ミュージアムINFO

3月

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戸定邸再考―德川昭武
ひそかなお気に入り

日 程 2023年2月4日(土)~同5月28日(日)
場 所 松戸市戸定歴史館
松戸市松戸714-1
☎047-362-2050
主 催 松戸市戸定歴史館
入場料 戸定邸共通入館券一般
320円、高校・大学生160円、中学生以下無料


第5回ART CINQ(アール・サンク)展

日 程 2023年3月14日(火)~同26日(日)
場 所 さわやかちば県民プラザ
柏市柏の葉4-3-1
☎04-7140-8600
主 催 アトリエ KOBAYASHI
入場料 無料

早いぞ! 桜前線
名所、おなじみ露店も復活

取材日 2023年3月24日(金)
場 所 柏市、我孫子市、白井市

「幻の将軍」の余生
戸定歴史館で德川昭武展

 

――江戸幕府最後の将軍、德川慶喜(1837~1913)の弟で、最後の水戸藩主となった德川昭武(1853~1910)が松戸市の小高い丘に建てた戸定邸は国指定の重要文化財だ。

写真上:戸定邸入り口の河津桜は満開で見学者を迎えていた(3月3日撮影)

 

 

 

昭武が長年暮らした私邸。数多く残る調度品や昭武が撮った写真から昭武の暮らしぶりを紹介する「戸定邸再考―德川昭武 ひそかなお気に入り」展が松戸市戸定歴史館で開かれている。

 

 

松戸には德川家ゆかりの松龍寺、松戸神社があり、昭武が狩猟にもたびたび訪れた。戸定邸を建てたのは、幕末・維新後、水戸德川家の家督を親戚に譲り、身軽になった1884(明治17)年のことだ。

 

 

写真上:1884(明治17)年に完成した当時のままの姿をとどめる戸定邸

 

 

 

来客用の表座敷、家族や使用人用の奥座敷に離座敷など9棟が渡り廊下で結ばれた23部屋で、明治期の旧大名家屋敷の姿をとどめる。南側には6年かけて造られた庭園も見事だ。

 

 

写真上:客を迎える表座敷棟。南側に木々に囲まれた芝生の洋風庭園が広がる(左)、西側は富士山が眺められたというが、今は高層ビルなど全容は見えない(右)

 

 

 

「戸定邸の今の建築、景色を見て頂こうと調度品を最小限にし、邸内の生活用品などは当館が所蔵している。当館で歴史的な品物を観て、好奇心を満たし、昭武が住んだ当時をイメージして普段と違う見方で戸定邸を訪れてもらおう、というのが今回の趣旨です」と小川滋子学芸員。

 

 

写真上:展示項目別に「見出し」が貼り出された(左)、写真を説明する学芸員の小川滋子さん(右)

 

 

 

 

館内は展示資料の劣化を防ぐため、抑え気味の照明が落ち着いた雰囲気を醸し出している。「戸定邸を建てるまで」「德川昭武のお気に入り」「家族との日常」「季節のしつらい」の4テーマに分かれている。

 

 

写真上:史資料保護のため、照明が抑えられた会場

 

 

 

「お気に入り」ではブロンズ彫刻や大理石に彫ったライオンの飾り物、煙草盆にパイプといった愛用品が並んだ。戸定邸の外観や室内、娘たちや水戸德川家の家族写真などが飾られている。

 

 

写真上:1907(明治40)年に昭武が撮影した「ふくわらい」で遊ぶ子どもたち(松戸市戸定歴史館提供)

 

 

 

「日常」では使われていた植木鉢の実物と写真、「ふくわらい」で遊ぶ娘たち、ウサギの焼き物が置かれた「雪中の松」、慶喜が撮った表座敷の床の間、離座敷の写真も展示された。

 

 

写真上:1906(明治39)年、昭武が写した旧水戸城三階櫓は現存しない(左)、1908(明治41)年、德川昭武撮影の「雪中の松」。ウサギの置物が添えられている(松戸市戸定歴史館提供)

 

 

 

昭武が残した写真は1500枚以上とされる。今回は展示されていないが、明治期の松戸の景色などもかなり残っており、当時の町並みを知る貴重な資料になっている。薬液の調合メモなども残っていて、現像、焼き付けも自分で手掛けていたようだ。

 

 

写真上:德川慶喜が1898(明治31)年に撮影した戸定邸表座敷の床の間(松戸市戸定歴史館提供)(左)、今の床の間(右)

 

 

 

