戸会館で「船戸のおびしゃ」が始まった。神事の後、あいさつした地元天満宮の氏子総代代表、岡本正弘さん(76)が「1620年から始まったとされる『おびしゃ』は今年400年を迎える。紆余曲折はあったが、先人の思いが受け継がれている」と誇らしげに語った。

 

写真上:菅原道真の掛け軸が飾られた祭壇で、神職の祝詞の後、氏子代表らが玉串を捧げた / 船戸



続く祝宴の余興で披露される出し物が面白い。会館の大広間に設けられた舞台から賑やかなお囃子に乗って裃姿の旦那、槍を持った奴らの行列が登場する「三助踊り」。「ハー、ヨーイ、ヨイ」の掛け声で宴席を回る。奴の三助がピエロのようにおどけた化粧をしている。手に沢庵と草履を持ち、これまた白粉を付けて無表情の旦那の回りをご機嫌とりのように踊りまわる姿が笑いを誘った。

写真上:「三助踊り」の一場面。奴の三助がひょうきんな格好、姿で裃姿の旦那をおだてるような、からかうような踊りを見せる / 船戸

 

 

続いて舞台は烏帽子姿の女性の登場で一気に厳かな雰囲気に変わった。「三番叟」(さんばそう)。若い女性一人が足で拍子をとり、長い袖を揺らしながら優雅な舞を披露。最後はおかめ、ひょっとこ6人による賑やかでユーモラスな「おかめ踊り」となった。笛、太鼓、鉦のお囃子とともに笑い声が外まで響いた。

 

写真:女性一人が舞う「三番叟」。厳かにして優雅な雰囲気が漂う / 船戸

 

 

 

 

 

 

 

船戸会館から南へ約10キロ離れた流山市鰭ヶ崎(ひれがさき)の雷(いかづち)神社では午後3時前、七福神に扮した氏子が境内に勢ぞろいした。「鰭ヶ崎おびしゃ行事」の始まりだ。拝殿で神事を営んだ後、ここでは七福神や裃姿の氏子が境内で弓を引いた。

 

写真:「おびしゃ」の出番を待つ七福神姿の氏子 / 鰭ヶ崎

 

 

拝殿から鳥居側に約6メートル離れた場所に直径0.4メートルの赤鬼、青鬼二つの的が立っている。これを氏子手作りの弓矢で狙うが、弓を引いた直後に矢が外れたり、射っても的を大きく外したりで、なかなか難しそうだ。「バシッ」という音で命中すると、大勢の見物人から「オー」との歓声とともに拍手が沸き上がった。

 

写真:神社の拝殿前から「赤鬼」「青鬼」の的をめがけるが…… / 鰭ヶ崎

 

 

 

おびしゃ

 

写真上:的に狙いを絞って弓を構える氏子。なかなか当たらない(左)、弓射を終えた七福神の氏子は「送り込み」として町内を練り歩いた(右) / 鰭ヶ崎

 

 

 

昨年、企画展「オビシャはつづくよ400年~年のはじめの村まつり」を開いた千葉県立関宿城博物館(野田市)によると、「おびしゃ」は「御歩射」「御奉射」「御奉謝」などと表記される。文献上からは室町時代頃から武家の行事として現れるが、庶民に広がったのは江戸時代になってかららしい。

 

 

今は千葉県をはじめ、利根川、江戸川、荒川流域を中心に関東で実施されている。流山のように弓射を伴うもの、柏のように伴わないものなど様々で、千葉県では弓を射ない「おびしゃ」が6割だという。

 

 

流山も享保年間(1716~36年)から続くとされ、400~300年の間、地区ごとに姿、形を変えて今に伝えられている。両市とも複数の氏子がつくる「頭屋」とも「当屋」とも称される1年交代の当番が仕切る。形態は違っても代々続く伝統行事を楽しんでいる様子は共通だ。

 

(文・写真 Tokikazu)

寒風に耐える早春の花々
冬景色に淡い色どり

あけぼの山の老梅

――2月4日は暦の上で春の訪れを告げる「立春」。暖冬といわれながらも寒い日が続き、春が待ち遠しいが、植物の世界では着実に春が来ている。

写真上:満開のロウバイ。訪れる市民らを楽しませている/あけぼの山農業公園


四季の草花が市民を楽しませている柏市のあけぼの山農業公園を1月下旬に訪れた。園路にあるロウバイ(蝋梅)が満開だった。

文字通り蝋(ろう)で出来たような半透明の黄色い花が陽光の中で、甘い香りをふりまき、輝いていた。カメラを抱えた花好きの格好の被写体になっている。

 

園内の梅林では枯れた枝を切り取る剪定作業が続いていた。日だまりの白梅は咲き始め、紅梅も芽を膨らませている。別の日に偶然訪れた松戸市の東漸寺境内にある紅梅は早くも六分咲きの感があった。

 

おびしゃ

写真上:咲き始めた白梅/あけぼの山農業公園(左)、赤い花がまぶしい紅梅/松戸市の東漸寺境内(右)

 

 

チューリップ、ヒマワリ、コスモスと季節によって植え替えられる風車前の大広場。今の時期、何株あるのだろうか、カラフルなビオラが辺り一面に植えられていた。広場の隅、駐車場側には東京五輪の年とあって「五つの輪」を描くように植えられていた。


写真下:風車前の大広場一面に植えられたビオラ/あけぼの山農業公園

 

あけぼの山のビオラ

 

 

風車脇の草地では黄色のタンポポが一輪、また一輪とひっそり花を咲かせていた。

 

写真:寒風に耐えるよう短い茎で花を咲かせていたタンポポ/あけぼの山農業公園

 

 

 

 

 

♪春は名のみの 風の寒さや
 谷の鶯(うぐいす) 歌は思えど
 時にあらずと 声も立てず
 時にあらずと 声も立てず

吉丸一昌作詞、中田章作曲の『早春賦』(そうしゅんふ)から

 

(文・写真 Tokikazu)