「さかサイ」に、会いにおいでよ

さかサイ君(柏市逆井 逆井商店会)

 

取材・文 津島めぐみ

   さかサイ君

柏市 逆井商店会

●公式ブログ
(逆井商店会青年部ブログ)

http://ameblo.jp/sakasai-1/ 

●公式Twitter

https://twitter.com/sakasaikun

●Youtube
 さかサイ君チャンネル

https://www.youtube.com/user/SAKASAIKUN 

 

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――『逆井(さかさい)だから、サイ君だ』。
逆井商店会はダジャレ好きな、カタくない商店会。地域のイベントで高齢化がすすむなか、若い人たちや子どもたちにも喜んでもらえるようにしていきたい――そんな思いから2006年の夏、商店会のハッピを着て、お中元セールのガラガラ抽選会で初登場した「さかサイ」君。さまざまなイベントに「出没」するうち、あれよあれよという間に知名度は上がり、いつしか町いちばんの人気者に。「サイだからしゃべれない」けど、スキーやボウリング、和太鼓に盆踊りだってお手の物。グッズの売れ行きも好調で、中でも人気の「さかサイダー」は、町じゅうで売り上げを伸ばしている。
餅つきに夏祭りにと町で引っ張りだこだったサイ君。2009年には柏市の地域キャラクターとして市長の公認を受けて、特別住民票を授与されているほか、2014年には柏市消防局「サイ害ゼロ」PRのメインキャラクターとなり、出初式や防災フェスタにも参加するようになった。
「ゆるキャラ」とは思えないほどアクティブに活動を続けるサイ君。一体、日々、何を目指して頑張っているのだろうか? 今回は「さかサイ君プロジェクト」担当副会長の桑原健さんに、サイ君の秘められた役割と、これまで、そしてこれからのサイ君の活動についてうかがった。

*敬称は省略させていただきます 。
 

「逆井だからサイ」ダジャレから生まれた人気者

逆井商店会のキャラクターからスタートして、今ではすっかり、逆井のみならず柏市の人気者になっている「さかサイ君」ですが、初めはどのようにして誕生したんでしょうか。あらためてお聞かせください。

桑原 サイ君は、もともと柏南部地区にあたる逆井・藤心で地域活性化を目指して生まれたキャラクターです。サイ君が登場するまで、逆井商店会では、「地域のイベントにやってくるのは大人やお年寄りばかりで、年々、高齢化している。何とかして若い人や子どもを呼べるようにしたい」と、ずっと話し合っていたんです。商店会に、そして逆井に、もっと若い人たちや、子どもを呼んで、盛り上げたい。そこで、子どもたちに喜んでもらえる、親しみやすいキャラクターに来てもらおうということになりました。
そして「じゃあ逆井(さかさい)だから、サイでしょ」というダジャレで(笑)「サイ」を呼んでみることにしたんです。
そのとき最初にサイ君がやって来たイベントが、商店会でやったお中元セールの「ガラガラ抽選会」だったんです。抽選会って、よくお店の人たちがハッピを着ているでしょう? そのとき着ていたハッピが、サイ君の定番コスチュームになった、というわけです。ハッピ自体は、もともと昔から商店会で使っていたものです。

さかサイ君最初は、ダジャレと偶然から、あのスタイルが出来上がったわけですね。2006年のガラガラ抽選会で、初めて逆井にやって来たサイ君ですが、その後も町のさまざまなイベントにやって来ていますね。町の人たちの反応はいかがでしたか?

桑原 町の人たちは、年齢に関係なく、ほとんど普通に受け入れてくれましたね。むしろ、サイ君がいても特別感がない、サイ君がいて当たり前、というくらい。今では、道行く人々はもちろん、信号を待っているバスやタクシーの運転手さんも、歩いているサイ君に手を振ってくれることがあります。サイ君が事務局(※)から出勤するときも、お客さんたちは普通のことのように受け入れて、喜んでくれます。
(※事務局:桑原さんの経営する美容室hair ROOK)

子どもたちに親しみをもってもらいたい、という願いがあったようですが、サイ君は普段、子どもたちとはどんな風に接しているんでしょう?

