驚きと喜びの炎を届けたい!

キャンドルアーティスト・金田文子さん

 

取材・文 津島めぐみ

   Atelier KANA


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キャンドルアート作品

――キャンドルアート。蝋をさまざまな色や形に造形したキャンドル、そして火を灯されたときの香りや炎の揺れ、溶けた姿なども含めたすべてが表現となる、一風変わった芸術だ。
夫の転勤で福岡から柏にやってきた金田文子さんは、ひょんなことからキャンドルアートに出会い、独創的な制作をはじめ、たった3年で柏市に教室を開くまでにいたった。
一体なぜキャンドルだったのか、なぜたった3年で教室を開くほどの情熱を持てたのか……。金田さんとキャンドルの出会いや、創作のうえで大事にしている「驚き」と「喜び」そしてインスピレーションの源泉などについて詳しくうかがった。

*敬称は省略させていただきます 。
 

出会ったのがキャンドルでよかった

「キャンドルアート」というのはちょっと珍しい芸術の分野だと思うのですが、金田さんは何がきっかけでキャンドルアートを志したのでしょう?

金田 5年ほど前に、知人から、柏にある某キャンドル教室のテレビ撮影で、エキストラ出演してほしい、と頼まれたんです。そのときが、キャンドルアートとの初めての出会いでした。
制作道具よく言うんですが、日本人にとって、いちばん身近なキャンドルといえば「仏壇のロウソク」ですよね。日本ではキャンドル文化があまり発展していません。木造住宅が多くて地震も頻繁にあるから、浸透しづらい。私にとっても同じでした。だからこそ、キャンドルアートに触れて「あ、ロウソクって形も色もこんなに変えられるものなんだ」ということを初めて知って、とても驚いたんです。それと、材料さえあれば、家庭にあるような道具で作れるということにも驚きました。IHヒーターとミルクパン、お菓子の型や竹串、アルミバットなどです。キャンドルアート専用のモールド(型)も存在しますが、それがなくても、料理用品でだいたい賄えるんですよ。

写真上:料理用品が並んだアトリエのテーブル

確かに、このアトリエに入った瞬間にも、まるでお料理教室みたいに見えました。面白いですね。しかし、それでインストラクターの資格まで取られたのは、なぜだったのでしょう?

金田 勢いですね(笑)。3年ほど前に中目黒の教室まで通って、3〜4ヶ月で一気にインストラクターの資格まで取ってしまいました。でも、そのときは教室を開くことまで考えていたわけではなくて「どうせやるなら、資格も全部取ろう」というだけの気持ちでした。
それが、地域のワークショップやイベントでキャンドルアートを教えるうちに、だんだん人から「教えて欲しい」というお声を頂けるようになって、今年(2017年)の4月21日にこうして教室をオープンすることになりました。でも、主人も娘も、まさか私がこれほどキャンドルアートに入れ込むとは思っていなかったみたいです。

ご家族にとっても驚きの出来事だったんですね。金田さんは、もともとキャンドルアート以外の「ものづくり」にも興味がおありだったんですか?

粒子状のキャンドル金田 洋裁、パッチワーク、編み物、トールペイント、それからお菓子やパン作りなど、一通りの「主婦の趣味」みたいなことは、やってきましたね。「手でものを作ること」は昔から好きでしたね。学生時代は、グラフィックデザインを学んでいたんですが、子どもの時からよく絵は描いていました。

写真左:粒子状にしたキャンドルを層にした作品

では、いろいろな「ものづくり」にご興味があった中で、なぜ金田さんにとってキャンドルアートが、こうして教室を開くほど大事な分野になったのでしょうか?キャンパスに描いたキャンドル