昭武は水戸德川家の9代藩主、德川斉昭(1800~1860)の18男。生まれた1853(嘉永6)年は、黒船軍団を率いるペリーが浦賀(今の神奈川県横須賀市久里浜)に来航して江戸幕府に開国を迫った年だ。幕末・維新の真っただ中で育った。

 

 

10代前半の1864(元治元)年に起きた尊王攘夷派の水戸藩士による「天狗党の乱」、長州藩と幕府派が戦った「蛤御門の変」(禁門の変)で一軍を率いて出陣したという。これで才を見いだした慶喜は昭武を自身の後継者とし、将軍家に招き入れ、フランス・パリの万国博覧会(1867年)に名代として派遣し、終了後の留学も指示した。

 

 

写真上:フランス・パリでの万国博覧会に派遣される前年に写された昭武(左)、後年の昭武(右)

 

 

 

次の指導者として昭武に外国で研鑽してほしいとの思いもあったのだろう。渡航にはのちに「近代日本の父」とも呼ばれる渋沢栄一(1840~1931)らも同行している。昭武は「プリンス・トクガワ」と紹介され、各国の要人と積極的に交流した。

 

 

写真上:昭武と戸定邸の年表を記したパネル

 

 

 

2年後のパリ滞在中、幕府が倒れ、薩摩、長州両藩中心の新政府からの命で帰国した。幕府の消滅とともに「幻の将軍」となり、水戸藩主に就くも廃藩置県でその藩も失った。

 

 

一時は陸軍の教官を務めたが、新政府に留学経験を買われて米・フィラデルフィア万博(1876年)に派遣された。その後は自分の判断で再びフランスに渡って5年間過ごし、帰国後、明治天皇に使える仕事をした。

 

 

小川学芸員は「江戸幕府から明治政府になって昭武の置かれている立場が大きく変わった。自分の立場を理解しつつも犠牲にせず、自分の意志でフランスに再留学する。柔軟性のある好奇心旺盛な若者だった。戸定邸では家族との時間を持ったり、写真を楽しんだりの様子がうかがえる」と解説した。

 

 

写真上:戸定邸の今昔を描いた写真(左)、古い写真と写真にある大小植木鉢の現物(右)

 

 

 

すぐ西側を流れる坂川の土手に慶喜が1905(明治38)年に撮った川の写真の記念碑が立っている。戸定邸にも多くの写真が残っていることから慶喜がたびたび昭武を訪ねてきたことがわかる。

 

 

歴史の大変革期の主役となった最後の将軍と「幻の将軍」。戸定邸は気の置けない兄弟にとって、共通の安らぎの場でもあったのだろう。

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

豊かな個性、多彩な画材
市民アートグループ5+1展

――水彩画に油絵、パステル画にアクリル画……。3月14日から柏市の「さわやかちば県民プラザ」で始まった「第5回ART CINQ展」。1階フロア、2階回廊の延べ770平方㍍(約230坪)のギャラリーいっぱいに多彩な画材による個性的な作品が飾られた。

 

 

写真上:作品を展示する6グループの会員、1階「県民ギャラリー」

 

 

 

ART(アール)は仏語で芸術・美術、CINQ(サンク)は五つの意味がある。野田市でアトリエを開くアートディレクター小林茂規さんから手ほどきを受ける柏、流山、野田市などの「ルーヴル会」「モーヴ・アート」「東彩会」「アート・イーグル」「ボヌール」の絵画5グループが集まった。

 

 

写真上:作品を展示する6グループの会員、2階の「回廊ギャラリー」

 

 

 

それに小林さんのアトリエに通う個人の「グループホワイト」を加えた総勢56人が一人1~3点の作品計161点を持ち寄った。山や田園、公園、街並みの風景に人物、静物、アニメ、デッサンと多種多様な作品が並んだ。

 

写真:会場入り口に掲示されたポスター

 

 

 

広い会場には4号の小さい作品から100号の大作まで様々だった。力を入れているのか、風景画が多い印象だったものの画材の違いによる手法、作風も楽しめて見応えがあった。

 

 

 

 

 

 

初日の3月14日は午前中、各グループの会員総出で入場客を迎える準備をした。1階フロアの県民ギャラリー、そこから階段を上がったところにある2階回廊ギャラリーで同時に飾り付けの作業。作品の高さをそろえる水平器を持ち込んで目の高さに合わせるなどの展示に苦心した。

 

 

写真上:準備作業の手を休めて作品に見入る会員

 

 

 

会場となった県民プラザで月2回の創作活動をする「ルーヴル会」の高橋道彰会長が同展の幹事役。油絵やアクリル画など色んな画材で楽しんでいるという。

 

 