桑原 イベントにキャラクターが来ていても、人がいっぱいでなかなか近づけないから、ずーっと遠くで見ている子って、いますよね。本当は自分も遊びたいのに。サイ君は、そういう子の視線にも気づいて、手まねきして呼んで、ふれあうようにしています。ずっと待っているのに、ふれあえない子たちがいるのはもったいないからって、休憩時間返上で活動しています。
いろんなキャラクターが集合するショーなどでも、キャラクターが出揃ってステージに立っている時間は「サブ」だと考えていて、会場で子どもたちと触れ合う時間こそ「メイン」だと考えています。じかに子どもたちと触れ合える時間は限られているので、そちらを大事にするあまり、サイ君だけステージに間に合わない、なんてこともあります(笑)

サイ君は、本当に子どもたちが大好きなんですね。そこが、サイ君の人気の大きな秘密なのでしょうね。
 

全国はカシワニに、柏市内はさかサイ君に

かしわにと柏のキャラクターといえば「かしわインフォメーションセンター」の「カシワニ」もいますよね。カシワニとサイ君って、どういう関係なんでしょうか?

桑原  この間、Wikipediaには、カシワニとサイ君で「柏の二枚看板」だと書いてありましたね。カシワニは柏市のオフィシャル・キャラクターみたいなものですよね。「日本中を回って、全国での知名度を上げる」のが、カシワニだとすれば、「市内にいろんな人を呼びこんで、柏市の中で活動する」のが、さかサイ君。そういう感じです。

 

 

 

かしわにとさかサイ君なるほど、役割分担がされているんですね。一緒に映っている写真も、たくさんありますね。

桑原  カシワニとサイ君は仲が良くて、よく一緒に遊んでいるみたいですよ(笑)。サイ君には、全国での知名度は必要ないんです。もともと商店会のキャラクターで、逆井に、柏市内に、人を呼ぶためのキャラクターです。
逆井は、ベッドタウンですから、人が集まるきっかけが少ないんですね。そこで「さかサイ君がいるから、逆井に行く」という流れを作りたいと考えた。実際、県外からもお客さんが来てくれるようになりました。

さかサイ君に会うことを目的に、市内へ足を運んでもらう、というのがさかサイ君の大きな役割なんですね。そういえば、さかサイ君はグッズがたくさんありますよね。事務局(美容室)の入り口にも、ずらっと並んでいましたが、一体どれくらい作られているんでしょうか?
カンバッチ

桑原  今までに、だいたい30種類くらい作ってきました。あまり制作費用をかけず、値段も高くならないようにしています。誰でも手に取りやすい、200〜300円前後の商品が中心です。

写真左:さかサイ君の缶バッジ。少量ずつ作れるので制作しやすく、お手頃価格。

 

サイダー

 

 

 

 

 

 

 

写真:「さかサイ君」の缶バッジが並ぶ事務局入口。市制60周年記念のTシャツには、カシワニのシルエットも

 

 
グッズの中でも「さかサイダー」(写真)は、柏駅の周りでもよく見かけますね。なぜサイダーを作ることにしたんでしょうか?

サイダー桑原  最初、活動のメインが夏祭りだったので、夏祭りで売れるものといえばサイダーだろう、という発想です。これも名前はダジャレで、「『サイ』ダー」だから「さかサイダー」ということなんですが、飲食店さんやスリーエフさんで販売していただいて、これまでに2万本ほど売れています。

写真:逆井にあるスリーエフで販売中されている「さかサイダー」。

 

2万本というのはすごい数字ですね。このサイダーは、何か特別なサイダーなんですか?

桑原  中野にある「東京飲料」さんの「ラムネ屋さんのサイダー」のラベルの上から、オリジナルのサイ君のラベルを貼っています。中身は――普通のサイダーです(笑)。毎年、中野から運んでもらっているんですよ。
例えば、1からサイダーを作って、瓶も作って、王冠もラベルも作って・・・という方法でグッズを製作すると、予算がかかる上に、値段も高くしなきゃいけませんよね。商店会のプロジェクトですから、採算は取れるようにしなきゃいけない。だったら、出来上がっているラムネに、ラベルだけ貼らせてもらって、安くして、たくさんの人に買ってもらったほうがいい、と考えたんです。

 

サイダーを売ることが目的ではなく、さかサイ君に親しんでもらって、逆井に興味を持ってもらうためにサイダーを売る、というわけですね。
 

さかサイ君のチャレンジ ― 和太鼓から消防まで

さかサイ君(サイ君)は、いわゆる普通の「ゆるキャラ」とは違って、自分ですごくいろいろな活動にチャレンジしていますよね。あらためてサイ君の特徴を教えてもらえますか?

桑原  まず、サイ君は、声を出すことができません。なぜなら、サイだから(笑)。言葉でコミュニケーションしたいときには「おえかき先生」のようなボードを使って、筆談しています。
文字は書けるので、サインも受け付けます。2013年の7月、サイ君のぬいぐるみ「サイぐるみ」が発売されたときは、「タイトーステーション柏店」さんでサイン会をやりました。その前の6月には、製作したTAITOさんの本社を、なんとアポなしで電撃訪問しちゃったんですが、社員の皆さんは、とてもアットホームに迎えてくれました。
この「サイぐるみ」は青森から大阪まで、17店舗のゲームセンターのクレーンゲームに入って、1年で完売してしまいました。実は、ふなっしーさんよりも早く、ぬいぐるみになっているんですよ(笑)。

完売とは、大人気ですね。ところで、さかサイ君がスキーをやっている写真を見たことがありますが、あれは実際に、スキー場を滑っているんですか?