金田 さまざまな表現ができる芸術だからだと思います。何かを表現したい、と言う気持ちはそもそもあったんですが、キャンドルアートって、表現する方法が本当に沢山あるんです。立体にするのはもちろん、ワックス(蝋)を絵の具のように使って平面に絵を描くこともできる。色も香りも使う材料もいろいろある。具体的な表現も、抽象的な表現もできる。質感もさまざまです。ロウのとろりとした質感のものもあるし、ジェル状のぷるぷるとしたキャンドルもあれば、サンドアートのように、キャンドルをサラサラの粒子状にして表現することもできる。そして、火を灯すとまた別の表情になる。自分でキャンドルという表現を選んだと言うよりも、たまたま出会ったキャンドルというものが、そういう奥深いものだったからこそ、ここまでのめり込んだんだと思います。出会ったのが他でもないキャンドルで良かった、と思いますね。

写真右:絵の具のようにキャンバスに描いた作品

 

型にはまるのが嫌いだった少女時代

学生の頃はグラフィックデザインを学ばれたということですが、それより以前、子どもの頃のエピソードでご自分の創作理念に通じるようなものがあれば、聞かせて頂けますか?

金田  小さい頃から、型にはまるのが嫌いでしたね。カトリック系の幼稚園に通っていたので、お祈りの時間や、しゃべらないで静かに遊ぶという時間があったんですが、それを抜け出して、一緒に抜け出してきた男の子と遊んだこともあります(笑)。小・中・高ではさすがにもう抜け出すことはありませんでしたが。人と同じが嫌、という気持ちは、その頃からずっとあったような気がします。

幼稚園を抜け出しちゃったんですか(笑)。そんなに嫌だったんですね。

金田  それから、料理が好きな子どもでしたね。母と祖母が、あまり料理が得意ではなかったので、自分で外食先の食事を観察して「どうやって作るのかな」「何を使っているんだろう」と材料やレシピを考え、家で再現してみることがよくあったんです。キャンドルアートでも、リアリティを追及するもの・・・スイーツや丸太などを再現するキャンドルの場合は、よく資料を見て「いかに本物っぽくするか」を追求しているので、料理を再現した経験が生かされているのかもしれません。
また、料理も「見た目が大事」ですが「中身(味)を伴った見た目」じゃなきゃいけませんよね。キャンドルも、見た目は大事なんですが、灯すことを前提にする作品では、芯の長さや形をきちんと設計する必要があります。キャンドルを作ったり、もらったりしても「勿体ないから、飾るだけで火は付けない」という人は多いんです。私も、初めの頃はそうでした。でも、初めて自分の作ったキャンドルに火を入れてみたとき、炎のもつ「1/fのゆらぎ」のリズムにすごく癒されたんです。火をつけたときの美しさや、燃えた後に残った形の美しさも含めて楽しめる。そのためには中身(設計)が大事。「見た目も中身も大事」というところも、料理とキャンドルアートの共通点かもしれません。

 

「流行は自分が作るもの」

金田さんのキャンドル作りのアイディアの源泉は、どういったところにあるんでしょうか?

金田  学生時代に描いた絵のイメージや、好きだった画風が元になっていることが多いですね。たとえば私はゴールドやグリーンのデザインが好きだったのですが、キャンドル作品でもそういう配色のもの・・・シックな感じだけど、ポイントカラーがあってインパクトの出ているような作品が、自分としては好きです。
スイーツの作品また、リアリティが大事な作品では「いかに本物っぽくするか」に力を入れます。「えっ、これキャンドルなの?」と驚いてほしい。だから、パソコンで資料写真をとにかくたくさん見ますね。実際に見に行くこともあります。お店のイメージキャンドルを作るときも、お店に足を運んで雰囲気を知ってから作ります。本物がどんな風にできているのかを知らないと、キャンドルでも作れませんから。フルーツタルトのキャンドルを作っているときなんか、何十枚もずーっとタルトの写真を見ていたら、深夜に甘い物が食べたくなって、車でコンビニに行って買ってきたこともありました(笑)。

写真上:フルーツタルトを再現した作品

歯を再現した作品丸太を再現した作品

写真 左:歯を再現した作品、右:丸太を再現した作品 

そんなに熱中して研究するというのは、すごいエネルギーですね。他には何か、創作の刺激になるようなことはありますか?