今回は北海道の湖岸辺の「霧氷」(アクリル100号)、裸婦の「長い髪」(油絵30号)の2点を出品した。

 

 

写真上:「霧氷」(左)、「長い髪」(右)を出品した「ルーヴル会」の高橋道彰さん

 

 

 

高橋会長によると、2年に1回開催する合同展だが、順番でいくと本来なら昨年秋に開く予定だった。それがコロナの影響や会場の都合で延び延びになって今回になったという。

 

 

「全体的に前回よりサイズが大きくなり、作品のレベルも上がっているように思う。水彩画の上にアクリルを塗り重ねる手法もあって、色合いがきれいになり、構図もよくなってきた」という。

 

 

指導者の小林さんは「皆さんの力が入っているのがよくわかる。個性が豊かなので、その個性をどう作品に生かすか。デッサンがまだしっかりしていない面もある。勉強に時間がかかりそうだが、楽しみは先に延ばしましょう」といって笑った。

 

 

 

 

写真上:東條久夫さん(東彩会)の「秋・涸沢」(左)、佐久間静志さん(ルーヴル会)の「兼六園」

 

 

 

 

写真上:丸山隆太郎さん(モーヴ・アート)の「江戸川から望む富士」(左)、上原勇さん(ボヌール)の「森と川」(右)

 

 

 

写真上:小河原隆秀さん(グループホワイト)の「富士山」(左)、湯浅紘子さん(東彩会)の「イギリスの田舎」(右)

 

 

 

写真上:萬木弘子さん(東彩会)の「すかしゆり」(左)、山﨑孝子さん(アート・イーグル)の「デッサン」(右)

 

 

 

写真上:山崎喜平さん(モーヴ・アート)の「干物(ひもの)定食」(左)、佐喜川貞子さん(東彩会)の「ピンクのドレス」(右)

 

 

 

写真上:飯田仲子さん(アート・イーグル)の「夏」

 

 

(文・写真 佐々木和彦)

今年も早い桜前線
名所、おなじみの露店復活

 

――今年の桜は全国に先駆けて3月14日、東京で咲き出した。2020、21年に次いで観測史上、最速という。千葉県は気象庁の標準木がある銚子で、東京が満開になった同22日、平年より8日、去年より5日早い開花となった。

 

 

 

今年も早いな、と思いつつ、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で送られてくる我孫子市の市政情報を観ていたら同16日に「我孫子でも東京とほぼ同時に桜(ソメイヨシノ)が開花しました」との情報が写真とともに流れていた。

 

 

身近にある桜はまだまだと思っていたら、同19日の週から始まったポカポカ陽気で一気に開花した。同週末は小雨模様だが、それでも高めの気温が続き、我孫子市の手賀沼北岸にある桜並木が咲き始め、黄色に染まった菜の花畑と競演するようにコントラストを描き始めた。

 

 

写真上:桜の代名詞「ヨメイヨシノ」(左)、濃いピンクが愛らしい「サトザクラ」(右)

 

 

 

柏市手賀地区と接する白井市今井の田んぼを流れる用水路「金山落」(かなやまおとし)。この両側にある「今井の桜」も19日訪れた時は硬いつぼみだったのがウソのように花を咲かせていた。

 

 

写真上:隠れた「桜名所」と言われる「今井の桜」ファンは少なくない(白井市)

 

 

 

用水路の両岸2㌔にわたってヨメイヨシノなどが280本ある。露店も出ない、駐車場もないが、知る人ぞ知る桜名所になっている。

 

 

写真上:桜見物に訪れたマイカーによる季節限定の車列(白井市)

 

 

 

早咲きの花びらが川面に舞い落ちて「花筏」(はないかだ)のようになっている場所もあった。見物人は散歩するように静かに見て回ったり、カメラを構えたりしていた。

 

 

写真上:田園の用水路に張り出す「今井の桜」。水面に「花筏」もでき始めた(白井市)

 

 

 

柏市あけぼの山農業公園の高台にある「さくら山」はソメイヨシノ、ヤマザクラなどが350本ある「桜名所」だ。昨年まで「宴会自粛のお願い」といった看板が立っていた。

 

 

写真上:4年ぶりに復活した名所の露店が桜の季節を盛り上げる(柏市のあけぼの山農業公園高台のさくら山)

 

 

 

今年はコロナによる行動規制も緩和され、露店も4年ぶりに園内に軒を並べた。桜の下では家族連れやカップルがシートを広げて花見を楽しんでいた。

 

 

コロナ禍も4年目となり、徐々にいつもの季節を迎えようとしているようだ。

 

 

(文・写真 佐々木和彦)