桑原  はい、那須塩原を表敬訪問して、ハンターマウンテンに行ったときのことですね。スキー中の動画も残っていますよ(笑)。
(→動画URL https://www.youtube.com/watch?v=f29rC1X3IKM
和太鼓あと、お祭りでは和太鼓も演奏します。さかサイ君のオリジナル和太鼓がありますし、「さかサイ君・△・音頭」という曲もあります。サイ君が、踊りをレクチャーしている動画もありますよ。

スキーから和太鼓まで、大活躍ですね。それも、サイ君の大きな魅力になっているんでしょうね。
そして2014年からは、柏市消防局のメインキャラクターにもなっている。消防服も似合っていますね。

消防士さかサイくん桑原  当時、柏市の秘書広報課にいらっしゃった方が、とてもノリが良い人なのですが、消防局から出向してらしたんです。そのご縁から、サイ君が『サイ害ゼロ』のPRを担当するようになりました。夏は祭りや市内のイベント、オフシーズンには消防局で消防フェスタや救急フェスタ、ふれあいコンサート、豆まき、出初式などに出演しています。

 

被災者支援も「サイ」の力で!

「災害」といえば、2011年3月11日に発生した東日本大震災のとき、さかサイ君のブログには、災害関係の情報も書かれていましたね。

桑原  震災の直後は、被害が深刻だったので、サイ君には出ないでもらって、避難所の情報や、避難所にいる人へ向けた情報を発信していました。Twitterを始めたのはちょうど震災の直前で、輪番停電の地域発表などをしていました。ある程度、事態が落ち着いてきてからは、あまりに暗いニュースばかり流れるので、ほっこりするような話題や、震災とは関係ないことを発信するようにしていたようです。ただ、関係ないことを発信すると「不謹慎」とも言われかねないような状況でしたから、いろいろ苦労したみたいですね。

東日本大震災に関係したチャリティ・イベントなどにも出演することはあったんでしょうか?

募金BOX桑原  3月26日に、酒井根幼稚園のチャリティ・バザーに呼ばれました。これが震災後初のイベント参加でしたね。同じ月にボーイスカウト(柏7団)の募金にもマスコットとして行きました。ただ、サイ君は「キャラクターがただ道に立って、市民のみなさんに募金をお願いばかりしていていいのか?市民の皆さんだって、自分で働いたお金を募金してくれている。だったら自分も、働いて寄付すればいいじゃないか!」という考えにいたりまして、チャリティイベントや募金活動だけでなく、賛同してくださった店舗等で自らが働いて得たアルバイト収入を、そのまま全部、被災地に寄付しました。 ちなみに募金については、現在も、商店会のいろんなお店に、サイ君の描かれた募金箱を設置しています。

写真上:各所に設置された、東日本大震災被災者支援のための募金箱

 

「自分で働いて寄付する」。確かにキャラクターとしては珍しいですね。ユニークなやり方ですが、他のところでも広がっていくといいですね。
 

長く愛されつづけるキャラクターとして

サイ君は、お祭りなどのイベントに、消防局のお仕事や被災地支援にと、これまでさまざまな活動をしてきていますね。最後に、これから先の「さかサイ君プロジェクト」の目標を教えてもらえますか?

桑原  この「さかサイ君プロジェクト」のキーワードは「継続」と「定着」だと考えています。今のまま、10年、20年と、無理なく長く続けていくのが一番の目標です。例えば、グッズを作るときにも、売れ残っても深刻な赤字にならないようにして、次につなげられるようにする。背伸びしないで、謙虚に堅実に継続していくようにしたいですね。その上でサイ君には、新しい活動にどんどん挑戦していってほしいと思います。

挑戦も「継続」するわけですね。これからも柏市、そして全国から愛されるキャラクターであり続け、逆井や柏市をどんどん盛り上げていってほしいと思います。今日はありがとうございました。サイ君にもよろしくお伝えください。

桑原  これからもサイ君と一緒に頑張っていきます。ありがとうございました。

さかサイ君とあいさいちゃん

写真:さかサイ君と、「奥様」の「あいサイちゃん」

(取材日:2016年3月10日・柏市逆井1-6-22『hair ROOK -るうく-』にて)