金田  キャンドルのオーダー(制作注文)が入ると、それがきっかけで「自分がまだ作ったことのないもの」を作るので、いい研究材料になります。これまで作ったもので難しかったのは、薪のキャンドルやトロフィーのキャンドル。時間もかかったし、苦心しました。時間に追われるのは苦しいけれど、どうやったら再現できるかな、と考えていること自体は楽しい。「お待たせしているぶん、いいものを作ろう」と、やる気が出ますね。
それから教室で生徒さんたちがキャンドルを作っているのを見ていると、自分と全く違う色の使い方やデザインの仕方をするので、いつも刺激を受けています。本当は「先生」と言われるのは嫌で、キャンドルを作る「場」として一緒に共有したいんですよね。作りに来る方達からは、常に私も学んでいます。

 

オーダーや、教室での生徒さんとの交流でも新たな学びが生まれているんですね。他のアーティストさんの作品をご覧になることもありますか?

金田  instagramやTwitterで「いま流行しているキャンドル」の傾向は気にするようにしていますね。たとえば最近では、ボタニカルデザインと呼ばれる、ドライフラワーやプリザーブドフラワーを使ったデザインが流行った時期があるようです。でも、私自身は流行にはあまり振り回されないようにしています。流行は流行、と。これは私の信念なんですが、流行は、自分が作るものだと思うんですよね。これは学生時代に先生から「あなたたちが流行を作るのよ」と言われて以来、ずっと大事にし続けている考えです。キャンドルって、ある程度は「型」があるので、同じような物になりがちなんですが、私は、ただのマネはしたくないと思うんです。何か必ずアレンジして作りたい。既にある何かを取り入れつつも、いつも新しい物を目指そうと思っています。

喜びと驚きが何よりのご褒美

キャンドルアートをやっていて、一番やりがいを感じるのはどんなときですか?

金田  人に手にとってもらったときの表情ですね。納品したときに「ここまでやってくれたの?」という、喜びと驚きの表情を見られるのが一番嬉しいです。自己満足じゃなくて、他人に喜んでもらえるのが嬉しい。時間がないときは辛いですが、焦ってはいても、作るのは常に楽しくて、出来上がった瞬間は「よし!」と最高の気分になります。

それでは、キャンドルアートをやる上で、大事にされているのはどんなことでしょう?

金田  キャンドルアートって、資格をとるまでは、誰だって興味があればとれるんです。でも、アーティストとしてはそれは第一歩、出発点にすぎません。決まったやり方がある以上、どうしても真似をする部分はでてくるわけですが、他のアーティストさんを見ていても、その真似を「自分のものにしている」人と、そうでない人がいると思います。自分も、同じようなものを作っていても、そこからどこまで抜け出していけるかを大切にしていますね。
それと、自分で決めているのは「人の顔や動物は作らない」こと。火を付けたら溶けてしまいますから、心が痛むので、作りません。オーダーをもらってもやんわりと断ります。亡くなったワンちゃんのキャンドルを作ってくれと言われたこともありますが、断りました。余計に悲しくなっちゃいますから。

金田文子氏さまざまな表現にチャレンジしてきている金田さんですが、これからの創作における「野望」があれば教えて頂けますか?
 

金田  火を灯さずに飾ったままにするという人が多いので、いかに火を灯して貰うかが一つの課題ですね。あとは、ワックスを油絵の具のように使ってダリやゴッホみたいな絵を描いてみるとか、現代アートのような作品を作ってみたいという気持ちもあります。作りたいものは本当に沢山ありますね。あとは、大きいものを作ってみたいと思っています。キャンドルアートが、大きいスケールで、どこまでいけるのかやってみたい。こんなに大きいものまでキャンドルでできるのか、と驚いてもらえるような作品にしたいですね(笑)。

金田さんのキャンドルには、まだまだサプライズがたくさん待ち受けていそうですね。是非、これからもいろんな作品に挑戦して行って頂きたいと思います。本日は、ありがとうございました。

金田  ありがとうございました。

写真上:自作のキャンドルを持つ金田さん(アトリエにて) 

(取材日:2018年12月14日・Atelie KANAにて)